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第2話 傷
しおりを挟む父となった男の人と出会ってから3年が経ち、僕が8歳の時。
僕は父【セムズ】さんに呼ばれ、普段は立ち寄る事の無い場所に手を引かれて向かった
「ここから先で起きた事に絶対に逆らってはなりません。」
僕がいた場所とは明らかに違い、白くてピカピカした場所を目前に、セムズさんにそう忠告された
いいですね?と、念をおされて3年の内にセムズさんに教わった事を思い出し、緊張に震えそうな声で返事をした
「っ承知しました」
僕の様子にセムズさんは頷くと、重圧感のある他とは明らかに違う扉の前に向かい、扉の端にいた人達に何かを告げて扉が開かれた
「失礼いたします」
頭を上げて最初に目に入ったのは僕より少しだけ小さな女の子だった
肩より少し長めの真っ黒な髪に光がさして煌き、真っ白で柔らかそうな肌に、外側から内側にかけて薄い紫色の瞳はつり目で可愛いよりも綺麗な子だと思った
それが僕の叶わぬ恋の始まりだった——
「早く早くっ
遅いわよリデル!」
「っお、お嬢様!
そんなに走られては危ないです!」
僕があの日、セムズさんに連れられた先で僕はセムズさんのお仕えする旦那様の娘であるお嬢様にお仕えする事となった
【ゼフィリア・ライネラール】様こと、お嬢様にお仕えして早一年。
最初は僕がお嬢様にお仕えするとあって、遠巻きに見られるだけだったけど今では子供らしい笑顔で走り回っている
特別何かある訳ではないけど、執事として慣れてきた僕は偶に花開くように笑うお嬢様の笑顔が好きで、少しの無茶ぐらい聞いた
「きゃっ!?」
「お嬢様!?」
楽しそうに笑って走っていたお嬢様を追いかけていた僕は、石につまずいたらしいお嬢様の下敷きとなった
だが庇い切れなかった手が擦りむいてしまった事を僕は3日後に聞いた
下敷きになった僕は打ち所が悪かったようで、頭を打ち付けて3日も目覚める事がなかったらしい
やっと仕事に復帰出来たのは目覚めた翌日だった
僕はお嬢様に怪我をさせてしまった事を知り、慌ててお嬢様に会いに行った
旦那様には目覚めた日に会い、1ヶ月給料半減の罰を受けたけど、何とか捨てられる事はなかった
だからお嬢様に捨てられるなんて、考えもしなかった
「お、お嬢様
リデルです
入っても——」
突然扉が開き、乾いた音が左から聞こえた
突然過ぎて何が何だか分からず、いつの間にか目の前に居たお嬢様に視線を向け、何も見ていないような冷めた目とぶつかった
「貴方、いらないわ」
「……えっ…?」
「私に怪我をさせたのよ?
見習いの癖に私に怪我をさせるなんて、身の程を弁えなさい」
何を、言っているのか、僕には理解出来なかった
いらないって、僕の事?
そればかりが僕の頭に浮かんで、いい天気だと、お嬢様に会えると浮かれて朝から訪ねて来たはずなのに、目の前は光すらない暗闇のように見えて、漸く僕はお嬢様に捨てられるのだと理解した
「ぃ…ゃ……おじょ…!」
どうにか捨てないでと口を動かす前に扉が音を立てて閉まった
普段は重圧感も感じない扉が、重圧感のある巨大な扉に見えて絶望した
だって、僕にはお嬢様しかいない
セムズさんは僕の父となってくれたけど、父として接する事はなかった
お嬢様だけが僕を必要として、僕が僕である事を認めてくれた
ここが僕の居場所なのだと、言ってもらえた
僕はまた失う?
気づいた時には僕は一人だった
僕と同じような子と一緒に過ごした事もあったけど、いつも僕だけを置いて逝ってしまう
だから期待なんてしないようにしていた
それでも僕をあそこから救い出して下さったお嬢様にだけは捨てられたくない
あの笑顔を見られるなら、僕がお嬢様の為に何かできるのなら、僕はお嬢様の手となり、足となる
この命すら惜しくはない
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