【堕天】スキルのせいで速攻島流しされたけど、堕天希望の天使達が割と多いので、一緒に楽園を創ることにします

ゴトー

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Falling 1

豊穣の天使

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 ピクピクと動き出したその蕾は、突然水中でパッと花開いた。


「あ、咲いた……」


 俺が見たままの光景を口にすると、その花の周りがボコボコと盛り上がり、根の部分から何かが言葉を発しながら、勢いよく飛び出す。


「潤いましたわー!!!」


 出てきたそれは水面を遥か突き抜け、空高く舞い上がる。

「ぷはぁ!!何よこれぇ!?」

 一番近くにいたユールが、思いっきり水飛沫を顔面に浴びる。
 そして、空を見上げたルルフェルはそれが何かを知っていたようだった。


「メルちゃん!メルちゃんじゃないですか!!」


 メルちゃんと呼ばれたそいつは、クルっと翻って急降下して再び聖水の湖に飛び込む。

「ぷは!!だから何なのよこれぇ!?」

 もう一度水飛沫をもろに浴びて、ユールの顔はもうびちゃびちゃだ。


「お久しぶりですわぁ!ルルフェル様ぁ!!」


 頭に大きな花を咲かせてにっこり笑うそいつの背には、ルルフェル達と同じ白い羽がついていた。
 そして、花の下になって分かりにくいが、よく見ると頭にあの輪っかもついている。
 間違いない、何でこんな状況になってたのかは知らんが、こいつも天使だ。


「天界から出るのは大変だったでしょう、よく来てくれましたね!頭のお花が縮んでいたので、分かりませんでしたよ!」
「ええ、本当に大変でしたわ……。天界の追手から必死に逃げて、やっと着いたと思ったら怖いモンスターしかいなくて……。そうやってお水も無しに何日も放浪していたら、もう動けないほど弱っていたんですの……」
「ああ、だから地面に埋まってたんですね」


 だからの意味はさっぱり分からなかったが、これでこいつが天使なのは確定だ。
 ……ていうかお前ら、普通の登場できないのかよ。


「あの、それで……どなたです?ドライフラワーだったわたくしに素敵なお水をくださったのは?」


 きょろきょろと周りを確認する天使。


「一応、俺なんだけど…」


 水に浸かった堕天使二人が同時に俺を見たので、空気を読んで名乗り出た。

「ま、あなたが素敵なお水を出した素敵なお方……♡」

 素敵の意味が分からなくなるようなことを呟くと、彼女の頭の花がもう一段階きらびやかに咲いた。

「感謝いたしますわ!あの、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか!?あと、お花はお好きですか!?」

 彼女は俺に歩み寄り、両手で俺の手を取る。
 急にそんなことをされて、俺は少し動揺してしまう。

「あ、ああ、俺はカイネ。そこのやつに無理やり巻き込まれて、ここに島流しにされたんだ。……あ、花?まぁ、別に嫌いじゃないけど」

 俺の嘘偽りのない自己紹介に、ルルフェルが頬を膨らませる。
 

「まあ、カイネ様!お花がお好きなんて、ますます素敵ですわ!私はメルメル、豊穣の天使を務めていますの!ふつつかものですが、よろしくお願いいたしますわ!」


 豊穣……穀物がみのりゆたかなこと。また、そのさま。

 豊穣の意味を脳内で確認し、これはかなり有用そうな力の天使ではないかと、俺は大いに期待する。
 そんな俺と目をキラキラさせたメルメルの間に、青い髪の堕天使がぬっと割って入る。


「ユールよ、元聖水の天使。よろしくね」
「まあ、ユールさんですわね!よろしくお願いいたしますわ!」

 
 急にカットインしてきたユールは、メルメルに自己紹介をする。
 そして、その後すぐに妙な違和感の正体に気づいた。


「ちょっと待って、何でユールだけ「」じゃなくて「」付けなのよ?」


 怪訝な顔をしたユールに、メルメルは何食わぬ顔で返答する。

「だってルルフェル様は大天使、カイネ様は大切で素敵な恩人、ユールさんとは……まだただの初対面なんですもの」
「な……」

 可愛い顔してばっさりと斬り捨てる天使に、ユールはわなわなと震える。

「メルちゃんはその辺しっかりしてますもんね」
「何なのよそれぇ!変な差つけないでよ!その聖水だって、元々はユールの力なのに……へくちっ!!」

 扱いの改善を訴えようとしたところで、思わずユールはくしゃみが出てしまった。

「ぐず……。何か鼻が……どうしたってのよ、もう……」
「何だ、風邪か?」

 泣きっ面に蜂のユールに、俺は何気なく言ったつもりだったが、その言葉にユールははっとした。

「風邪……?そ、そうよ!こんなことしてたら風邪ひくわ!天使と違って堕天使は、人間みたいに普通に体調崩すのよ!」

 そう言ってユールは、慌てて陸の方まで飛んでいく。
 後を追うようにルルフェルとメルメルも、濡れた羽を重たそうにしながら飛んでいく。


(いや、俺も運んでってくれよ……)


 そう心の中で呟きながら、俺は地味に距離のある湖を泳いで渡った。
 平泳ぎで。 

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