女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう

サイダーボウイ

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第2章

13話

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 ルルムに一度魔剣の姿に戻ってもらうと、ゲントは《天駆》の力で瞬く間に『フルゥーヴ伝承洞』から脱出した。

 行きは数時間かかった道のりも、ものの数分で抜け出すことに成功する。

(ひとまず、間に合ったみたいだな)

 ダンジョンの外へ出ると、陽の光がゲントたちを出迎えた。

『眩しいですぅ~~!?』

「まだ陽が高いね。もうもとの姿に戻っていいよ」

『はいっ!』
 
 魔剣からサキュバスへと姿を変えると、ルルムは銀色のツインテールを揺らしながらぺこりとお辞儀をする。
 
「マスターっ! ここまで運んでいただきありがとうございましたっ~♪」

「ルルムもお疲れさま。お腹減ったでしょ?」

「そう言われると・・・。たしかにお腹ぺこぺこですぅぅ・・・」

「エコーズに戻ってギルドにこの件を報告したら、報酬がちょっとは貰えるかもしれないから。そこまで我慢できる?」

「わ、わっかりましたぁぁ~!! 小籠包のためにも耐えてみせますっ・・・!!」

 あとで盗んだ農作物についても謝りに行かないといけない、とゲントは思った。

 ただ、ゲントの気持ちはどこか晴れ晴れとしていた。
 必要とされていなかった自分が少しでも町の人のために役立てたことが嬉しかったのだ。

 ちょっとした達成感を抱きながら、2人でその場をあとにしようとしていると・・・。

「あれ・・・? マスターっ! なんかどなたかやって来ましたよっ!?」

「本当だ」

 ひとりの若い女の子が小高い丘を降りてこちらの方角へ向かって来ていた。
 
 冒険者だろうか。
 少女はあきらかに『フルゥーヴ伝承洞』へ向けて足を進めている。

「こんにちは」

 俯きながら歩いていた女の子はゲントの声に気づくと、びっくりしたような表情を浮かべた。

 先に誰かがこの場所にいたことに対する驚きという感じではない。
 
「・・・」

 少女の怪訝な視線を感じる。
 ギルドの受付嬢が向けたそれと似たものをゲントはすぐに感じ取った。

(こんなおっさんがダンジョンから出て来たのが信じられないんだろうな)

 一方でルルムはあいかわず能天気だ。

「ひぇぇっ~~。すっごくかわいらしい方ですぅっ~♡」

 少女はイエローのショートヘアをしていた。
 どことなく活発な印象をゲントは受ける。

 頭には赤色のうさ耳リボンをつけており、首元には黒いチョーカーが光っていた。

 けれど、その服装は冒険者としては少し派手だ。
 ライトグリーンの羽織りをしているが、薄手のノースリーブからは小ぶりの谷間が覗けてしまっている。
 
 下はホットパンツにニーブーツというわりと露出度の高い恰好で。
 なるべく動きやすさを重視しているのかもしれない。

(あれは・・・銃なのかな?)

 少女は肩にライフル型の銃をぶら下げていた。

 それを目にしてゲントはちょっとだけ違和感を抱く。
 魔法優位のこの異世界において、銃などの武器は旧時代の道具という認識のはずだからだ。

 相手の警戒心に気づきつつも、ゲントはさらに声をかけた。

「冒険者の方ですか?」

「・・・うん。ウチは『フルゥーヴ伝承洞』を攻略しにやって来たんだよ」
 
「そうなんですね。自分も同じです。といっても、こっちはギルドから直接依頼されて来たわけじゃないんですけど」

「野良ってわけだ?」

「はい」

 それからお互いに簡単な自己紹介をした。
 
「俺はトウマ・ゲントっていいます。エコーズからやって来ました」

「エンペルト冒険者ギルド専属ゴールドランカーのレモン・シュヴァインだよ。よろしくね」

 どうやら彼女は[ヘルファングの煉旗]というパーティーの一員らしい。
 魔法学院の卒業生4人で組んでいるらしく、全員が16歳なのだという。

 ひとりで先行してダンジョンの入口を探していたようで、あとからすぐに3人がやって来るとレモンは口にした。

「レモンさんって言うんですねっ? かわいらしいお名前ですぅ~♪ こちらこそどうぞよろしくお願いしまぁ~す♪」

 律儀にぺこりと頭を下げて挨拶するも、例によって相手にはルルムの姿は視えていない。
 
 この反応にももう慣れたのだろう。
 ルルムは特に落ち込むことなく、気持ちを切り替えるようにゲントに質問してくる。

「あのぉマスター。ゴールドランカーってことは、レモンさんかなりお強いんじゃないんでしょーかぁ?」

「そうだね」

 小声で頷きながらゲントは記憶を思い返す。

(ゴールドランカーは上位冒険者に分類されるんだったっけ)

 冒険者全体でも5%ほどしかいなかったはずだ。
 
 たしかに、目の前の少女からは冒険者としての余裕が感じられた。
 きっと、これまでにいくつものダンジョンを踏破してきたのだろう。

 そんな彼女に対してこんなことを告げるのは忍びなかったが。
 伝えておかないわけにはいかない、とゲントは思う。

「あの・・・すみません。せっかくここまで来てもらって申し訳ないんですけど。ここのダンジョンのモンスターはボスを含めてすべて倒しちゃいました」

「へ?」

「だから、中へ入っても意味がないんです。というより『フルゥーヴ伝承洞』はこれから消滅するはずですので、なるべく早くこの場所から離れた方がいいと思います」

「おじさん・・・なに言ってるの?」

 いったいなんの話をしているのか。
 唐突なゲントの言葉にレモンは混乱した様子を見せる。

「ダンジョンのモンスターをぜんぶ倒しちゃったの・・・?」

「はい」

「おじさんさ。その歳だと魔力も限られてるはずだよね? どーやってボスも含めてぜんぶ倒したっていうの? そもそも消滅ってなによ?」

「それは――」

 ゲントがそう言いかけたところで。

「おーい! レモンー! ちゃんと入口探せたのかよぉ~~!」
 
 遠くの方からそんな大声が飛んでくる。
 野太い男の声だ。

 それに気づくと、レモンは手を振って答えた。

「うん! こっちにあったよー!」

 小高い丘から3つの人影が下りてくるのが見える。
 男が2人に女が1人だ。

 おそらく、あの若者たちがあとからやって来るという[ヘルファングの煉旗]のメンバーなのだろうとゲントは思った。
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