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1章-2
第22話
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仲間を安全な場所へ退避させるために俺とガンフーはお互いにいちど身を引いた。
すると、真っ先にルーク軍曹が声をかけてくる。
「ティムさま! ガンフーさんは辺境調査団の団長である吾輩から見てもとんでもなく強い御方ですっ……」
「だろうな」
「それに本気となったオーガ族は手がつけられないことで有名です……。あのような挑発をされてかなり危険かと思います! なにかべつの方法で説得された方がよろしいのではないでしょうか?」
「あれはなにを言っても無駄って顔だ。オーガ族の流儀に従って力で証明しない限り説得は不可能だと思うよ」
「ですが……」
ルーク軍曹はまだ納得がいかないようだ。
ほかの仲間たちも不安げにこっちを見てくる。
「それにさ分かったんだよ。あいつはオーガ族の全員と一緒に心中するつもりなんだって」
「なっ……心中ですか!?」
「洞窟にこもってたのはたぶんそのためなんだろうし。ったく一族が絶滅するかもしれない危機が迫っているってのに。誰にも頼らずひっそりと死のうだなんてそんなのは美徳でもなんでもない」
俺は少し怒ってもいた。
だってそれはぜったいに間違ってるって分かるからだ。
「だから止めたいんだよ。そのためには俺が勝ってあいつに話を聞いてもらわなくちゃならない」
「ティムさま……」
「そう不安そうな顔するなって。だいじょうぶ、俺はぜったい負けないから。みんなは少し下がって戦いを見守っていてくれ」
背中をポンと軽く叩くとそれでようやくルーク軍曹も頷いてくれる。
「……分かりました。ティムさまがそこまでおっしゃるのでしたら吾輩たちはもうお止めしません。せめてもの助けとなるようにどうか我々の武器をお使いください」
「おう、ありがとな。きちんと使わせてもらうぞ」
ルーク軍曹が辺境調査団の仲間とともに後ろへ下がるのを見届けると俺は「ふぅ」と息を吐く。
(さてと。どうするかね)
HPが∞である以上負けないのはたしかなんだけど。
【命中率0%】のデメリットスキルがあるから勝てないのも事実だった。
なにか策を考えないとだな。
◇◇◇
「首領さま。全員が洞窟の中へと戻るのを確認しました」
女戦士長のクリエが手短に報告を済ませる。
それを聞いてガンフーは「そうか」と静かに頷いた。
「あの……本当によろしかったのでしょうか?」
「なにがだ?」
「ここ数日首領さまはまともに食事を取られておりません。そのような空腹状態で戦うのは非常に危険ではないでしょうか?」
「安心しろ。そんなことで我が負けることはあり得ぬ」
「そう……ですよね。無礼なことをお聞きしました。ご武運を首領さま」
クリエに見送られる形でガンフーは平地へと戻ってくる。
「もういいのか?」
「ああ。こちらは全員退避させた」
「そうか。こっちも準備はオーケーだ。そろそろはじめよう」
ティムがスッと槍を引き抜く。
その武器にガンフーは見覚えがあった。
(それは辺境調査団の複製槍。そんなもので我を倒すつもりか?)
ガンフーはイヌイヌ族と交流があったため、それらの武器が大した性能を持っていないことを見抜いていた。
逆にガンフーが今手にしているのは金獅子のハンマーというオーガ族の中では伝説と語り継がれてきた武器だ。
(先制攻撃を仕掛ければすぐにでも決着がつくはずだ。悪いが即刻終わりにさせてもらおう)
ティムが構えを取る前にガンフーは〈斧技〉の連続最強技を不意打ち気味に繰り出す。
「その身に刻むがいい! 《衝撃のファーストアタック》!」
が、ティムも即座に反応する。
「《鎧皇VV》」
その瞬間、ティムの体は聖なる光によって守られた。
これによってあらゆるダメージは無効化されることになる。
「そんな魔法が使えたとは驚きだ」
「無策ってわけじゃないんでね。そっちはこの魔法を解く術がないとみた」
〈弱体魔法〉の中にはこの効果を解くものも存在するがそもそもガンフーは『魔法』自体を習得していない。
オーガ族が魔法をほとんど使わず、スキルポイントを『特技』に全振りしているという話は有名だった。
「たしかにそのとおりだが……ハアァ! 《衝撃のファーストアタック》!」
ドゴゴゴゴーーン!
