夏祭り

あきや

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大丈夫だよ・・・

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夏祭り。
浴衣を着て、髪を上げる。
アナタと折角行けるのだから、頑張らなくちゃ。
カタンカタンと草履がなる度に、鼓動が早くなり、緊張が増してくる。
「ごめんね!・・・待った?」
頑張って、声を出して尋ねる。
「ううん。今来たとこ。・・・行こっか。」
いつも通りの落ち着きで、リードしてくれる。
「うん。」
私は、そのアナタの背中をずっと見つめていたし、これからも、ずっと見つめていたいんだ。
「ねぇ、何から行く?」
振り返って笑ってくれる。その笑顔、反則だよ。
「うーん、・・・行きたいところいっぱいで迷っちゃうや。」
思いつくところがなく、言ってしまう。
「じゃあ、僕の行きたいところ、着いてきてくれる?その間に行きたいところあったら、言ってね。」
「うん。」
私の心臓は、ずっと早いまま変わらず、顔は火照っている。
後から考えると、アナタが行ってくれた場所って全て、女の子が好きなところばかりだったね。

花火が始まる少し前、急に
「今から、いい?」
と言った。
私は、頷いてついて行った。
行先は、少し離れた河川敷。
「近い川の所じゃなくて良かったの?」
つい、聞いてしまう。
そして、ちょこっと期待してしまう。
「こっちの方が人が少ないし、こっちからの眺めもいいよ。」
アナタは、ずっと笑っている。
「・・・わ、たしね。」
決心をして、声を出す。
思ってる以上に、今の自分は喋れる状態じゃなさそう。
でも、伝えるしかない。
今日しか、ない。
「・・・花火、始まったよ。」
こっちを見ていたアナタが、空を見てしまう。
「・・・そうだね。」
私も続いて空を見る。
大きな花火が空を明るくする。
「・・・私、アナタのこと。ずっと好きだったよ。」
空を見ながら、そんなのことを呟いてしまい、はっと我に帰ってから、恥ずかしくなる。
横目でアナタを見ると、聞こえてたんだと思う。
こっちをみた。
その表情で返事、わかっちゃうよ。
「ー」
1番大きいだろう花火と被って、聞き取りにくかったけど、伝わった。


「ごめん。」
って。


「うん。わかってたよ。」
アナタには、あの子しか写ってなかったから。
「・・・僕なんかを好きになってくれてありがとう。」
小さくこぼれて言葉に頷いた。
それから、お腹から、精一杯声を出す。
「早く、行っておいでよ!今日なんていい日、あんまりないよ?」
相当酷いだろう声にアナタは頷いてくれる。
そして、最後に言ってくれた。
「キミが僕を好きになってくれて良かった。ありがとう。僕がフラれたら、慰めてね。」
私に向けてくれた笑顔は最高でした。
フラれるわけないよ。だって・・・

あの子もアナタを見ていたから。

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