【堕天】スキルのせいで速攻島流しされたけど、堕天希望の天使達が割と多いので、一緒に楽園を創ることにします

ゴトー

文字の大きさ
16 / 74
Falling 1

豊穣の天使

しおりを挟む

 
 ピクピクと動き出したその蕾は、突然水中でパッと花開いた。


「あ、咲いた……」


 俺が見たままの光景を口にすると、その花の周りがボコボコと盛り上がり、根の部分から何かが言葉を発しながら、勢いよく飛び出す。


「潤いましたわー!!!」


 出てきたそれは水面を遥か突き抜け、空高く舞い上がる。

「ぷはぁ!!何よこれぇ!?」

 一番近くにいたユールが、思いっきり水飛沫を顔面に浴びる。
 そして、空を見上げたルルフェルはそれが何かを知っていたようだった。


「メルちゃん!メルちゃんじゃないですか!!」


 メルちゃんと呼ばれたそいつは、クルっと翻って急降下して再び聖水の湖に飛び込む。

「ぷは!!だから何なのよこれぇ!?」

 もう一度水飛沫をもろに浴びて、ユールの顔はもうびちゃびちゃだ。


「お久しぶりですわぁ!ルルフェル様ぁ!!」


 頭に大きな花を咲かせてにっこり笑うそいつの背には、ルルフェル達と同じ白い羽がついていた。
 そして、花の下になって分かりにくいが、よく見ると頭にあの輪っかもついている。
 間違いない、何でこんな状況になってたのかは知らんが、こいつも天使だ。


「天界から出るのは大変だったでしょう、よく来てくれましたね!頭のお花が縮んでいたので、分かりませんでしたよ!」
「ええ、本当に大変でしたわ……。天界の追手から必死に逃げて、やっと着いたと思ったら怖いモンスターしかいなくて……。そうやってお水も無しに何日も放浪していたら、もう動けないほど弱っていたんですの……」
「ああ、だから地面に埋まってたんですね」


 だからの意味はさっぱり分からなかったが、これでこいつが天使なのは確定だ。
 ……ていうかお前ら、普通の登場できないのかよ。


「あの、それで……どなたです?ドライフラワーだったわたくしに素敵なお水をくださったのは?」


 きょろきょろと周りを確認する天使。


「一応、俺なんだけど…」


 水に浸かった堕天使二人が同時に俺を見たので、空気を読んで名乗り出た。

「ま、あなたが素敵なお水を出した素敵なお方……♡」

 素敵の意味が分からなくなるようなことを呟くと、彼女の頭の花がもう一段階きらびやかに咲いた。

「感謝いたしますわ!あの、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか!?あと、お花はお好きですか!?」

 彼女は俺に歩み寄り、両手で俺の手を取る。
 急にそんなことをされて、俺は少し動揺してしまう。

「あ、ああ、俺はカイネ。そこのやつに無理やり巻き込まれて、ここに島流しにされたんだ。……あ、花?まぁ、別に嫌いじゃないけど」

 俺の嘘偽りのない自己紹介に、ルルフェルが頬を膨らませる。
 

「まあ、カイネ様!お花がお好きなんて、ますます素敵ですわ!私はメルメル、豊穣の天使を務めていますの!ふつつかものですが、よろしくお願いいたしますわ!」


 豊穣……穀物がみのりゆたかなこと。また、そのさま。

 豊穣の意味を脳内で確認し、これはかなり有用そうな力の天使ではないかと、俺は大いに期待する。
 そんな俺と目をキラキラさせたメルメルの間に、青い髪の堕天使がぬっと割って入る。


「ユールよ、元聖水の天使。よろしくね」
「まあ、ユールさんですわね!よろしくお願いいたしますわ!」

 
 急にカットインしてきたユールは、メルメルに自己紹介をする。
 そして、その後すぐに妙な違和感の正体に気づいた。


「ちょっと待って、何でユールだけ「」じゃなくて「」付けなのよ?」


 怪訝な顔をしたユールに、メルメルは何食わぬ顔で返答する。

「だってルルフェル様は大天使、カイネ様は大切で素敵な恩人、ユールさんとは……まだただの初対面なんですもの」
「な……」

 可愛い顔してばっさりと斬り捨てる天使に、ユールはわなわなと震える。

「メルちゃんはその辺しっかりしてますもんね」
「何なのよそれぇ!変な差つけないでよ!その聖水だって、元々はユールの力なのに……へくちっ!!」

 扱いの改善を訴えようとしたところで、思わずユールはくしゃみが出てしまった。

「ぐず……。何か鼻が……どうしたってのよ、もう……」
「何だ、風邪か?」

 泣きっ面に蜂のユールに、俺は何気なく言ったつもりだったが、その言葉にユールははっとした。

「風邪……?そ、そうよ!こんなことしてたら風邪ひくわ!天使と違って堕天使は、人間みたいに普通に体調崩すのよ!」

 そう言ってユールは、慌てて陸の方まで飛んでいく。
 後を追うようにルルフェルとメルメルも、濡れた羽を重たそうにしながら飛んでいく。


(いや、俺も運んでってくれよ……)


 そう心の中で呟きながら、俺は地味に距離のある湖を泳いで渡った。
 平泳ぎで。 

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

処理中です...