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第3章
25話
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魔界、異世界、神界、人間界。
これら4つの世界のことを四面世界と呼ぶらしい。
当然、こんな話を聞かされて驚かない者はいないはず。
けれど。
現に魔族や女神などと出会い、異世界へ2回も転移した経験を持つゲントにとっては、簡単に受け入れられる話だった。
なお、魔界に住む魔族と神界に住む神族だけは特別なようで、隣接する世界に干渉することができるのだという。
異世界は魔界と神界と2つの世界と隣接している。
そのため、古くから魔族と神族が降り立つ場所だったようだ。
「魔族と神族は、異世界の覇権を巡ってそんな風に長い間争ってきました。お互いにそれぞれの世界へ侵攻されることを恐れてたんですね。そのために異世界が両種族の代理戦争の場とされてきたっていう歴史があるんです」
魔族は種族の中で力を持った存在を〝魔王〟と定め、異世界へ数多くの魔王を送り込んできたらしい。
それに対抗するため、神族は人間界から定期的に人々を送り込んでいるようだ。
なんでも神族は、魔族に比べて全体の数が10分の1ほどしかいないようで、隣接する人間界の人々に頼るということをこれまで何度も繰り返してきたのだという。
「人間界の方々は異世界で特殊な能力に目覚めるケースが多いようで、神族は魔族に対抗しうる重要な戦力として考えてるみたいですね」
実際にその1人であるゲントは神族の考えがよく理解できた。
異世界作品の主人公なんかは、まさにこれに当てはまる。
もちろん、こんな風に魔族と神族が争っていることを異世界や人間界の人々は知らない。
例えるなら三次元の者が四次元の存在を知覚できないように。
「魔族と神族の争いは長い間、膠着状態が続いてます。仲間たちをかばうわけじゃないですけど・・・魔族は特別争い好きってわけじゃないんですよ。自分たちの世界を守るためには、神族と戦うしかなかったんです」
「けど、エスデスはそんな現状に満足してなかったと。どうしてフィフネルに降り立ったんだろう?」
「フィフネルの世界は、異世界のちょうど中心あたりに存在します。この世界を手に入れられるかどうかで、今後の神族との覇権争いの行方も大きく変わってきますから。だからだと思います」
「ということはかなり重要な世界なんだ。フィフネルって」
「ほかにも異世界にはいくつか拠点となる世界が存在するんですが、ここはそのうちのひとつですね」
「今後、エスデスのほかにも魔王が攻め込んでくるとか、そんなことってあったりするのかな?」
「マスター、それはご安心ください。魔王はひとつの世界に対してひとりしか降り立つことができませんから」
「そっか。それを聞いて安心したよ」
エスデスを倒せば、ひとまずフィフネルには平和が訪れるということらしい。
そもそも聖剣という神族の絶対的な加護がある中、こんな風に強引に降り立ってくる魔王も珍しいのだという。
(やっぱり、聖剣があったからこれまで直接手出しできなかったんだな)
黒の一帯を作り出し、人々が暮らす領域を徐々に蝕んでいき、間接的に追い込むことしかできなかったのは、エスデスの苦肉の策だったのだろう、とゲントは思った。
グラディウスの残した聖剣は、ここフィフネルにおいて本当にお守りのような存在だったのである。
しかし――それも今や危うい状態にある。
エスデスがグレン王に乗り移っているのだとすれば、聖剣は魔王のすぐ手の届く範囲にあるからだ。
「ルルム。もしエスデスが聖剣を壊したりしたらどうなると思う?」
「あまり考えたくないことです。聖剣はいわば、神族が残した楔のような存在です。これがあったからこそ、エスデスはこれまで自由に手出しできなかったわけなので・・・」
ただ、簡単には壊せないとルルムは付け加える。
そもそも聖剣は、ヒト族の中でも触れられる者はほとんどいないのだという。
「本来、聖剣は神族しか手にできないものなんです。それこそあるとすれば、ヒト族の英雄――つまり、マスターくらいでしょうか?」
「俺?」
「はい。可能性は十分にあると思います」
が、話はそう簡単ではないことをゲントは理解していた。
クロノとして五ノ国を治めた時も。
聖剣だけはどうしても触ることができなかったからだ。
(とにかく、グレン国王さまが聖剣を手にできないのは確かだな)
だからこそ、エスデスはフェルンのような召喚士を雇って、賢者を召喚しようと企んでいたに違いないとゲントは思う。
どちらにせよ。
なるべく早くザンブレク城へ行って聖剣を確保すべきと言えた。
(問題は城壁に張られたっていう二重結界をどう突破するかだよな。『結界の書』を使って張られたものなのか?)
