21 / 77
第1章
21話
しおりを挟む
(追いついた)
《天駆》のおかげでゲントは、ものすごい勢いで走る鉄巨人に難なく追いつくことに成功する。
(けど、かなり速いな)
今ゲントは、肉体の限界を越えて超人的に走っていた。
時速に換算すれば70~80キロは出ているはずだ。
それと同等のスピードで鉄巨人は、岩やがれきなどをなぎ倒しながら爆走している。
巨大な体躯を震わせながら走るそのさまは、まさに圧巻のひと言。
だからこそ。
少しだけ隙があるようにゲントには見える。
今なら防御が空いているように思えたのだ。
(本当に物理ダメージも通らないのかな?)
鉄巨人と並行して走りながら、ゲントはひとまず奥義を撃ち込んでみることに。
「奥義其の10――〈烈風おろし〉!」
ゴワアアアア!!
==================================
[奥義名]
烈風おろし
[威力/範囲]
C/単
[消費SP]
3%
[効果]
大風圧で敵を吹き飛ばし、動きを封じる秘剣。
敵単体に中ダメージを与える。
==================================
走りながら放った奥義は見事鉄巨人の横顔にヒットする。
《ロックオン》のおかげだ。
==================================
[アビリティ名]
ロックオン
[レア度]
D
[種類]
インスタント
[効果]
モンスターを攻撃した際、
HPが最大値ならば、攻撃が100%の確率で命中する。
==================================
しかし――。
『うえぇっ~~。なんかアイツ、ぜんぜん効いてませんよぉっ~!?』
「そうみたいだね」
それから同じようにべつの奥義を撃ち込んでみるも。
(・・・やっぱりダメか)
鉄巨人はまるで動じることなく爆走し続けていた。
これ以上やれることがないので、ゲントもひとまず並行して走ることに。
***
それから15分ほどは走り続けただろうか。
ルルムの焦ったような声がゲントの脳内に響く。
『マスタぁ~。どうしましょうぅ・・・このままだと氷土の大地に到着しちゃいますよぉ・・・』
「うん。わかってる」
すでに《慧眼の睨み》を使うまでもなく、氷土の大地が遠方に小さく見えるのが肉眼で確認できる。
フェルンによれば、あそこには魔王が封印されているのだという。
もしそんなものが目覚めるなんてことになれば、フィフネルはふたたび恐怖に包まれるに違いない。
(ここら辺でなんとか決着つけないとマズいな)
ただ、再三確認したように物理攻撃は一切通じない。
とすれば、できることはひとつしか残されていなかった。
「ルルム。相手の動きを止めようと思う」
『ふぇっ? 止めるって、どうやって止めるんですかぁ・・・?』
「ちょっと見ててくれ」
魔剣の柄に力を込めると、ゲントはさらに脚を加速して鉄巨人の前へと躍り出る。
その刹那。
ぴょ~~ん!!
《勇空》のアビリティを使い、ゲントは宙へと舞う。
==================================
[アビリティ名]
勇空
[レア度]
C
[種類]
永続
[効果]
一定時間、肉体の限界を越えた跳躍力を得る。
ただし、1日1回のみ有効。
==================================
そこから地面に向け、思いっきり葬冥の魔剣を振り抜いた。
「奥義其の11――〈熱界・天十字〉!」
グッゴォォォォッ!!
