異世界デスゲーム? 優勝は俺で決まりだな……と思ったらクラス単位のチーム戦なのかよ! ぼっちの俺には辛すぎるんですけど!

真名川正志

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1回戦 Sランク冒険者ゲーム50

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「まあ、どうせ米崎くんと合流しないといけないしね。ちょうど首都に向かう途中に米崎くんが滞在している村があるし、その村は乗り合い馬車のルート上にはないから、一石三鳥にもなるな」

 鈴本は図書室で地図を確認しながらそう言った。俺達にとっては手強い魔物の縄張りも確認し、鈴本が死んでしまった場合に備えて、全員がメモ用紙に地図を書き写して各自で保管することにした。この世界は厳しくて、これくらい用心しないと、すぐに死んじゃうからな……。

 冒険者はできるだけ所在をギルドに報告しなければならない、ということになっているので、受付にいたサーシャに、明日の早朝、首都に向けて旅立つことを報告した。

「お気を付けて。幸運を祈ります」

 サーシャの別れの言葉はそれだけだった。

 首都で一旗揚げようと、スプリングワッシャーから首都に向かう駆け出し冒険者は多いし、俺達もその中の11人に過ぎないと思われたようだった。

 その後は、今のうちに各自が必要だと思う物を買っておくことにした。俺や手の空いているメンバーが作った折り紙がいい感じに売れてくれたおかげで、資金繰りには余裕があった。

 財布を握っている夏目理乃や、アイテムボックス持ちの佐古くんを同伴した方がいいので、11人全員で行動する。

 旅の道中にはいくつか休める小さな村もあるのだが、万が一に備えて中古のテント道具一式と人数分の寝袋を購入し、可能な限り小さく折り畳んで佐古くんのアイテムボックスに収納してもらった。佐古くんはアイテムボックスのレベルが上がり、最大で、軽自動車の車内に積み込みできるのと同じくらいの容量を収納できるようになっていた。

 食料は、途中で角ウサギを狩ればいいだろう、という獲らぬ角ウサギの皮算用で、小麦粉のような粉と水と調味料を中心に購入した。

 次に、国吉文絵がEランク以下の魔物の魔石を大量に購入した。それらは「クズ魔石」と呼ばれている小さな魔石で、MP回復用のポーションの材料にするくらいしか使い道がないし、この街には錬金術士が少ないせいで、捨て値で購入することが可能だったのだ。その捨て値の魔石を、さらに夏目理乃が値切ったことは言うまでもないが……。

「例えば回復量が20のMPポーションを作るには、作製者のMPが20必要になるの。回復量が50なら作製者のMPは50必要、というふうに、回復量と同じだけのMPを消費しないと作ることができないわ」

 国吉文絵はそう解説してくれた。

「余剰MPを外付けのバッテリーに充電しておくような感じで作れるのね」

 安来鮎見は感心したように頷き、そう言った。

「そういうことね。MPポーションを作る際にも職業レベル上げ用の経験値を入手することができるから、MPを消費してMPポーションを作って、そのMPポーションでMPを回復して、再びMPポーションを作る……というのを繰り返すことによって、効率的な経験値稼ぎができるそうよ。さっき師匠のところにお別れの挨拶をしに行ったら、そういう裏技を教えてくれたの」
「何で最初に修行に行ったときには教えてもらえなかったんだろう?」

 安来鮎見は不思議そうに訊いた。

「デメリットもあるからよ。MPポーションの飲み過ぎでお腹がタプタプになっちゃうし、やり過ぎるとMP切れの症状も出ちゃうし、クズ魔石とはいえ、大量に買うとそれなりにお金がかかっちゃうし……。だから、もう少し私が成長してから教えてくれるつもりだったらしいんだけど、私が明日の朝旅立つって知って、今日のうちに教えてくれる気になったみたいね」

