異世界デスゲーム? 優勝は俺で決まりだな……と思ったらクラス単位のチーム戦なのかよ! ぼっちの俺には辛すぎるんですけど!

真名川正志

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1回戦 Sランク冒険者ゲーム12

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「さて、回復したところで、君達に聞きたいことがある。君達は、いったいどうやってあの場所に現れたんだ?」

 回復魔術師が立ち去ると、中年の男が俺達を見回してそう訊いた。

「……歩いて来ました」

 誰も答えようとしないので、俺はそう言ってみた。

「ほほう。歩いて、か。今朝、スタンピードの兆候があるという知らせを受け取って、この街では厳戒態勢になっていた。で、櫓台の上にいた見張りが角ウサギのスタンピードが向かってくるのを目撃した直後に、予め配置してあった人員が気配感知スキルによって城門の周囲に人がいないことを確認した。にもかかわらず、君達は城門の外で角ウサギに襲撃されてしまった。これは、奇妙な事態だとは思わないかね?」

 中年の男は理詰めで俺達を追求した。

「確かに奇妙ですね……」

 俺はそう相槌を打った。

「君達はどこから来たんだ?」

 そう訊かれ、俺はクラスメート達の顔を見回した。本当なら入国する前に口裏を合わせておくはずだったのだが、スタンピードに巻き込まれたせいで、できなかった。
 一斉に話し始めると矛盾が生じてしまう可能性が高いから、誰か1人が代表して答えた方がいいのだが……。
 と思っていると、みんなの視線が俺に集中していた。

 くそっ。やっぱり俺が言い訳担当なのかよ! 損な役回りだな!

「俺達は――あれっ? 俺達は……。え? あれ? そんな。どうしてだ? 俺達が生まれ育った村の名前を思い出すことができない!」

 俺は頭を抱えながらそう言った。記憶喪失の振り作戦である。下手に言い訳をするよりも、記憶にございませんと誤魔化した方がボロが出にくいのだ。

 俺は手で隠しながら、こっそりと鈴本蓮と腹黒地味子ちゃんにも目配せした。

「僕も思い出せない!」「私も! どうしても思い出せない!」

 さすがは鈴本蓮と腹黒地味子ちゃんだな。まるで打ち合わせをしていたように、素早く反応してくれた。そして、ここまで話が進めば他のクラスメート達にも作戦が伝わり、みんなが同じようなことを言い始めた。

「はあ……。もういい。何か事情があるのは分かった。本当のことを言いたくなったら教えてくれ」

 中年の男は面倒くさげにそう言った。

「すみません。助けてくれて、ありがとうございました!」

 俺は謝罪とお礼を口にした。

「俺はこの街の冒険者ギルドの副ギルドマスターの、エイブラムだ。何か困ったことがあったら相談しろ」

 中年の男はそう言い、俺に手を差し出した。俺はその手を掴んで握手をした。

「ありがとうございます。俺は九郎です。実は、俺達も冒険者になりたいと思っているんです」

 これ幸いと、俺はそう打ち明けた。

「ふむ。そうなのか。冒険者ギルドの建物は南門の近くにある。そこの受付の者に言えば、すぐに冒険者登録できるだろう」

 エイブラムはそう教えてくれた。

「どうもです。それと、エイブラムさんも含めて、俺達を助けてくれた人達に何かお礼がしたいんですけど……」
「そんなものは必要ない。これが俺達の仕事だからな」
「分かりました。今さらですけど、街の中は安全なんですよね?」
「ああ。角ウサギには城壁を越えることができないからな。城門を破られないように俺達が気を付けていれば、安全だ」

 俺達は階段のところまでエイブラムに送ってもらった。エイブラムは城門のところで角ウサギの群れに攻撃している集団のところに戻っていった。あの中に、俺達を助けてくれた人達が混じっているはずなので、俺達は改めて遠巻きにお礼を言い、階段を下りた。