魔剣から放たれた衝撃波が大地を深く抉り、そこに飛び込むようにして、走り込んできた鉄巨人は裂け目の中へと落ちてしまう。
==================================
[奥義名]
熱界・天十字
[威力/範囲]
A/単
[消費SP]
19%
[効果]
強烈な殴り下ろしにより、断絶させる天地に轟かん大剣技。
敵単体にクリティカル率の高い大ダメージを与える。
==================================
『さすがマスター! すごいですぅぅっ~~!!』
スッと地面に着地すると、ゲントは裂け目を見下ろす。
斬り裂かれた大地は20mほどの深さまで抉られていた。
さすがの鉄巨人もすっぽりとはまってしまうほどの深さだ。
(ひとまず足止めすることには成功したけど)
ただこれで大人しくしているはずがないことはゲントにもわかっていた。
鉄巨人は裂け目の中でもがきながら、四方八方に向けてふたたび黒炎を放ってくる。
強靭な体躯を暴れ回らせ、どうにか脱出しようと試みているようだ。
『わわわっ~~!? なんか出てきちゃいそうですっーー!?』
ルルムが慌てるのも無理はない。
すでに鉄巨人は裂け目から這い上がろうとしていた。
(どうするかな)
すでにモンスターから引き抜いた奥義は、ほとんど使い果たしてしまっていた。
このままだと地面から這い上がってきて、ふたたび鉄巨人を野放しにすることになる。
「あとは・・・鉄巨人から奥義を引き抜くしか手はないか」
『けどぉ~それも効くかどうかわかりませんっ・・・』
「うーん。たしかに」
ルルムの言うとおり、奥義を引き抜いたところでそれが相手に効かなければ意味がない。
裂け目の中で暴れ回る鉄巨人を見下ろしながら、次の一手を考えていると。
(待てよ)
これまではモンスターから能力を抜き取ることだけに意識が向いていたが。
逆ならどうなのだろうか、とゲントはふと思う。
これも営業マンとして身につけたマインドのひとつだ。
弦人は、これまで会社の企画プレゼンにおいて、課題とは逆の解決策を考え、クライアントを納得させるアイデアをいくつも提案してきたという実績があった。
ヒット商品が逆転の発想で生まれるというのはよくある話である。
「鉄巨人に俺の能力を与える・・・」
『マスター? どうされましたぁ・・・?』
「いや・・・。ひょっとしたら、なんとかなるかもしれない」
『ほぇっ?』
魔晄に呼びかけると、ゲントはその場に光のパネルを立ち上げる。
開くのは、魔剣のモード選択の画面だ。
そのままタップして操作を続けていると、ゲントはある発見をした。
(やっぱりだ)
《天駆》のおかげでゲントは、ものすごい勢いで走る鉄巨人に難なく追いつくことに成功する。
(けど、かなり速いな)
今ゲントは、肉体の限界を越えて超人的に走っていた。
時速に換算すれば70~80キロは出ているはずだ。
それと同等のスピードで鉄巨人は、岩やがれきなどをなぎ倒しながら爆走している。
巨大な体躯を震わせながら走るそのさまは、まさに圧巻のひと言。
だからこそ。
少しだけ隙があるようにゲントには見える。
今なら防御が空いているように思えたのだ。
(本当に物理ダメージも通らないのかな?)
鉄巨人と並行して走りながら、ゲントはひとまず奥義を撃ち込んでみることに。
「奥義其の10――〈烈風おろし〉!」
ゴワアアアア!!
==================================
[奥義名]
烈風おろし
[威力/範囲]
C/単
[消費SP]
3%
[効果]
大風圧で敵を吹き飛ばし、動きを封じる秘剣。
敵単体に中ダメージを与える。
==================================
走りながら放った奥義は見事鉄巨人の横顔にヒットする。
《ロックオン》のおかげだ。
==================================
[アビリティ名]
ロックオン
[レア度]
D
[種類]
インスタント
[効果]
モンスターを攻撃した際、
HPが最大値ならば、攻撃が100%の確率で命中する。
==================================
しかし――。
『うえぇっ~~。なんかアイツ、ぜんぜん効いてませんよぉっ~!?』
「そうみたいだね」
それから同じようにべつの奥義を撃ち込んでみるも。
(・・・やっぱりダメか)
鉄巨人はまるで動じることなく爆走し続けていた。
これ以上やれることがないので、ゲントもひとまず並行して走ることに。
***
それから15分ほどは走り続けただろうか。
ルルムの焦ったような声がゲントの脳内に響く。
『マスタぁ~。どうしましょうぅ・・・このままだと氷土の大地に到着しちゃいますよぉ・・・』
「うん。わかってる」
すでに《慧眼の睨み》を使うまでもなく、氷土の大地が遠方に小さく見えるのが肉眼で確認できる。
フェルンによれば、あそこには魔王が封印されているのだという。
もしそんなものが目覚めるなんてことになれば、フィフネルはふたたび恐怖に包まれるに違いない。
(ここら辺でなんとか決着つけないとマズいな)
ただ、再三確認したように物理攻撃は一切通じない。
とすれば、できることはひとつしか残されていなかった。
「ルルム。相手の動きを止めようと思う」
『ふぇっ? 止めるって、どうやって止めるんですかぁ・・・?』
「ちょっと見ててくれ」
魔剣の柄に力を込めると、ゲントはさらに脚を加速して鉄巨人の前へと躍り出る。
その刹那。
ぴょ~~ん!!
