どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ

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1章-2

第18話

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「そういえばティムさま。話は変わるのですが」

「ん? どうした?」

「ルーデウス村調査の際ルーク軍曹たちはデボンの森の外側まで調べたようなのですが、そこで気になることがあったようで」

「気になること?」

「ええ。このランドマン大陸には我が一族のほかにもいくつかの種族がおりまして、デボンの森を抜けた岩場の洞窟ではオーガ族が暮らしているのです」

 そういえばルーク軍曹がそんなこと言ってたな。

「ドワーフ族は警戒心が強く山にこもってほかの種族と交流を持とうとしませんし、コロポックル族はひっそりと暮らしているため表に姿を出すことはほとんどありません。そんな中でオーガ族だけは我ら一族と交流を持っておりました」

 オーガ族がランドマン大陸へ移り住んできた際、先に移住してたイヌイヌ族が生活の知恵を貸したことがあったそうだ。
 以来ふたつの種族は交流を持つようになったのだという。

 〝異種族の窮地は見て見ぬフリが基本〟ってルーク軍曹は言ってたけどイヌイヌ族は違ったみたいだな。
 ちょっとだけうれしくなる。

 もともとオーガ族は義理固い種族だからそれもあってイヌイヌ族の助けをよくしていたようだ。
 イヌイヌタウン周辺のモンスターもよく退治してくれていたらしい。

 けど、最近になってオーガ族はめっきり姿を見せなくなったと霧丸は口にする。


「大陸の深淵に棲息するモンスターが攻め込んでくるようになり、我々も自分たちのことで手一杯となりました。オーガ族との交流もぱたりと途絶え、今彼らがどうしているのか分からないのです」

「そうだったのか。それで気になることっていうのは?」

「はい。なんでも辺境調査団の皆は岩場の洞窟あたりまで足を向けたようなのですがそこにいなかったみたいなのです」

「いなかった?」

 目元までかかったふさふさの眉に触れながら霧丸は神妙に続ける。

「オーガ族は岩場の洞窟の前にモンスターの動向を監視するための塔を設けているのですが、そこに見張りの者が誰ひとりいなかったようなのです。がらんとしてひっそりしていたとルーク軍曹は言っておりました」

「まさか全員モンスターにやられたのか?」

 そこまで言ってから俺は思い留まった。

 オーガ族は非常に身体能力に恵まれた種族だ。
 ほかの種族にしては珍しく、男よりも女の地位が上という女尊男卑の特徴がある。

 戦闘面に関しては人族よりも圧倒的に強い。
 
(さすがにこのあたりのモンスターにやられて全滅するような種族じゃないか)

 俺の読みどおり霧丸も同じことを口にする。

「さすがにあのオーガ族がモンスターにやられたとは考えられないかと」

「なにか思い当たる節があるって顔だな?」

「はい。実はひとつございまして……食糧難に陥っているのではないかと思うのです」

「食料難?」

 モンスターにはめっぽう強いオーガ族だがそれゆえに日々の食事摂取量が膨大なんだそうだ。
 もともとオーガ族が暮らしてた東のグシオン大陸は世界随一の穀物生産地で、ここランドマン大陸はその真逆に位置する。

 採れる食糧も限られてるからそれが原因でオーガ族は困ってるんじゃないかっていうのが霧丸の読みだった。

「けどさ。食糧難なんかに陥る前に相談されたんじゃないか?」

 現にイヌイヌタウンには広大な農園と牧場がある。
 近くに川だってあるし魚も泳いでいる。

 イヌイヌ族に頼んでたら解決できそうな問題に思えるんだが。

「いえ。オーガ族はとても誇り高い種族です。たとえ食糧難に陥りそうになっても我々に迷惑がかかると考えそういった相談は持ちかけなかったと思います」

「マジか」

 すごいな。
 俺ら人族の場合だと種族存続の危機に陥るって分かればふつうに頼ってたはずだ。
 

 なにか力になれるといいんだけど。

 そんなことを考えていると霧丸がこんなことを切り出してくる。

「そこでご相談なのですが……。またティムさまのお力をお貸しいただけないかと思いまして」

「俺の力? けどこの前みたいにレベルを渡したところで食糧難は解決しないと思うけど」

 たしかにルビーは∞に持ってるけどこいつも役に立つとは思えないし。

 実際、俺はここまでルビーをいちども使っていない。
 お金っていうのは利用する機会があってはじめて意味を成すものだから。

 まさか蒼狼王族サファイアウルフズから食糧を買うわけにもいかないし。
 それだとただパイを取り合うだけで問題の根本的解決にはならない。

 が、霧丸が言いたいのはそういうことじゃないらしい。
 
「たしかにそれでは食糧難は解決できませんね。今回はレベルではなくティムさまがお持ちの魔法袋の中身を分け与えていただくことができないかと思いまして」

「魔法袋の中身? あっ……」

 そこで俺はハッとした。

 そうだ。
 魔法袋の中にはほしにくの実が∞にあるんだった。

 この前の宴の席で俺はこのことを話していた。
 魔法袋の中に有り余るほどのほしにくの実が入っていてそれで飢えを凌いだって。

 それを霧丸は覚えていたんだろうな。

「でもほしにくの実が食糧の代わりになるのか?」

 ぶっちゃけ、ほしにくの実は腹持ちはいいけど決して美味しいとは言えない。
 俺だったら二日も連続で食べたくない。

「それでしたら心配はございません。実はほしにくの実はオーガ族の大好物なのです」

「え、大好物なのか?」

「なのでとても喜ぶと思いますよ。誇り高いオーガ族であってもティムさまが直接お渡しになればきっと受け取ってくれるはずです」

 どうして俺が渡すと受け取ってくれるのかはよく分からなかったけど付き合いの長い霧丸がこう言うんだ。
 そういうことなんだろう。

「直接渡しに行くのはいいんだけど人族の俺が行っても平気なのか?」

「それもご安心ください。オーガ族は種族の偏見を一切持ちません。ですからティムさま。どうか岩場の洞窟まで行っていただくことはできますでしょうか?」

「分かった。そういうことならいちど訪ねに行ってみよう」

「ありがとうございます! きっとオーガ族の皆も喜ぶと思います!」

 霧丸は我がことのように喜んだ。
 オーガ族のことが本当に気になっていたんだろうな。

 なんていうか、霧丸にしろルーク軍曹にしろ、こういう仲間想いなところは素直に感心する。
 俺もぜひ見習いたいもんだ。
  
「では案内役としてルーク軍曹と辺境調査団の者たちをつけましょう。明日の朝、出発という形でよろしいでしょうか?」

「おう」

「明日はどうぞよろしくお願いします」

 こうして俺はオーガ族が暮らす集落へと赴くことになった。
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