「――奈緒ちゃんが死んだのは、あなたのせいよ! あんな場所に転移させるから!」

 階段を下りきったところで、少しぽっちゃり体型の女子が俺を見てそう叫んだ。奈緒ちゃんというのは、柔道子ちゃんの名前だった気がする。
 ずっと文句を言いたかったのを、部外者がいなくなるまで我慢していたのだろう。

「それは違うだろう。あの場所に転移するのは、みんなで決めたことだ。あの場所に転移したくなかったなら、きみが話し合いのときにそう言えばよかったじゃないか。話し合いに参加しなかったきみに、話し合いをしていた人達を非難する権利なんかない」

 まだ15歳だというのに頑固職人っぽい風格の老け顔の男子がそう言った。

 少しぽっちゃり体型の女子は何も言い返せなかったのか、悔しそうに俯いた。

 俺は気まずい気分で、治療院の中にみんなを案内した。

「――有希! 目が覚めたのか!」

 有希がベッドに腰掛けているのを見て、俺はそう言いながら駆け寄った。

「うん……」

 有希は暗い表情でそう答えた。その手には空っぽになった造血ポーションの瓶が握られていた。クラスメート達が20人も死んだことや、その中に心愛や七海や浅生律子が含まれていたのを青山から聞いて、落ち込んでいるのだろう。

「有希が寝てるときに、勝手にアクセサリーを外してごめんな」
「緊急事態だったんだからしょうがないよ。もともと換金用で買った物だったんだし気にしないで」
「有希は安静にしないといけないし、宿屋のベッドで休んでいたらどうだ?」
「ウチだけ寝てるなんて、そんなの嫌」

 俺の言葉に、有希は強い口調でそう答えた。

「分かった。とりあえず、みんな服がボロボロだし、着替えないか?」

 俺はみんなを見回してそう訊くと、全員が賛成した。回復魔術師達に改めてお礼を言い、治療院を出た俺達は、先ほど俺と鈴本蓮が服を買ったのと同じ店に入って服を買った。代金はもちろん俺がまとめて支払った。

「ちょっとお腹が空いたし、次は食事をしながら自己紹介をして、今後の方針について話し合おう」

 鈴本蓮がそう提案し、俺達は南門の近くにあるという冒険者ギルドを目指しながら食事ができる場所を探した。最初に目についた、大衆食堂っぽい雰囲気のレストランに入った。この店構えで値段が高いことはないだろう、と思った。

 中途半端な時間だからか、俺達の他に客はいなかった。好きな席に座っていいと言われたので、俺達は奥まった場所にある2つのテーブルをくっつけて着席した。

 メニューを見ると、今の時間帯は日替わり定食とドリンク類しか注文できないようだった。仕方なく、人数分の日替わり定食とジュースを注文した。

 そして、いよいよ自己紹介である。鈴本蓮に促され、なぜか俺から自己紹介をする羽目になってしまった。とりあえず、名前と職業だけ言っておいた。続いて、時計回りに青山と鈴本蓮もそれぞれ自己紹介をした。鈴本蓮の職業は鑑定士だった。

「私は夏目理乃りの。職業は商人よ」

 腹黒地味子ちゃんがそう名乗った。商人って、完全にイメージそのまんまだな。

「私は国吉文絵。錬金術士」

 文学少女ちゃんがそう言った。錬金術士は大量の本に囲まれているイメージがあるので、これも文学少女ちゃんによく似合っている職業だった。

「この子の名前は、朝倉夜桜よざくらちゃん! 僕はキツネのコンちゃんだよ! みんな、よろしくね!」

 独り言子ちゃんが、右手に嵌めたキツネのハンドパペットを動かしながら、明るい声でそう言った。声色が普段の独り言子ちゃんと違っていたから、おそらくキツネが喋っているという設定なのだろう。だが、独り言子ちゃんの口も普通に動いていたから、腹話術ともまた違っていた。キツネの右目には角ウサギに開けられたと思しき穴が開いていて、キツネの身体も血まみれだった。そのせいで、軽くホラーだった。

 ……正直に言おう。ドン引きだった。

 こいつだけ、キャラが濃すぎないか? やっぱりデスゲームのせいで気が触れてしまったのだろうか……。
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