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05.皇宮舞踏会
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「お嬢様!」
背後から大きな声が聞こえて振り向くとそこにはサディがいた。サディはお父様に呼び出され今の今まで執務室にいたのと小さく走りながらに伝えた。きっと私のせいでお父様に酷く叱られてしまったはず。
「お嬢様、申し訳ございません。自分があんなことを言ったばかりに」
「ううん。サディは私がレベッカを助けたいっていう気持ちを尊重してくれただけだもの。それに、最終的に決めたのは私よ。サディは悪くない」
「ありがとうございます…お嬢様」
サディは悪くない。あの時、必死だった私に向けて解決策を提案してくれただけで、結局決めたのは私だし、怒られることも覚悟していた。それでもレベッカを見捨てるような形をとるわけにはいかなかったのだ。今のレベッカはヒロインではなく、一人の少女なのだから。
サディは部屋まで送ると言い、私の一歩後ろに付いて歩き始める。薄暗い廊下に夕日が差し込んで綺麗だ。庭の薔薇がこちらを見ているように綺麗に咲いていて硬い表情は少しほぐれた。
「ねえサディ」
「はいお嬢様」
「今度の舞踏会、公爵家の娘としてでなければならないと姉様に言われたんだけど、パートナーとして出てくれる?」
この世界では、ストレートに女性からパートナーを申し込むことは礼儀として良しとされていない。基本的に男性から申し込むものだ。もし女性から申し込みたい場合はハンカチに自分で刺繍をして、それを渡すというやり方でなければならない。
ただ、今はサディを他の女性に奪われてしまうのではないかという心配が先走ってしまったのかもしれない。
「あ!ごめんね。ハンカチは渡す…!もしパートナーが既にいるのなら断って構わないわ」
そう言っても、サディから返事は返ってこない。少し俯いてしまったサディの顔を覗き込むとサディは、ハッとしたように顔を上げた。
「あ、あの、舞踏会というのは皇宮舞踏会の事ですよね…自分なんかがお嬢様のエスコートなど…」
そう言うことか。皇宮舞踏会に自分は相応しくないと、そうサディは思っているのか。
「そんなことないよ。私はサディが良いの。サディが嫌と言わないなら…」
正直なところ、サディ以外に親しい男性がいないというのも一つの事実だ。舞踏会でパートナーがいないなど姉様に何と言われるか…きっと厳しいに決まっている。サディなら公爵家の騎士として、充分資格があるし、何と言っても美形…!美形万歳!ザ・好みの顔!
「自分は嫌ではありません...し、お嬢様の命令に逆らうことなどできません」
「…サディ、これは命令ではないわ。私はただの一女性としてお願いしているの。それを決めるのはあなたよ」
主人だからって嫌な相手をエスコートするなど、どれほど苦痛なことか。それにサディに想い人がいるのなら私が邪魔をすることは許されない。
「自分はお嬢様のパートナーになりたいです…」
「なら…」
サディは覚悟を決めたような表情をする。きっと皇宮の舞踏会など、サディも初めてだろう。それだけ緊張するのもわからなくはない。まあ私も初めてだけれど。
「上手くエスコートできるかはわかりませんが、精一杯努めますので自分で良かったらお嬢様をエスコートさせてください」
優しい手つきでサディは私の手の甲に口付けする。一人の女性として、今は主と従者ではなく対等な関係になれたような気がして少し嬉しい。もちろん私は頷き、これでパートナーが決まったことになる。
お互い恥ずかしくて部屋に着くまでほとんど会話はなかったが居心地が悪いものではない。送ってくれたサディにお礼をすると、別れる直前にサディは「ドレスを送ります…!」、と言って去って素早く帰って行った。ドレス、というのは安いものでも貴族ではない人からすれば高価なものだ。それも、他人にプレゼントだなんて、相当な出費のはず。でも、あそこまで張り切って送ります!なんて言われてしまえば、どう気遣ったらいいものか、わからなくなってしまった。
「ふぅ…」
ベッドに飛び込んで枕に顔を埋める。
初舞踏会、初パートナー…。異性と出かけるなど無縁だった日本にいた頃とは随分とかけ離れたイベントだ。舞踏会ってどんな感じなんだろう…?
