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Falling 2
宝石の天使
しおりを挟む「ラピスさん、下界は初めてですわよね?私、下界の色んなお花を揃えたお花畑を作りましたの!案内して差し上げますわ!」
普段のメルメルは、話す内容はともかく割と落ち着いた雰囲気のやつだ。
そのメルメルが珍しくはしゃいでいる、ラピスが来たのがかなり嬉しいように見える。
でも、その花畑は俺が作ったんだけどな。
一本一本にょきにょきと。
「んーそれは楽しみッスけど、まずこの輪を外さないと。それに皆さんに自己紹介もまだだし、それが終わってからお願いするッスよ!」
やはりラピスはちゃんとした天使らしい。
手を引っ張るうきうきメルメルに対して、俺達への挨拶を優先したラピスは優等生感が強い。
俺も常識人ポイントを稼ぐため、先に名乗ろうと思ったのだが……。
「カイ姉ぇはねぇ!エルのお姉ちゃんなの!足がスベスベでぇ、優しくてぇ、お腹がどんぐりみたいに寝やすいの!大好きっ!」
なぜかエルが、先立って俺の紹介を始めてしまった。
それも9割方不要な情報で。
「エル、大丈夫。俺は自分で自己紹介できるから。いい子だから、あっちのお姉ちゃんと遊んでてな」
俺は猫掴みで、どんぐりっ娘を後ろへパスする。
出来心で永久脱毛してしまった事までバラすし、この子は本当にもう……。
最後の取ってつけたような「大好き」がなければ、怒っていたかもしれない。
俺は一旦仕切り直そうとしたが、今度はそれを遮るようにラピスが話し出した。
「カイネ・フォン・アイリーンベルクさん……ッスよね、あの島流しで有名な。そっちは聖水の天使ユールさんに、どんぐりの天使エルヒェンシエルちゃん。そして、破滅の大天使ルルフェル様……」
ラピスはすらすらと全員の名前を言ってみせた。
天界脱走組が身バレしてるのは分かる。
だが、俺まで天界に特定されているのは少し穏やかじゃない。
しかも、島流しで名前通ってるのかよ。
「他の大天使様に聞いたんスよ。不正なギフトで、天使を堕天させてる人間の話を。その時に、堕天させられた天使のリストも見せて貰ったッス」
堕天させられたという表現に一言物申したいが、そんな事よりもっと気になる事がある。
「今更だけどさ、俺達って本当に大丈夫なのか?お偉いさんの天使にしっかり目ぇ付けられてんじゃん……」
改めて俺達がしている事を考えれば、天界側から何をされてもおかしくない。
途端に職員室に呼び出しくらった時のような気持ちになったが、ラピスの返答は至って楽観的なものだった。
「うーん、多分大丈夫ッスよ。本来、堕天自体が重罰だから堕天使を更に罰する法はないし、人間に直接手を出すのも禁止されてるッス」
法的根拠をつらつらと述べたラピスは、言葉を選ぶような言い方で更に続ける。
「それに神様は、何て言うか凄く変わってて……。どちらかと言うと、これからあなた達がどうするのかに、興味があるだけな感じがするというか……」
何だかはっきりしない物言いだった。
神様ってのがどんな考え方なのか知らないが、勝手にそちら側の天使を引き抜いてるんだぞ。
そんな感じでいいのか?
「まあ、心配してもどうしようもないッスよ!……てな訳で、遅くなってしまったけど自己紹介ッス!アタシはラピス!宝石の天使なんで、これからよろしくッスね!」
無理矢理話の腰を折って、ラピスは強引に自己紹介をした。
「本当に大丈夫なのかよ……」
いまいち安心しきれないが、法ってのは往々にして穴だらけのものだ。
どの道ここまでやっておいて後戻りはできないだろうし、セーフだと思い込もう。
あれ、ていうか今……。
「え、宝石?」
もやもやと考えている最中に、さり気なく何の天使なのかカミングアウトされていた。
宝石、か……。
価値は高いだろうけど、ヘルヘイムで使い道なんてあるのか?
そう思っていると、あまりピンと来てなさそうな俺の顔を見て、メルメルが食い気味に補足する。
「ラピスさんは、天界中から引っ張りだこのジュエリーデザイナーにして、宝石建築の第一人者。細かな宝飾品から、大きな物まで何でも宝石で作ってしまうクリエイティブさんですわよ?」
説明を終えたメルメルは、ドヤ顔でこちらの反応を待っているが、俺は「宝石建築」という謎の単語に疑問符が湧き出て仕方がない。
すると、今度は後ろにいたやつが、急に割り込んできて訳知り顔で呟いた。
「なるほど、あんたがあの宝石の天使だったのね。宝石100%のギラギラの大聖堂とか、でっかい大天使像を人数分一人で作ったって噂の……」
エルを肩車しているユールがやたらとスケールの大きな事を口走った。
「大聖堂!?そんなでかいの作れるのか!?宝石で!?」
予想外の用途に驚いた俺は、ユールとラピスに交互に視線を移す。
ラピスは得意気に、ユールと違って結構ある胸を張って答えた。
「もちろんッスよ!宝石で作れない物はないッスから!」
俺にとって宝石は、貴族の見栄の張り合いに使われるイメージしかなかった。
まさか、建築材としてのポテンシャルまで秘めていたとは……。
一回どんぐりでガクンと落ちたが、また便利な能力が転がり込んできたぞと、俺は小さくガッツポーズをした。
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