《勇空》のアビリティを使い、ゲントは宙へと舞う。
==================================
[アビリティ名]
勇空
[レア度]
C
[種類]
永続
[効果]
一定時間、肉体の限界を越えた跳躍力を得る。
ただし、1日1回のみ有効。
==================================
そこから地面に向け、思いっきり葬冥の魔剣を振り抜いた。
「奥義其の11――〈熱界・天十字〉!」
グッゴォォォォッ!!
魔剣から放たれた衝撃波が大地を深く抉り、そこに飛び込むようにして、走り込んできた鉄巨人は裂け目の中へと落ちてしまう。
==================================
[奥義名]
熱界・天十字
[威力/範囲]
A/単
[消費SP]
19%
[効果]
強烈な殴り下ろしにより、断絶させる天地に轟かん大剣技。
敵単体にクリティカル率の高い大ダメージを与える。
==================================
『さすがマスター! すごいですぅぅっ~~!!』
スッと地面に着地すると、ゲントは裂け目を見下ろす。
斬り裂かれた大地は20mほどの深さまで抉られていた。
さすがの鉄巨人もすっぽりとはまってしまうほどの深さだ。
(ひとまず足止めすることには成功したけど)
ただこれで大人しくしているはずがないことはゲントにもわかっていた。
鉄巨人は裂け目の中でもがきながら、四方八方に向けてふたたび黒炎を放ってくる。
強靭な体躯を暴れ回らせ、どうにか脱出しようと試みているようだ。
『わわわっ~~!? なんか出てきちゃいそうですっーー!?』
ルルムが慌てるのも無理はない。
すでに鉄巨人は裂け目から這い上がろうとしていた。
(どうするかな)
すでにモンスターから引き抜いた奥義は、ほとんど使い果たしてしまっていた。
このままだと地面から這い上がってきて、ふたたび鉄巨人を野放しにすることになる。
「あとは・・・鉄巨人から奥義を引き抜くしか手はないか」
『けどぉ~それも効くかどうかわかりませんっ・・・』
「うーん。たしかに」
ルルムの言うとおり、奥義を引き抜いたところでそれが相手に効かなければ意味がない。
裂け目の中で暴れ回る鉄巨人を見下ろしながら、次の一手を考えていると。
(待てよ)
これまではモンスターから能力を抜き取ることだけに意識が向いていたが。
逆ならどうなのだろうか、とゲントはふと思う。
これも営業マンとして身につけたマインドのひとつだ。
弦人は、これまで会社の企画プレゼンにおいて、課題とは逆の解決策を考え、クライアントを納得させるアイデアをいくつも提案してきたという実績があった。
ヒット商品が逆転の発想で生まれるというのはよくある話である。
「鉄巨人に俺の能力を与える・・・」
『マスター? どうされましたぁ・・・?』
「いや・・・。ひょっとしたら、なんとかなるかもしれない」
『ほぇっ?』
魔晄に呼びかけると、ゲントはその場に光のパネルを立ち上げる。
開くのは、魔剣のモード選択の画面だ。
そのままタップして操作を続けていると、ゲントはある発見をした。
(やっぱりだ)
13
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる