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Falling 1
全然後悔してねえから
しおりを挟む破滅の天使……。
仲間を殺すための力?それがあいつの役目?
ふざけんな、何だよそれ。
俺なんかよりあいつの方がずっと辛い目に遭ってたんじゃねえか。
それなのに、平気なふりして、いつも笑って……。
「ルルフェルッ!!!」
小屋を飛び出した俺は、どこへともなくあいつの名を虚空へ叫ぶ。
ルルフェルを見つけたとして、何て言葉をかければいいのか。
何も思いつかないし、考える余裕もないけど、とにかくあいつを。
そんなことばかり考え、1人で必死になっていたら……。
「ん?」
いた。
勢い任せに駆け出して、何気なく後ろを振り向いたらいた。
申し訳なさそうな顔で、真っ白い砂で山を作って遊んでるあいつが。
「何でだよ!!」
俺は思わずずっこけた。
拍子抜けというか、もう言葉通りの感情だった。
「お前!!あっちの方向に思いっきり飛んでっただろ!何で小屋の真横にいるんだよ!?」
探しにいくために飛び出したのだが、こんな簡単に見つかると逆に困る。
「や、あの、カッとなって出て行ったものの、やっぱり一人だと危ないかなって思って……。すぐ戻って来ちゃいました……」
えへへと控えめに笑う堕天使を見て、俺はどこか少し安心していた。
それにしても、熱くなって恥ずかしい言葉を口に出してしまう前に気づけてよかった。
そして、何か言わなくちゃとにまごついていると、ルルフェルがゆっくりと口を開いた。
「……聞いたんですよね、私がどんな天使だったか。すいません、ここにいたので、話が全部聞こえてきちゃいました」
ずっと小屋の真横にいたんだ、そりゃ聞こえているか。
俺達は、ばつが悪そうに下を向いている。
「カイネさんには、知られたくありませんでしたね。天使を処刑するための、汚れた天使だったなんて……。アハハ……」
そう言ってルルフェルは、自嘲気味に笑う。
「ルルフェル……」
いつもとは違う、痛々しい笑みだ。
名前を呟くのが精一杯だった。
「私、本当は破滅の力がカイネさんの手に渡って、ほっとしてたんです。もう、誰も傷つけることもないんだなって……」
思い返してみればこいつは力を失った時、やけにその事実をあっさり受け入れていた。
ずっと重荷になっていたんだろうか、この力が。
「少し頭を冷やして、私……反省しました!カイネさんは、カイネさんのやりたいことをやってください!あなたは、私の祝福を受けた最初で最後の人間なんです。私が言えた立場じゃないですけど……カイネさんには自由に生きて欲しいです!」
きっと、それはこいつの嘘偽りのない本音だ。
根拠もないし、本当にこいつが言えた立場じゃないけど、なぜかそう感じられた。
「分かった、好きなようにさせて貰うよ」
突き放すような俺の言葉を聞いた堕天使は、安心したような、少し寂しそうな表情を浮かべた。
そして、俺はそんなルルフェルに近づいて、ついさっき決心がついたことを宣言する。
「俺達でつくるぞ、お前の仲間が全員自由に生きれる、天界よりもずっと楽園みたいな場所を」
「え…?」
驚くを通り越してルルフェルは、きょとんとしたまま言葉を失っている。
「俺も天界のそのルール気に食わねえし。俺もお前と同じ状況なら、そうしてたかもしれねえし。お前がそんな感じだと、俺もやり辛いし……。そ、それに、生まれ変わったヘルヘイムを見せて、俺を捨てたあの国の連中を驚かしてやれるしな!」
言い慣れないことを言ってしまって、少し饒舌になってしまった。
一方のルルフェルは、まだ感情が整理できていないのか、俺の目を見つめたままだ。
そんな状態の堕天使に、俺は饒舌ついでに一つ伝えておきたかったことを話す。
「……それにお前、最初に会った時、絶対後悔させないって言ってただろ?」
それはこいつが最初に俺に言った、妙に記憶に残っていた言葉だった。
「俺、まだ全然後悔してねえから」
それは俺なりに一生懸命考えた、精一杯の一言だった。
それを聞いたルルフェルは、一瞬顔を歪ませて俯いた後、すぐに駆け出し……。
「カイネさーん!!ありがとうございまーす!!もう、優しくて大好きぃ!!」
俺の胸に力いっぱいダイブしてきた。
「ちょ!?バカ!やめろ!くっつくな!お前の手ぇ、汚れてるだろ! 」
「む!誰の手が汚れてるって言いました!?傷を抉るようなこと言わないでください!ひどいです!」
「そういう意味じゃねえよ!砂いじってた手で触んなってことだよ!!」
ルルフェルは、すっかりいつもの調子に戻っていた。
こいつがしおらしいと調子が狂うし、少し極端すぎるがこれでよかった。
「い、いい加減離れろって!それに、俺は優しくなんかねえから!あんな話聞かされたら、誰だって放っておけねえだけだから!」
「えへへ、カイネさんはやっぱり優しいです」
頑なに俺を優しい人認定すると、ルルフェルはやっと俺から離れた。
そして、海の方へ少し駆けて行って、羽を広げてくるっと振り返る。
「私……カイネさんが私の名前を必死に呼んでくれた時、何て言うか、そのぉ……」
ルルフェルは、珍しく言葉を探している様子で、少し考えた後にこう言った。
「すっごく嬉しかったです!」
今までで一番破壊力のあったその笑顔に、俺は思わず顔を逸らした。
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