けれど、『結界の書』に記された魔法の中に、二重結界を生じさせる魔法があるとはゲントは記憶していなかった。
それに『結界の書』を使うには『召喚の書』よりも高いMQが要求される。
それだけ高度な魔法なのだ。
それを今のグレン王が発動できるとは思えなかった。
「たしかその結界は、光と影の螺旋のような形状をしてるんでしたよね?」
「フェルンさんはそう言ってたね」
「ひょっとすると・・・その結界には〝光属性〟と〝影属性〟の魔法が使用されてるのかもしれません」
「ん? なに・・・影属性だって?」
聞いたことがない単語を耳にして、思わずゲントは声を上げてしまう。
これもまた初耳だ。
ルルムはエスデスが持ち込んだ26冊の魔導書を完全に把握しており、旧約最後の1冊は『常影の書』というものなのだと口にする。
「旧約第13巻『常影の書』・・・?」
「はい」
「この1冊だけは内容不明で所在もまったくわかってなかったんだけど。なんでこれまで出てこなかったんだろう?」
「おそらくですが、エスデスがずっと所有していたんじゃないでしょうか? この1冊だけはフィフネルに落としてなかったってそう考えられます」
「なるほど」
たしかに落としていないのだとすれば、これまでずっと見つからなかった理由も理解できた。
が、そんなことよりも。
ゲントがなによりも驚いたのは、この異世界には実は6つの属性が存在するという点だった。
6番目の属性である〝影属性〟はどうやら天系統に属するようで。
仮にもし。
ザンブレク城に張られた二重結界が『暁光の書』と『常影の書』の魔法を用いているのだとすれば、相当に厄介だと言いつつも破れないわけではないとルルムは口にする。
「天系統と地系統は相反する属性ですから。『烈火の書』、『蒼水の書』、『翠風の書』、『轟雷の書』の4冊を同時に展開して唱えることができれば・・・。破ることも可能だと思います」
クロノが放った『誓約の書』の魔法はすでに効力を失っているため、現在、旧約魔導書はどれも使用可能な状態にある。
あとは実際にそれぞれの国へ出向いて、旧約を手に入れる必要がある。
話しながら今後の方針がまとまった。
これら4つの世界のことを四面世界と呼ぶらしい。
当然、こんな話を聞かされて驚かない者はいないはず。
けれど。
現に魔族や女神などと出会い、異世界へ2回も転移した経験を持つゲントにとっては、簡単に受け入れられる話だった。
なお、魔界に住む魔族と神界に住む神族だけは特別なようで、隣接する世界に干渉することができるのだという。
異世界は魔界と神界と2つの世界と隣接している。
そのため、古くから魔族と神族が降り立つ場所だったようだ。
「魔族と神族は、異世界の覇権を巡ってそんな風に長い間争ってきました。お互いにそれぞれの世界へ侵攻されることを恐れてたんですね。そのために異世界が両種族の代理戦争の場とされてきたっていう歴史があるんです」
魔族は種族の中で力を持った存在を〝魔王〟と定め、異世界へ数多くの魔王を送り込んできたらしい。
それに対抗するため、神族は人間界から定期的に人々を送り込んでいるようだ。
なんでも神族は、魔族に比べて全体の数が10分の1ほどしかいないようで、隣接する人間界の人々に頼るということをこれまで何度も繰り返してきたのだという。
「人間界の方々は異世界で特殊な能力に目覚めるケースが多いようで、神族は魔族に対抗しうる重要な戦力として考えてるみたいですね」
実際にその1人であるゲントは神族の考えがよく理解できた。
異世界作品の主人公なんかは、まさにこれに当てはまる。
もちろん、こんな風に魔族と神族が争っていることを異世界や人間界の人々は知らない。
例えるなら三次元の者が四次元の存在を知覚できないように。
「魔族と神族の争いは長い間、膠着状態が続いてます。仲間たちをかばうわけじゃないですけど・・・魔族は特別争い好きってわけじゃないんですよ。自分たちの世界を守るためには、神族と戦うしかなかったんです」
「けど、エスデスはそんな現状に満足してなかったと。どうしてフィフネルに降り立ったんだろう?」
「フィフネルの世界は、異世界のちょうど中心あたりに存在します。この世界を手に入れられるかどうかで、今後の神族との覇権争いの行方も大きく変わってきますから。だからだと思います」
「ということはかなり重要な世界なんだ。フィフネルって」
「ほかにも異世界にはいくつか拠点となる世界が存在するんですが、ここはそのうちのひとつですね」
