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異世界素材、オークションで売れます
第3話「猫と始める、俺のスローライフ」
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――帰ってきた。
異世界で素材を拾って、トカゲの尻尾を焼いてスキルを発動し、さらに黒猫と契約して使い魔になった。
にわかに信じがたい一連の出来事だったが、祖父の倉庫をくぐり抜けて、見慣れた畳の匂いと天井の木目に包まれたとき、ようやく「ああ、本当に戻ってきたんだな」と思えた。
そして俺の肩に乗った黒猫――レオンが、当然のようにあくびをした。
「ふぁあ……ここが、お前の世界かにゃ。見た目のわりに魔力は薄いにゃ」
「普通の世界だもんな。ていうか、普通じゃないのはお前だよ」
「当然にゃ。我は高位魔族に仕えていた使い魔……まあ、今はそこの料理人のペットだが」
「言い方やめろ」
⸻
その日から、俺とレオンの奇妙な同居生活が始まった。
まず俺がやったのは、昨日拾った異世界素材を全てネットで売ること。
例の「金色の果実」は即決で10万円。紫の草は“民間療法マニア”が高額で落札。トカゲの乾燥肉に至っては、謎の研究機関から問い合わせまで来た。
合計で、三日間の異世界滞在=収益80万円超。
……これは、やれる。生活できる。
むしろ働くより稼げる。
⸻
そして――俺は、家を買った。
場所は、隣町にある空き家バンクの物件。
築五十年、平屋の古民家。田んぼに囲まれた小さな集落の外れ。
広い庭、風呂釜、薪ストーブ、そして蔵付き。
決め手はもちろん「人目が少ない」と「倉庫に異世界ゲートを設置できる」ことだった。
レオンは、到着するなり畳に体をこすりつけてゴロゴロ喉を鳴らしていた。
「ほう、ここは悪くないにゃ。静かで、空気も澄んでるにゃ。飯次第では、しばらく居てやってもいいにゃ」
「居候のくせに偉そうだな、お前……」
⸻
俺は掃除をして、布団を干して、台所を整えて、庭に生えていた謎の雑草を引き抜いた。
そして、異世界で拾ってきた“魔力を帯びたハーブ”を軽く炒めてスープにしてみる。
ほんのり香るレモンのような香気と、温まるような不思議な感覚。
レオンが鼻をくんくんさせた後、こっそり一口舐めて「……まぁまぁにゃ」と呟いた。
現実と異世界の素材をつなぐ料理――それは、俺にしかできない特権だった。
⸻
新生活、スタート。
畑に種を蒔き、近所の人に頭を下げて挨拶し、ホームセンターで小さな薪割り斧を買った。
もちろん、異世界への通行は日課になった。
素材を拾い、食べてスキル経験値を稼ぎ、帰って売る。
だがそれ以上に、何でもない“暮らし”のひとつひとつが……
たまらなく心地よかった。
「おい、レオン。今日はカレーにするか? 異世界のニンジン入りだ」
「にゃ。だったら甘口にしてほしいにゃ」
「お前、猫だよな?」
「使い魔にゃ」
異世界で素材を拾って、トカゲの尻尾を焼いてスキルを発動し、さらに黒猫と契約して使い魔になった。
にわかに信じがたい一連の出来事だったが、祖父の倉庫をくぐり抜けて、見慣れた畳の匂いと天井の木目に包まれたとき、ようやく「ああ、本当に戻ってきたんだな」と思えた。
そして俺の肩に乗った黒猫――レオンが、当然のようにあくびをした。
「ふぁあ……ここが、お前の世界かにゃ。見た目のわりに魔力は薄いにゃ」
「普通の世界だもんな。ていうか、普通じゃないのはお前だよ」
「当然にゃ。我は高位魔族に仕えていた使い魔……まあ、今はそこの料理人のペットだが」
「言い方やめろ」
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その日から、俺とレオンの奇妙な同居生活が始まった。
まず俺がやったのは、昨日拾った異世界素材を全てネットで売ること。
例の「金色の果実」は即決で10万円。紫の草は“民間療法マニア”が高額で落札。トカゲの乾燥肉に至っては、謎の研究機関から問い合わせまで来た。
合計で、三日間の異世界滞在=収益80万円超。
……これは、やれる。生活できる。
むしろ働くより稼げる。
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そして――俺は、家を買った。
場所は、隣町にある空き家バンクの物件。
築五十年、平屋の古民家。田んぼに囲まれた小さな集落の外れ。
広い庭、風呂釜、薪ストーブ、そして蔵付き。
決め手はもちろん「人目が少ない」と「倉庫に異世界ゲートを設置できる」ことだった。
レオンは、到着するなり畳に体をこすりつけてゴロゴロ喉を鳴らしていた。
「ほう、ここは悪くないにゃ。静かで、空気も澄んでるにゃ。飯次第では、しばらく居てやってもいいにゃ」
「居候のくせに偉そうだな、お前……」
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俺は掃除をして、布団を干して、台所を整えて、庭に生えていた謎の雑草を引き抜いた。
そして、異世界で拾ってきた“魔力を帯びたハーブ”を軽く炒めてスープにしてみる。
ほんのり香るレモンのような香気と、温まるような不思議な感覚。
レオンが鼻をくんくんさせた後、こっそり一口舐めて「……まぁまぁにゃ」と呟いた。
現実と異世界の素材をつなぐ料理――それは、俺にしかできない特権だった。
⸻
新生活、スタート。
畑に種を蒔き、近所の人に頭を下げて挨拶し、ホームセンターで小さな薪割り斧を買った。
もちろん、異世界への通行は日課になった。
素材を拾い、食べてスキル経験値を稼ぎ、帰って売る。
だがそれ以上に、何でもない“暮らし”のひとつひとつが……
たまらなく心地よかった。
「おい、レオン。今日はカレーにするか? 異世界のニンジン入りだ」
「にゃ。だったら甘口にしてほしいにゃ」
「お前、猫だよな?」
「使い魔にゃ」
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