Cross

蠍狐

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序章-「とまれ」

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 僕達は……今日も、生きる。

「シヴァ、起きて。朝だよ?」
「ふぁあ…………もー……朝?」

 ヴァン帝国の城の寮で……帝国兵士の僕、
  シヴァン・ハブリス は目覚めた。

「遅いよ、シヴァ。もう5時だよ?」
「5時…………?お前……そんな時間に起こしてんじゃねぇよ……」
「ダメだよ、今日も訓練するんだから!」
「6時じゃだめか……?」
「ダメに決まってるでしょ!」

 ……今、人の快眠を邪魔してくれたこのアホは、
 ルイス・サフィールと言って、所謂幼なじみ的な存在だ。
 こいつとは幼少期の頃からの友達(というよりかは一方的に絡んで来てるだけ?)である。かなり乙女っぽい1面がある。男のくせに。

 どちらにせよ、大切な、数少ない友達なのだ。

「ほら、シヴァ。訓練行くよ!今日も頑張るぞ……!」
「サフィー……勝手に盛り上がらないでくれるか……?」
「口動かさずに手を動かす!ボサッとしてると置いてくよ?」
「あー……はいはい、どうぞ置いていってくれ。」
「ダメだよ!僕と一緒に行くの~!」
「どっちだよ……」

 なんやかんやで僕は叩き起され、眠い目をこすりながら訓練へと向かった。



 この世界は、僕らが住む人世界だけでなく。
 魔族や罪を犯した人間が住む、魔界。
 獣族が住む獣界等、色々な種族が、丸々とした1つの青い星に居る。神や怪獣なんてのもこの世界に住んでるらしい……しかも神や魔族なんかがひっきりなしに争うもんだから……困った物だ。

 ……ただ、国王の説得の成果もあり、争いだらけの世界で、僕らは戦争に巻き込まれず、これまで一度も出兵すること無く平和に過ごしてきた。


 ……今日迄は。


  ━ヴァン帝国兵士寮▶ヴァン帝国城広間━


 ある時。急な呼び出しを受けた僕は、
 何事かと焦りながら広間へと向かった。
 既に広間には何千人もの兵士が集まっており、
 同じく、何事かと騒いでいた。

 しばらくして、国王であるヴァンザ・レグルスが現れ、集まった兵士達に、こう言った。

「皆の者、集まってくれてありがとう……そして……済まなかった。」

 辺りが静寂に包まれた事を確認すると、
 王は、続けて言った。

「……王国の近くで起こった魔人戦争に、出兵することが決まった。」

 王からの知らせを聞いた兵士達は、
 焦り。戸惑い……自身の動揺を隠せない様だった。

 それもそのハズ。
 ヴァン帝国の兵士達は長らく出兵しておらず、訓練だけを行い、町民と触れ合う生活が主になっていたからだ。
 (そもそも訓練をちゃんとしてたかどうかすら怪しいケド。)

「嘘……僕ら初めての戦場の相手が……魔族なの?」
「………………魔族か。全滅待ったナシだな……」
「な…何言ってるの?僕達ならやれるって……ねぇ…そうでしょ?シヴァ……。」

 ……そんな、皆の不安を一蹴する勢いで、
「お前達……何を騒ぐ必要がある?」
 若い女の兵士が皆を一喝した。

「お前達はこれまで誰が為に訓練を行ってきたのだ?自分の為?それとも国の為か……?違うだろ?」

 それまで不安に包まれていた兵士の顔が、
 自信ある表情へと次々に変わって行く……

「私達は!国民の為にこれまで培った力を尽くさねばならぬ!違うか!」

 ……数秒の沈黙の後、誰かが言い出した。

「……そうだよな……」「そうだ……確かに……俺たちは……」
「皆!この国の為!なんとしてでも魔族を追い返すぞォォォッ!」「おぉぉぉぉォォォォッ!!!!」

「お前達!今こそ団結の時だ!悪しき魔族を魔界へ追いやる為の……反抗を今!ここに示すべきでは無いだろうか!」

「おぉぉぉぉぉぉぉぉォォォッッッッ!!!!」「やるぞー!」
「魔族なんか怖かねェーッ!」「ぶっ潰せェェェェ!」
  
 ……次第に、言葉を聞いた兵士達の士気が上がっていく……
 そんな兵士を他所に。
「……こりゃもう…何かの宗教みたいだな……」
 僕は呟く。

 ……元々この出兵、僕は乗り気じゃない。
 訓練だけで実戦経験の無い兵士達を送り込んでも……
 大概が無駄死にになってしまう。

 だが、同時に戦争を起こす魔族に怒りがあるのも事実。
 ……僕は、平和にどっぷり浸かった帝国兵士が、本当に動けるのか……魔族と対峙できるのか。不安だったのかもしれない。

 ……そして、伝えたい。想定外の行動を取られた時、対応できるか?と。兵士の実力を、本当に分かっているのか?と……
 だが、僕は一国の兵士、所詮雑魚なのだ。
 ただの雑魚に、発言権などありゃしない。 
 あったとしても、大衆にかき消されてしまうのがオチなんだ。
 そんな思いを心の隅へと募らせながら、戦場行きの馬車へと連れられた。


   ━ヴァン帝国城広間▶ヴァン帝国正門━


 無事、数千の兵士が数十の師団に分けられ、
 僕は今からいわゆる【名誉の戦死】無駄死にとかいう物をこの身に実感しに行く所だ。
 話し相手としてサフィールを近くに置いて行きたかったが、自分の意見は呆気なく遮られた。

 にしても暇だ……暇過ぎて死にそうだ……いや、今から死にに行くんだけども。
 ……暇な間でも、考える事はある。
 せめて遺書くらいは残しておこうか、
 部屋にある大量の手紙や叙情詩はどうしようか。
 今自分達が乗っている馬車は僕が死んだ後どこへ行くのか。
 そんなことを考えていると、隣から強烈な圧がかかった。

「ハブリス……貴様よからぬ事を考えてはいないか?」
 また貴方ですか。と士気を上げに来たっぽい女兵士に考えを話す。
「……御明答。死にに行くようなもんなんですから、最後に何考えたって良いでしょ?」
「……貴様戦場に雑念を持ち込むのか?」
「えぇ、もう。実戦経験をした事のない兵士が、戦略を建てた所で無駄だと、私はそう感じるんです。」
「……あのな?これまでも我々は帝国内での訓練をしていたのではないか。よく考えてみろ。訓練といえど帝国の兵士に課した訓練は実戦を想定し…………


 あぁ。また始まった……

 先程からありがたい説教をしてくれている兵士は、先程数千人の兵士達を一喝していた、アンバー大佐だ。

 どうやら3年前、齢14歳にしてヴァン帝国の碧城守備・外交の欠陥アナを指摘し、改善に導いた、若い兵士らしい。

 成果はそのくらいしか知らないが、一つ、誰でもわかる事。それは、黙ってれば可愛い、そんな上司である。

 本当、黙ってれば可愛いんだがなぁ……


 ……だから訓練を積んで、今こうして実地訓練兼実戦を……………」

「……ハブリス。先程私が言ったこと、もう一度言ってみろ。聴いていたのであれば……全部言えるよな?」


 ……やべ、話を聞いていないのがバレた。

「えー……と、要は「訓練したから大丈夫!」って事でしょう?申し訳無いですが、結果は目に見えて分かりますよ……」
「…………フン、まぁいい。……広場で宗教呼ばわりした事、覚えておけよ……」

 ……それも聞いてたのか、この地獄耳。



 しばらくの沈黙が馬車の中を襲った後、ゆっくりと……馬車は止まった。緊張か、後悔か。兵士達に尚も静寂が襲う。

「着いたぞ。皆、準備は出来ているか?」
「当たり前だ!!俺たちは訓練して……訓練して、強くなっている!」「やるぞぉぉぉぉッ!!」「っしゃおらぁぁぁあああ!」
 あまりにも声がうるさ過ぎて、衝動で言葉を放つ。
「……申し訳ないが、デカい声を出さないでくれないか……?」
 それに呼応するかのように、他の兵士達が一斉に僕に噛み付く。
「何だ……ハブリス、俺たちがうるさい、そう言ってるのか……?」「てめぇ士気下がるような事言ってんじゃねぇぞ!」
      …またやった。シヴァン・ハブリス兵士番号1P1979Hの悪い癖である。
      その場の雰囲気だけは崩しても、論理的な1面を崩したくなかった僕は、テキトーにこさえた論理的思考を皆に騙る。あぁ……滑稽。実に滑稽である。
「……元気なのは勝手でもいいよ。だが世の中にはTPOがあると言うじゃないか。ここは何処だ?もう戦いの場に着いたんじゃ無いのか?」

「だから今こうやって士気を上げようとしてるんじゃないか!」「そうだそうだー!」
      (……しまった。詰まる言葉を前にして、兵士たちが盛り上がり始めた。少し……マズイかもしれない。うるさいのが嫌いなだけなのに、なんでこんな……)
「……相手は魔族。どんな力を持つかさえ分からない。敵が何らかの索敵能力を持ってて、俺たちの声が筒抜けかもしれないんだぞ?」

「そっ……それは……」「……何が言いたいんだよ!」

「……相手が強大な力を持つという事は分かるだろ?神と戦争してんだから……それに対して人間の力は……正直アリ以下かもしれない。もしかしたら、単純な力以外にも何か対策をしてきているのかもしれない。そんな状況で、人間側の貴重な戦力を……潰す気か?」


 ……静寂が馬車の中を包みこむ。
 確実に水を差したが、相手は未知数だ。
 正直、これくらいの緊張感くらいは持ってもらわないと……すぐ人間側は潰れるだろう。
 ……いや、もしかしたらそれを承知で、玉砕覚悟で相手に挑もうとしているのでは無いか……?だとしたら、かなり悪い事をした……

 思考がひとつ、またひとつと巡り合わせるも、兵士はお構い無しに口にする。
「……そうだ…俺たち……バケモン相手にするんだった……」
「……善戦に持って行けるように……そうだな。慎重に、かつ大胆に行くんだ……俺たちは。」

「……皆!大胆さも必要だが……時に慎重に、凶暴に行く事を頭に入れ……勝っても負けても………生きて帰れる様にしろ!いいな!」

「おぉぉッ!!」
 ……ほっ、これで少しは団結が出来たのではないだろうか。だから頼む。大佐。こっちに圧を飛ばさないでくれ。僕が悪かったから。

    ━ヴァニスティラ平原━


「……なぁ、お前、平原のど真ん中に行って叫んで来いよ……!」
「嫌だよ絶対なんかあるぜ……?!」「どうすんだよ……ッ」

 僕達は今、戦争の真っ最中である。しかし……

「おかしい……敵が1人も……いないと…?」
「……そればかりか……敵の足跡一つ無いとは…………ハブリス、魔族の中には……飛ぶヤツも居るのか?」
 なんで僕に聞くんだ……えぇと……
「……確かに居る、と……書には記してありました、しかし……飛ぶ様な魔族は大抵……自陣で指揮などの方に当たる、と……」

 ……どこか嘲笑われているような……そんな気を感じた。

 すると……
「フフッ……君たちはずっとそこで待ってればいいよ……倒しに行くから。」

 微かではあるが……確実に……誰かの声が聞こえた気がして……

「うわぁぁぁぁぁッ」「どうしたんだマイ…ッ…」
「なんだ?!皆に…皆に突然穴がァッ」「大佐!これはァガッ」

 ……横から、皆の絶命する音が聞こえた。

「……なんだこれは……っ…………」
「……大佐、一旦平原に出ましょう……」
「ハブリス……それは…死にに行くのか?!平原は避ける物など無いんだぞ?!」
「どうでしょう……どんな攻撃を受けたかさえ知らずに死ぬよりマシだと思いますけどね……!!」
「……それにほら、敵が出てきたみたいです。今他の師団とやり合って……ま…………す……………………」

 僕はその場で絶句してしまった。

 敵だと思われたのは、先程まで王国の広場で雄叫びを上げていた、自軍の兵士で……同じくヴァン帝国の師団と戦っていた。

「……なんだアイツら……トチ狂ったか?!」
「皆!まずはアイツらを止めに行くぞ!このままじゃ自滅待ったナシだ!」



 僕達は、何故か自軍を攻撃し始めた兵士達を止めに、
 平原のど真ん中で兵士達と戦っていた。

「どうしたんだお前ら?!何があった!」
「分からない……けど無性に帝国が憎い!」
「憎い?!僕達は帝国の兵士だぞ?!敵に回ってどうする?!」
「分からないんだ……とにかく……とにかく皆……何もかもが憎いんだ……!何もかもを壊したいんだぁぁァ!」

 勢いのまま、兵士達は僕に……仲間に、斬りかかってきた。
 説得も虚しく……僕達は、自軍の兵士達と戦うしか無かった。

「シヴァ……逃げて………僕……何かが…おかしい…………」
「サフィー?!お前まで……何があったんだ?!」
「わかんない……でも、魔物と一緒に居た少年を見た瞬間………」
「とりあえず冷静になれ……落ち着いて、そうすれば……」
「ダメなんだ……やっぱり…………ッ…全てが………憎くて……」
「自我をしっかり持て!そうすれば……」
「…君のその謎な所……嫉妬しちゃいそうだよ……シヴァ!」
「サフィー……落ち着いて、話を聞いてくれ!俺はお前を傷付けたくない!」
「死んでくれよ……シヴァぁぁぁぁぁッ!」

 ……シヴァが振り下ろした剣で。
 僕は死んでしまう。それを覚悟した……

 しかし。
「ぐあぁぁァァァぁァッ………」

 剣は、立ち塞がったアンバー大佐の……左腕を断ち切った。
 完全に、だ。

 そして、この瞬間、気付かされた。
 サフィールとも。仲間と対峙するしか生きる術は無い。と……

「アンバーさん?!なんで……」
「ボサっとするな!コイツらはもう味方では無い!」
「でも……」
「覚悟して来たのだろう?!馬車の中でも最後まで周りを見れていたのはハブリス、お前だった筈だ!冷静さを取り戻せ!」
「……大佐……しかし……」
「今は目の前のことに集中しろ!そうでなくては…死ぬぞ!」

 確かに、覚悟は出来ていた……
 しかし。仲間を…古くからの友人を切り捨てる勇気は……僕には無かった。

 気が付いた時には既に、僕は戦場から逃げ出していた。
 勇気が出ない……なんて情けないんだ……

 遠のく度にアンバー大佐は笑って居たようだったが……内心ボロボロであろう。片腕を失い、仲間を失い、唯一生き残る仲間は逃げる……最悪だろう。

 でも……こうする事しか出来なかった。


    ━ヴァニスティラ平原▶暗い洞窟━


 …気が付けば、洞窟の中に逃げ込んでいた。

 ……暗い。怖い……。息がキツイ。皆が出す……争いの音が、雄叫びが、破裂音が。痛い。憎い。辛い。人間は、心を殺られるとこんなにも惨めで、臆病になる生き物なんだと言う事を感じさせられる。感情のなすがまま、フラフラと。どんどん奥へと歩いていく。

 やがて、洞窟の奥に達すると……見慣れぬモニュメントのようなものがあった。
 土にまみれ、コケが生えた、古い祠、と言えばいいのか……

 どちらにせよ、弱い想いしか頭に無かった僕は……祠に縋った。

「お……ぉお願いします……どうか……皆を元に戻して下さい…………この戦争を……止めて……止めて下さい!」




……不意に、祠の横から声がする。
「……あんた、ここの人?良かったら……今の西暦教えて欲しいんだけど?」

 ……妖精……だろうか、140cmくらいの小さな子供がこちらへ問いかけてきた……

「……あんたは……誰だ……?神か……?」
「いいから、まずは西暦答えなさいよ。」
「……今は……133年だ……なぁ、聞いてくれ!俺は……」
「……133年も経つなら忘れられるわ……はぁ…………で?あんた、見るからに急ぎの願いがある顔してるけど……何かあったの?」
「……聞いてくれるのか……?」
「えぇ。なんなら雑な願いじゃなければ叶えてあげるわ。教えてくれたお礼よ。」