「楽しみ…」
小声で呟いたその言葉は広い広いこの部屋ではすぐに散ってしまう。この時の私は舞踏会で何が起こるかも知らない無知な一人の少女だった。
背後から大きな声が聞こえて振り向くとそこにはサディがいた。サディはお父様に呼び出され今の今まで執務室にいたのと小さく走りながらに伝えた。きっと私のせいでお父様に酷く叱られてしまったはず。
「お嬢様、申し訳ございません。自分があんなことを言ったばかりに」
「ううん。サディは私がレベッカを助けたいっていう気持ちを尊重してくれただけだもの。それに、最終的に決めたのは私よ。サディは悪くない」
「ありがとうございます…お嬢様」
サディは悪くない。あの時、必死だった私に向けて解決策を提案してくれただけで、結局決めたのは私だし、怒られることも覚悟していた。それでもレベッカを見捨てるような形をとるわけにはいかなかったのだ。今のレベッカはヒロインではなく、一人の少女なのだから。
サディは部屋まで送ると言い、私の一歩後ろに付いて歩き始める。薄暗い廊下に夕日が差し込んで綺麗だ。庭の薔薇がこちらを見ているように綺麗に咲いていて硬い表情は少しほぐれた。
「ねえサディ」
「はいお嬢様」
「今度の舞踏会、公爵家の娘としてでなければならないと姉様に言われたんだけど、パートナーとして出てくれる?」
この世界では、ストレートに女性からパートナーを申し込むことは礼儀として良しとされていない。基本的に男性から申し込むものだ。もし女性から申し込みたい場合はハンカチに自分で刺繍をして、それを渡すというやり方でなければならない。
ただ、今はサディを他の女性に奪われてしまうのではないかという心配が先走ってしまったのかもしれない。
「あ!ごめんね。ハンカチは渡す…!もしパートナーが既にいるのなら断って構わないわ」
そう言っても、サディから返事は返ってこない。少し俯いてしまったサディの顔を覗き込むとサディは、ハッとしたように顔を上げた。
「あ、あの、舞踏会というのは皇宮舞踏会の事ですよね…自分なんかがお嬢様のエスコートなど…」
そう言うことか。皇宮舞踏会に自分は相応しくないと、そうサディは思っているのか。
「そんなことないよ。私はサディが良いの。サディが嫌と言わないなら…」
正直なところ、サディ以外に親しい男性がいないというのも一つの事実だ。舞踏会でパートナーがいないなど姉様に何と言われるか…きっと厳しいに決まっている。サディなら公爵家の騎士として、充分資格があるし、何と言っても美形…!美形万歳!ザ・好みの顔!
「自分は嫌ではありません...し、お嬢様の命令に逆らうことなどできません」
「…サディ、これは命令ではないわ。私はただの一女性としてお願いしているの。それを決めるのはあなたよ」
主人だからって嫌な相手をエスコートするなど、どれほど苦痛なことか。それにサディに想い人がいるのなら私が邪魔をすることは許されない。
「自分はお嬢様のパートナーになりたいです…」
「なら…」
サディは覚悟を決めたような表情をする。きっと皇宮の舞踏会など、サディも初めてだろう。それだけ緊張するのもわからなくはない。まあ私も初めてだけれど。
「上手くエスコートできるかはわかりませんが、精一杯努めますので自分で良かったらお嬢様をエスコートさせてください」
優しい手つきでサディは私の手の甲に口付けする。一人の女性として、今は主と従者ではなく対等な関係になれたような気がして少し嬉しい。もちろん私は頷き、これでパートナーが決まったことになる。
お互い恥ずかしくて部屋に着くまでほとんど会話はなかったが居心地が悪いものではない。送ってくれたサディにお礼をすると、別れる直前にサディは「ドレスを送ります…!」、と言って去って素早く帰って行った。ドレス、というのは安いものでも貴族ではない人からすれば高価なものだ。それも、他人にプレゼントだなんて、相当な出費のはず。でも、あそこまで張り切って送ります!なんて言われてしまえば、どう気遣ったらいいものか、わからなくなってしまった。
「ふぅ…」
ベッドに飛び込んで枕に顔を埋める。
初舞踏会、初パートナー…。異性と出かけるなど無縁だった日本にいた頃とは随分とかけ離れたイベントだ。舞踏会ってどんな感じなんだろう…?
「楽しみ…」
小声で呟いたその言葉は広い広いこの部屋ではすぐに散ってしまう。この時の私は舞踏会で何が起こるかも知らない無知な一人の少女だった。
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