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第三章
話すか、話さない
しおりを挟む「電話ですよ?・・・電話ですよ?・・・電話ですよ?・・・電話d」
俺の好きなキャラの着信音に目を覚まし、応答のボタンを押す。
「・・・おはy」
『ハヤトくん!!ニュース見てる!!(?)』
唐突な真面目なユリの声に目が覚める。
「いや、見てないけd」
「今すぐ見て!大変なの!」
怒鳴り声にも似た声に危機感を覚え、急いでリビングに行く。
「ハヤト!?あんたがこんな早くに起きるなんて・・・!」
いつもより早く起きた俺に親は驚いているようだか、今はそれどころじゃない。
リモコンを手に取り、電源ボタンを押した。
そこに流れていたニュースの速報に、動揺する。
『○○高校、食堂の唐揚げに毒物混入。』
これが選択の恐ろしさか、と気づき、途端にこのゲームの怖さを思い知る。
「これが、選択した結果です。余談ですが、もう片方を選んでいれば、あなたとオトモダチさんは、食中毒で入院です。良かったですね。」
真顔で話すキヌヤに怒りが湧き出てくる。
パタンパタン
誰かが階段を降りてくる音がした。
この音は・・・
間違える筈もない。この足音は・・・
「おにぃー。なんでこの世にいるのー?」
寝起きの妹だ。
こいつはいつも俺にはあたりがきつい。
今日のように、平然と見下してくるのだ。
「俺がいるのは、まだ死んでないからだ。」
真顔で答えてまたテレビを見ると、妹はキヌヤがいることに気づいたようで、急に営業モードになる。
他人には、誰でもこうなるのだ。
「あっ!キヌヤさん、来てらしたんですか?朝からすいません!いつも兄がお世話になっております。」
キヌヤは真顔でお辞儀をして、俺の近くにきた。どうやら、キヌヤにもあの性格が合わないらしい。
この状態が続くのも良くはない。学校に行って様子を見よう。
「母さん!学校行ってくるわ!」
自室へ走りながら、母さんに伝える。
「あんたがこんな早くから学校行くなんて・・・嵐が来るわ・・・。」
親子揃って、俺をなんだと思っているのだろうか。
「ハヤトくん!!キヌヤくん!!」
通学路を走っている途中で、ユリの声が飛んでくる。
「ユリ!!が、学校、だ、大丈夫だよな?」
いつもは兄キャラで売ってる俺でも、流石に、パニクってしまう。
「大丈夫だよ。学校が潰れる程の事はないと思うよ。学校自体が悪いんじゃないだしね。」
こういうときだけ、やけに姉キャラになるユリにたまに(?)結構(?)お世話になってきた。
「ユリ。今から学校に様子見に行こうと思うんだけど・・・一緒に来てくれないか。」
ユリがいてくれたら、冷静でいられる気がする。
「・・・ハヤトくん。ダメだよ。行っちゃダメだよ。」
下を向いていつもより低いトーンで話すユリは暗い顔をしていた。
行ったらどうなるのか分かっているのかも知れない。
「悪いな。俺は行く。自分の目で確かめて見なきゃわかんねーだろ。」
そう言って、その場から走り去る。
あまり、あそこにいるとユリに本当に止められそうだったから。
別れ際、名前を呼ばれた気がしたが、振り向く事はしなかった。
ユリと別れて少しして、やっと学校の近くに来た。キヌヤは、ここまで一言も喋らず、ずっと俺の後ろを走ってきた。少し、尊敬する。
学校の門を見ると、報道陣が周りを囲んでいた。
どうやら、生徒が来るのを待っているようだ。
取材でもするのか。記者も大変だな。
現在、7時54分。
まだ誰も学校には来ないだろう。
それでも待っている記者に少し同情する。
後ろから来る人に気づかずに・・・
「ねぇ、君。・・・その制服は、◯◯高校の生徒だよね?話、聞かせてもらってもいいかな?」
若めの男性記者はそう言って、名刺を出した。
オダ ハルヒコ
名刺を見るに、割と有名な出版社所属のようだ。
「どう?ちょっとでもいいんだけど、話してくれない?」
オダがそう言った時、
時が、音が、周りの動きが止まった。
「長いこと来てなくて忘れてたわ。」
呆れたように笑うと、さっきまで黙っていたキヌヤが声を出す。
「今回は、『昨日の学校のことを話すか、話さないか』です。選択する方を押してください。」
携帯画面とオダを交互に見る。
はっきり言って、俺は、話してもいいと思っている。まぁ、この情報がいるかは微妙だけどな・・・。
ただ、俺が軽く考えて言った事が、大きな騒ぎになるかもしれない。
そう思うと、気が乗らない。
「キヌヤ。お前はどっちがいいと思う。」
キヌヤに、目は合わせず聞く。
「私には、選ぶ権利はございません。あなた様の人生です。あなた様が、お選び下さい。」
答えない。と言われてはしょうがない。
もう一度、画面を見て確認する。
「話すか、話さないか・・・か。」
俺は、頭をフル回転させて考え、恐る恐る、『話さない』を押した。
すると再び、世界は動き出した。
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