 ……僕はその願いを叶えてくれる少女に、今までの事を全てぶちまけた。魔族が戦争を起こして来ている事、友人がおかしくなってしまった事、自分のせいで、今も負傷者が戦い続けている事……

「……魔族?!」
「あぁ……このままじゃ仲間が皆死んじゃうんだよ!サフィーも……!アンバーさんも……!」
「……魔族……それ、ほんとの情報なの?」
 少女は思い詰めたような表情をして……僕にこう言った。

「……ねぇ、もし……さ、魔族を退ける力を与える……って言ったら、君はどうする?」
「なんだって…?退ける事が……?」
「……もし、力を手に入れたとしたら……君はどうするの?」
「そりゃぁ……今起こっている戦いを……止める為に使うさ!」

 ……少女は、何かを試すような、覚悟した表情で僕に語りかけた。

「その後は?」
 ……言葉に呼応するように、僕は続けて語った。
「……その後……?」「そう。その後。」
「……できる事なら……他の戦争も……止めていきたい……世界を平和にしたい……そう思ってる……」
「……思ってる?」

 ……想いをぶちまけ続ける僕に、引っかかった様な表情で、少女こう続けた。

「……それじゃダメね。力は渡せないわ。」
「なんで……想いはこんなに強く……誰よりも!」
「いい?想いがある、それだけじゃただの偽善者なの。」
「…………偽善…者?」

 ……愕然として……呆然とした。
 自分の想いを伝え、こうして助けを求めているのに……
 帰ってきた言葉は、偽善者。

 ……精神的に参っていた僕は……魔族てきかもしれない、問いかけをしてくる見知らぬ少女に向かい、こう放った。

「何故?!僕は……皆を助けたい……皆と過程は違うかもしれないけど……それでも結果は皆平和を臨んでいる!だからこうしてイヤイヤ出兵したんだ…なのに何故……」

 ……少女は呆れた様に僕を見下し……

「まだ分からない?!そもそもその想い、貫けてたらあんたは私と会えてないわけ!でも簡単に打ち砕かれた!だから助かりに、どうにかしに来てるんでしょ?!」
「それは…………ッ」

 ……我が戻ったのか、僕は、感情に身を任せるのを辞め……いつしか少女の言葉に耳を傾けていた……

「…………貴方は最後まで反抗できる力を持ってる。けど……色々な要因で、それがちゃんと行動に繋がってないの。だから想いだけになってる。」

「…………力は与える。けど……条件があるわ。」
「……それは……?!条件ってなんだ?!」
「……自らが戦争に出向き、自らで戦争を止めること。そして……この人世界にいる魔族を全員、魔界に返すこと。これが最低条件ね。」
「…それだけで…………」

 僕は出した言葉を切り…決心した。

「分かった、やってやるよ……必ず!平和に…人世界を平和にしてやる…………絶対だ!」


 ……少女は納得した様に、僕の方を見て……手を握った。
 その瞬間、とてつもない痛みに襲われたが……皆の事を苦しめる戦争に比べたら…大したことは無かった。

「……はい、これで大丈夫よ。存分に………暴れてらっしゃい。」

 ……思えばここが、僕の人生が急落して行った開始地点なのかもしれない。

 ただ、この時の僕は…………空を飛んでいるかのような。そんな気持ちだった。

 まるで、天使のような……そんな。
 そんな感覚で。暖かくて………………



 ここから先の記憶は、覚えていない。
 だが、その中でも……

「争いよ止まれ。」

 ……そう願って動いていたのは、確実だ。
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