今日の空

さんかくまる

文字の大きさ
5 / 5

喧嘩

しおりを挟む
今日も僕はいつも通り、空の写真を撮り、学校へ向かった。学校につけば、いつも通り席に座り、授業の準備をした。でも、ひとつだけいつも通りでは無いことがあった。ソウタがいないのだ。
風邪でもひいたのだろうか。別に気にはしなかった。ただただ、ソウタがいない日を過ごした。授業中に笑われることも無ければ、昼飯もひとりで食べた。
学校が終わり、僕は家へと向かう。アイスを奢ることも、肉まんを奢ってもらうことも、ピザまんを横取りすることもなかった。


やはりソウタのいない1日はつまらなかった。そんなことを考えながら、家に入ると母親が慌てていた。そして、僕のただいまの声をかき消すような大きな声で言った。

「ソウタくんが入院したって…!!」

僕は走って母親に言われた病院へ向かう。面会時間はギリセーフだ。部屋の番号を聞き、ソウタがいる部屋に行くと、そこには包帯を巻かれたソウタが居た。ソウタは呑気に「よぉ、ハルキ」なんて言って笑ってるけど僕は一気に目の前が見えなくなった。ソウタが
「ハルキ…なんで泣いてんの?」
と言った。そこで僕は初めて自分が泣いていることに気付く。そして、僕の口から勝手に言葉が溢れる。
「心配したじゃんか…なんでそんなボロボロなんだよ…生きててよかった…」
僕は暫く泣いていた。やっと落ち着くと僕は怪我の理由を聞いた。するとソウタは
「いやぁ…実はさ、喧嘩したんだ。俺、ヤンキーに財布盗られそうになって!」
いつも通りソウタはけらけらと笑う。喧嘩してボロボロになるとか、かっこ悪すぎだろ。僕もつられて笑った。

何日間か経つとソウタはもう少しで退院出来ることになった。やっと孤独から開放される。いや、別に1人で寂しかったとかそういうのじゃない。違うから。


そんなある日、僕は何気なく屋上へ上がった。周りに、あいつぼっちだ、とか言われるのが嫌で逃げてきた。しかし、そこには先客がいる。3人組の不良グループ。校内でも有名だ。僕はこっそり逃げようとしたがたまたま聞こえてしまった。『ソウタ』という単語が。僕はピタリと動きを止めて、3人の話に耳をすませる。すると、そのうちのひとりが笑いながら言う。
「いやぁ、先輩、病院送りにしちゃうのは流石にやり過ぎっすよ~!ソウタ先輩包帯ぐるぐる巻でしたよ」
すると一番背の高いボスのような奴が言った。
「いいんだよ。あいつにはそれくらいしなきゃ。逆らってきたんだからよぉ。俺に逆らうとかいい度胸してるよな、あんなひょろひょろのお友達を守るためにさ、必死になってやんの」
げらげらと笑う。

ひょろひょろの、お友達?
それって、僕のこと?
僕を守るために、ソウタは喧嘩を?
よく分からなかったが、その場を後にした。


帰り道、土砂降りの雨だった。いつものように透き通った空が見えない。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...