 国吉文絵はそう言うと、早速MPポーションを調合し始めた。

「国吉さんの〈調合〉レベルは、今後の作戦に重要になるから、教えてもらえて助かったな」

 千野はそう言って頷いた。

 次に、魔道具屋で錬金粘土というものを購入した。錬金粘土は樹脂粘土とシリコンの中間のような素材で、紙粘土のように形を作った後、魔力を注ぐことによって弾力のあるゴムのように固くなるのだ。塗料も買う。錬金粘土で変装用の道具を作る予定なので、試行錯誤もできるように少し多めに用意しておいた。それらを作るのは、手先が器用な夜桜と有希が立候補してくれた。

 さらに、変装用の化粧品や、エクステも有希が選んで購入した。夜桜も変装道具に使う布や針金を買った。

 翌朝、夜明けと同時に宿を引き払った俺達はギルドには寄らずにそのまま南門から街の外に出た。

 エイブラムは俺達のことを監視対象とか言っていたから、サーシャに旅立つことを報告した後、何らかの形で接触してくるんじゃないだろうか……と思っていたのだが、結局現れなかった。あの発言は、悪目立ちする俺達が変なことをしないようにと、大袈裟に言って釘を刺していただけだったのかもしれない。だとしたら、まんまと騙されてしまったことになる。

 それでも、誰かが俺達を尾行していないか、全員で細心の注意を払うことにした。

 米崎が滞在するレイエットの村まで、角ウサギを狩りながら順調に進んだ。

 未舗装の道を50分ほど歩いたところで、村の外で羊達に草を食べさせている米崎と、白いウサギ耳の少女と遭遇した。

「米崎! 元気にしてたか?」

 青山がそう声をかけた。

「ああ。みんなも元気か?」

 そう訊き返した米崎は、すっかり日焼けしていて、誰かのお下がりらしき服を着ていて、現地人っぽい雰囲気になっていた。

 俺達は白いウサギ耳の少女、レイエットと初対面の挨拶を交わし、そのまま村に向かった。俺達を取り囲むように羊もついてきた。

「これは米崎が操作してるのか?」

 青山はそう確認した。

「うん。あれから新しく〈前進命令〉、〈後退命令〉、〈右折命令〉、〈左折命令〉っていうスキルを覚えて、最大で同時に10匹まで羊を移動させられるようになったんだ」
「無詠唱で?」

 青山は驚いたような表情でそう訊いた。

「うん」
「それは凄いな。でも、羊は11匹以上いるように見えるんだが……」

 青山は周囲を見回してそう言った。歩いているから数えにくいが、俺の目には少なくとも50匹以上はいるように見えた。

「1度『前進しろ』って念じると、ずっと前進し続けるから、その間に別の羊に命令を出すことによって、11匹以上動かせるんだ」
「ハルトくん、本当に凄いよね!」

 レイエットは自分のことのように誇らしげにそう言った。

 レイエットの村は、山の緩やかな斜面を切り拓いたところにあった。塀や家はどれも木製で、かなり傷んでいるように見えた。畑にもうねが作られているが、何も植えられていないように見えた。

「この前のスタンピードで村の中や畑を荒らされちゃって、まだ完全には復興できてないの」

 俺達の視線を感じたのか、レイエットは少し耳を伏せてそう言った。

 村の中に入ると、俺達に気付いた村人達が集まってきた。全員がウサギの獣人のようだった。種族的な特長もあるのかもしれないが、村人全員が痩せていた。

「なあ。この人達はウサギの獣人みたいだけど、角ウサギは食べるのかな?」

 俺は米崎に小声でそう確認した。

「ああ。食べ物の好みは、僕達とそんなに変わらないみたいだ。せいぜい、ニンジンが大好きな人が多いっていう程度で、肉や魚も食べるよ」

 そういうことならと、俺達はここに来るまでに狩った角ウサギの肉をすべて、村人達に進呈することにした。

 驚く村人達に、無料だと俺が伝えると、夏目理乃は何かを言いたそうな顔をしていたが、歯を食いしばって何も言わなかった。……いちいち怖いよ、きみ。

「災害で苦しんでる人達からお金なんて取れないよね?」

 有希が念を押すと、夏目理乃は渋々という調子で頷いた。
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