女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう

サイダーボウイ

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第1章

21話

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(追いついた)

 《天駆》のおかげでゲントは、ものすごい勢いで走る鉄巨人に難なく追いつくことに成功する。

(けど、かなり速いな)

 今ゲントは、肉体の限界を越えて超人的に走っていた。
 時速に換算すれば70~80キロは出ているはずだ。

 それと同等のスピードで鉄巨人は、岩やがれきなどをなぎ倒しながら爆走している。
 巨大な体躯を震わせながら走るそのさまは、まさに圧巻のひと言。

 だからこそ。

 少しだけ隙があるようにゲントには見える。

 今なら防御が空いているように思えたのだ。

(本当に物理ダメージも通らないのかな?)

 鉄巨人と並行して走りながら、ゲントはひとまず奥義を撃ち込んでみることに。

「奥義其の10――〈烈風おろし〉!」

 ゴワアアアア!!

==================================

[奥義名]
烈風おろし

[威力/範囲]
C/単

[消費SP]
3%

[効果]
大風圧で敵を吹き飛ばし、動きを封じる秘剣。
敵単体に中ダメージを与える。

==================================

 走りながら放った奥義は見事鉄巨人の横顔にヒットする。
 《ロックオン》のおかげだ。

==================================

[アビリティ名]
ロックオン

[レア度]
D

[種類]
インスタント

[効果]
モンスターを攻撃した際、
HPが最大値ならば、攻撃が100%の確率で命中する。

==================================

 しかし――。

『うえぇっ~~。なんかアイツ、ぜんぜん効いてませんよぉっ~!?』

「そうみたいだね」

 それから同じようにべつの奥義を撃ち込んでみるも。

(・・・やっぱりダメか)

 鉄巨人はまるで動じることなく爆走し続けていた。

 これ以上やれることがないので、ゲントもひとまず並行して走ることに。



 ***



 それから15分ほどは走り続けただろうか。

 ルルムの焦ったような声がゲントの脳内に響く。

『マスタぁ~。どうしましょうぅ・・・このままだと氷土の大地に到着しちゃいますよぉ・・・』

「うん。わかってる」

 すでに《慧眼の睨み》を使うまでもなく、氷土の大地が遠方に小さく見えるのが肉眼で確認できる。

 フェルンによれば、あそこには魔王が封印されているのだという。

 もしそんなものが目覚めるなんてことになれば、フィフネルはふたたび恐怖に包まれるに違いない。

(ここら辺でなんとか決着つけないとマズいな)

 ただ、再三確認したように物理攻撃は一切通じない。
 とすれば、できることはひとつしか残されていなかった。

「ルルム。相手の動きを止めようと思う」

『ふぇっ? 止めるって、どうやって止めるんですかぁ・・・?』

「ちょっと見ててくれ」

 魔剣のグリップに力を込めると、ゲントはさらに脚を加速して鉄巨人の前へと躍り出る。

 その刹那。

 ぴょ~~ん!!

 《勇空》のアビリティを使い、ゲントは宙へと舞う。

==================================

[アビリティ名]
勇空

[レア度]
C

[種類]
永続

[効果]
一定時間、肉体の限界を越えた跳躍力を得る。
ただし、1日1回のみ有効。

==================================

 そこから地面に向け、思いっきり葬冥の魔剣ケイオスヴァレスティを振り抜いた。

「奥義其の11――〈熱界・天十字〉!」

 グッゴォォォォッ!!

 魔剣から放たれた衝撃波が大地を深く抉り、そこに飛び込むようにして、走り込んできた鉄巨人は裂け目の中へと落ちてしまう。

==================================

[奥義名]
熱界・天十字

[威力/範囲]
A/単

[消費SP]
19%

[効果]
強烈な殴り下ろしにより、断絶させる天地に轟かん大剣技。
敵単体にクリティカル率の高い大ダメージを与える。

==================================

『さすがマスター! すごいですぅぅっ~~!!』

 スッと地面に着地すると、ゲントは裂け目を見下ろす。

 斬り裂かれた大地は20mほどの深さまで抉られていた。
 さすがの鉄巨人もすっぽりとはまってしまうほどの深さだ。

(ひとまず足止めすることには成功したけど)

 ただこれで大人しくしているはずがないことはゲントにもわかっていた。

 鉄巨人は裂け目の中でもがきながら、四方八方に向けてふたたび黒炎を放ってくる。
 強靭な体躯を暴れ回らせ、どうにか脱出しようと試みているようだ。

『わわわっ~~!? なんか出てきちゃいそうですっーー!?』

 ルルムが慌てるのも無理はない。
 すでに鉄巨人は裂け目から這い上がろうとしていた。

(どうするかな)

 すでにモンスターから引き抜いた奥義は、ほとんど使い果たしてしまっていた。
 このままだと地面から這い上がってきて、ふたたび鉄巨人を野放しにすることになる。

「あとは・・・鉄巨人から奥義を引き抜くしか手はないか」

『けどぉ~それも効くかどうかわかりませんっ・・・』

「うーん。たしかに」

 ルルムの言うとおり、奥義を引き抜いたところでそれが相手に効かなければ意味がない。
 
 裂け目の中で暴れ回る鉄巨人を見下ろしながら、次の一手を考えていると。

(待てよ)

 これまではモンスターから能力を抜き取ることだけに意識が向いていたが。
 逆ならどうなのだろうか、とゲントはふと思う。

 これも営業マンとして身につけたマインドのひとつだ。

 弦人は、これまで会社の企画プレゼンにおいて、課題とは逆の解決策を考え、クライアントを納得させるアイデアをいくつも提案してきたという実績があった。

 ヒット商品が逆転の発想で生まれるというのはよくある話である。

「鉄巨人に俺の能力を与える・・・」

『マスター? どうされましたぁ・・・?』

「いや・・・。ひょっとしたら、なんとかなるかもしれない」

『ほぇっ?』

 魔晄に呼びかけると、ゲントはその場に光のパネルを立ち上げる。
 開くのは、魔剣のモード選択の画面だ。

 そのままタップして操作を続けていると、ゲントはある発見をした。

(やっぱりだ)
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