ガンフーは金獅子のハンマーをティム目がけて容赦なく振り回していく。
(あれは短時間攻撃を無効化するだけ。永遠に続くものではない)
こうして〈斧技〉を撃ち込み続けていれば効果が切れた瞬間に攻撃を与えることができる。
「いつまで耐えられるか見物だな、ティム・ベルリ!」
無数の刃がティムの体を刻み続ける。
今は〈補助魔法〉の効果でダメージは無効化されているがこれが切れた瞬間、ティムの肉体が八つ裂きにされるのは必至と言えた。
すると、真っ先にルーク軍曹が声をかけてくる。
「ティムさま! ガンフーさんは辺境調査団の団長である吾輩から見てもとんでもなく強い御方ですっ……」
「だろうな」
「それに本気となったオーガ族は手がつけられないことで有名です……。あのような挑発をされてかなり危険かと思います! なにかべつの方法で説得された方がよろしいのではないでしょうか?」
「あれはなにを言っても無駄って顔だ。オーガ族の流儀に従って力で証明しない限り説得は不可能だと思うよ」
「ですが……」
ルーク軍曹はまだ納得がいかないようだ。
ほかの仲間たちも不安げにこっちを見てくる。
「それにさ分かったんだよ。あいつはオーガ族の全員と一緒に心中するつもりなんだって」
「なっ……心中ですか!?」
「洞窟にこもってたのはたぶんそのためなんだろうし。ったく一族が絶滅するかもしれない危機が迫っているってのに。誰にも頼らずひっそりと死のうだなんてそんなのは美徳でもなんでもない」
俺は少し怒ってもいた。
だってそれはぜったいに間違ってるって分かるからだ。
「だから止めたいんだよ。そのためには俺が勝ってあいつに話を聞いてもらわなくちゃならない」
「ティムさま……」
「そう不安そうな顔するなって。だいじょうぶ、俺はぜったい負けないから。みんなは少し下がって戦いを見守っていてくれ」
背中をポンと軽く叩くとそれでようやくルーク軍曹も頷いてくれる。
「……分かりました。ティムさまがそこまでおっしゃるのでしたら吾輩たちはもうお止めしません。せめてもの助けとなるようにどうか我々の武器をお使いください」
「おう、ありがとな。きちんと使わせてもらうぞ」
ルーク軍曹が辺境調査団の仲間とともに後ろへ下がるのを見届けると俺は「ふぅ」と息を吐く。
(さてと。どうするかね)
HPが∞である以上負けないのはたしかなんだけど。
【命中率0%】のデメリットスキルがあるから勝てないのも事実だった。
なにか策を考えないとだな。
◇◇◇
「首領さま。全員が洞窟の中へと戻るのを確認しました」
女戦士長のクリエが手短に報告を済ませる。
それを聞いてガンフーは「そうか」と静かに頷いた。
「あの……本当によろしかったのでしょうか?」
「なにがだ?」
「ここ数日首領さまはまともに食事を取られておりません。そのような空腹状態で戦うのは非常に危険ではないでしょうか?」
「安心しろ。そんなことで我が負けることはあり得ぬ」
「そう……ですよね。無礼なことをお聞きしました。ご武運を首領さま」
クリエに見送られる形でガンフーは平地へと戻ってくる。
「もういいのか?」
「ああ。こちらは全員退避させた」
「そうか。こっちも準備はオーケーだ。そろそろはじめよう」
ティムがスッと槍を引き抜く。
その武器にガンフーは見覚えがあった。
(それは辺境調査団の複製槍。そんなもので我を倒すつもりか?)
ガンフーはイヌイヌ族と交流があったため、それらの武器が大した性能を持っていないことを見抜いていた。
逆にガンフーが今手にしているのは金獅子のハンマーというオーガ族の中では伝説と語り継がれてきた武器だ。
(先制攻撃を仕掛ければすぐにでも決着がつくはずだ。悪いが即刻終わりにさせてもらおう)
ティムが構えを取る前にガンフーは〈斧技〉の連続最強技を不意打ち気味に繰り出す。
「その身に刻むがいい! 《衝撃のファーストアタック》!」
が、ティムも即座に反応する。
「《鎧皇VV》」
その瞬間、ティムの体は聖なる光によって守られた。
これによってあらゆるダメージは無効化されることになる。
「そんな魔法が使えたとは驚きだ」
「無策ってわけじゃないんでね。そっちはこの魔法を解く術がないとみた」
〈弱体魔法〉の中にはこの効果を解くものも存在するがそもそもガンフーは『魔法』自体を習得していない。
オーガ族が魔法をほとんど使わず、スキルポイントを『特技』に全振りしているという話は有名だった。
「たしかにそのとおりだが……ハアァ! 《衝撃のファーストアタック》!」
ドゴゴゴゴーーン!
ガンフーは金獅子のハンマーをティム目がけて容赦なく振り回していく。
(あれは短時間攻撃を無効化するだけ。永遠に続くものではない)
こうして〈斧技〉を撃ち込み続けていれば効果が切れた瞬間に攻撃を与えることができる。
「いつまで耐えられるか見物だな、ティム・ベルリ!」
無数の刃がティムの体を刻み続ける。
今は〈補助魔法〉の効果でダメージは無効化されているがこれが切れた瞬間、ティムの肉体が八つ裂きにされるのは必至と言えた。
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