「今後、エスデスのほかにも魔王が攻め込んでくるとか、そんなことってあったりするのかな?」
「マスター、それはご安心ください。魔王はひとつの世界に対してひとりしか降り立つことができませんから」
「そっか。それを聞いて安心したよ」
エスデスを倒せば、ひとまずフィフネルには平和が訪れるということらしい。
そもそも聖剣という神族の絶対的な加護がある中、こんな風に強引に降り立ってくる魔王も珍しいのだという。
(やっぱり、聖剣があったからこれまで直接手出しできなかったんだな)
黒の一帯を作り出し、人々が暮らす領域を徐々に蝕んでいき、間接的に追い込むことしかできなかったのは、エスデスの苦肉の策だったのだろう、とゲントは思った。
グラディウスの残した聖剣は、ここフィフネルにおいて本当にお守りのような存在だったのである。
しかし――それも今や危うい状態にある。
エスデスがグレン王に乗り移っているのだとすれば、聖剣は魔王のすぐ手の届く範囲にあるからだ。
「ルルム。もしエスデスが聖剣を壊したりしたらどうなると思う?」
「あまり考えたくないことです。聖剣はいわば、神族が残した楔のような存在です。これがあったからこそ、エスデスはこれまで自由に手出しできなかったわけなので・・・」
ただ、簡単には壊せないとルルムは付け加える。
そもそも聖剣は、ヒト族の中でも触れられる者はほとんどいないのだという。
「本来、聖剣は神族しか手にできないものなんです。それこそあるとすれば、ヒト族の英雄――つまり、マスターくらいでしょうか?」
「俺?」
「はい。可能性は十分にあると思います」
が、話はそう簡単ではないことをゲントは理解していた。
クロノとして五ノ国を治めた時も。
聖剣だけはどうしても触ることができなかったからだ。
(とにかく、グレン国王さまが聖剣を手にできないのは確かだな)
だからこそ、エスデスはフェルンのような召喚士を雇って、賢者を召喚しようと企んでいたに違いないとゲントは思う。
どちらにせよ。
なるべく早くザンブレク城へ行って聖剣を確保すべきと言えた。
(問題は城壁に張られたっていう二重結界をどう突破するかだよな。『結界の書』を使って張られたものなのか?)
けれど、『結界の書』に記された魔法の中に、二重結界を生じさせる魔法があるとはゲントは記憶していなかった。
それに『結界の書』を使うには『召喚の書』よりも高いMQが要求される。
それだけ高度な魔法なのだ。
それを今のグレン王が発動できるとは思えなかった。
「たしかその結界は、光と影の螺旋のような形状をしてるんでしたよね?」
「フェルンさんはそう言ってたね」
「ひょっとすると・・・その結界には〝光属性〟と〝影属性〟の魔法が使用されてるのかもしれません」
「ん? なに・・・影属性だって?」
聞いたことがない単語を耳にして、思わずゲントは声を上げてしまう。
これもまた初耳だ。
ルルムはエスデスが持ち込んだ26冊の魔導書を完全に把握しており、旧約最後の1冊は『常影の書』というものなのだと口にする。
「旧約第13巻『常影の書』・・・?」
「はい」
「この1冊だけは内容不明で所在もまったくわかってなかったんだけど。なんでこれまで出てこなかったんだろう?」
「おそらくですが、エスデスがずっと所有していたんじゃないでしょうか? この1冊だけはフィフネルに落としてなかったってそう考えられます」
「なるほど」
たしかに落としていないのだとすれば、これまでずっと見つからなかった理由も理解できた。
が、そんなことよりも。
ゲントがなによりも驚いたのは、この異世界には実は6つの属性が存在するという点だった。
6番目の属性である〝影属性〟はどうやら天系統に属するようで。
仮にもし。
ザンブレク城に張られた二重結界が『暁光の書』と『常影の書』の魔法を用いているのだとすれば、相当に厄介だと言いつつも破れないわけではないとルルムは口にする。
「天系統と地系統は相反する属性ですから。『烈火の書』、『蒼水の書』、『翠風の書』、『轟雷の書』の4冊を同時に展開して唱えることができれば・・・。破ることも可能だと思います」
クロノが放った『誓約の書』の魔法はすでに効力を失っているため、現在、旧約魔導書はどれも使用可能な状態にある。
あとは実際にそれぞれの国へ出向いて、旧約を手に入れる必要がある。
話しながら今後の方針がまとまった。
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