星海の運び屋~Star Carrier~

ろんど087

文字の大きさ
3 / 72
第1章 シスター少女を拾いました

(3)

しおりを挟む
『……!』

 瞬間、キン、と耳が鳴るのをサンタとシスターは感じた。
 小型ビークルの車体がかすかに振動する。
 レクスに目をやると、口を開いた姿勢のまま固まっている。

命中ヒット!」

 羽衣の声。

 彼女がレクスの眼前数メートルのあたりに着地するのと同時に巨獣の体がゆっくりと傾き、やがて地響きを立ててその場に倒れ込んだ。
 レクスは全身をわずかに痙攣させて失神していた。
 羽衣はそれを確認して満足そうに頷くと、数回の跳躍で小型ビークルまで戻ってきた。

「一発必中。凄いでしょ?」

 開口一番、ドヤ顔であった。

「大したもんだな。レクスの脳を狙ったのか?」
「もちろん」

 レクスの脳は握りこぶしをひと回り大きくした程度の大きさのはずである。
 長径1.5メートルの頭蓋の中から正確に位置を把握し、一発で射抜いた訳だ。

「恐ろしいもんだな、音波砲フォノン・メーザー。けど、いったい何でそんなものがおまえに装備されてるんだろう?」
「さあ、わからないけど、もしかしてあたしってば声を操るボーカロイドなのかも?」
「いや、そんな危ないボーカロイドはいないだろ……」

 たった今まで危険と対峙していた割には、呑気なボケ、ツッコミである。
 この切替の早さから想像するにふたりにとってどうやらこの程度の危険は日常茶飯事なのかも知れない。

 そこにシスターがおずおずと口を挟んだ。

「あのぉ……」

 その声に羽衣はビークルの中にちんまりと納まっているシスターに目をやった。

「ん? あなた、シスターだったの?」
「はあ、はい。そうです。……ところで、あの、フォノン・メーザーって?」
「ああ、音波を使った武器だよ。声をぎゅっと絞ってピンポイントに圧縮して送り出すのよ。今はレクスの脳を音波で高速振動させて脳震盪の状態を作ったって訳」
「声、なんですか?」
「うん。まあ、超音波だけどもね」

 声? と、理解したようなしないような顔でシスターは呟いた。

「……いずれしても」と、サンタ。
「助かったよ、羽衣」

「惚れ直したでしょ? じゃ、今夜あたり、ついに《愛玩人形ペットドール》デビュー……」
「ダメだ。そもそもベッドの中で興奮してフォノン・メーザーでも使われた日には頭がふっ飛ばされちまう」
「ええ? そこは大丈夫だよ。元栓を切っておけるから」
「おまえのそれは家庭用ガスかよ?」

 時代考証が怪しい。

「あの、すみません。もうひとつ訊いてもいいですか?」と、シスター。
「ん? 何だ?」
「《愛玩人形》って何ですか?」

 シスターのその質問に羽衣が嬉しそうに答えようと口を開いたが、それを制してサンタが答える。

「子供に話すことじゃない。おまけにおまえはシスターだろ?」
「ははあ、なるほど。十八禁R18、と云う奴ですね。つまり、えっちな♪」

 目を輝かす。そう云う話に興味がある年頃であった。

「う……、ま、まあ、そういうことだ。それよりも――」
 サンタ、そこで真顔になる。
「いろいろ聞かせてもらおうかな。おまえが誰で、何で森の中から出てきたのか、何であんな暴れん坊のお友達をつれてきたのか、って奴を……」

 シスターは黙り込む。
 そして目の前のサンタを値踏みするように上から下まで観察する。
 続いて羽衣を同じように観察する。
 それは明らかに不審者を見るような目つきであった。

 確かに『運び屋』なんて云うのはこの時代ではあまり良く思われていない職業であり、見た目は相当に胡散臭い『無法者アウトロー』でしかない。
 関わり合いになりたくない奴ら、と見られても仕方ないだろうが。

「とりあえず……」
 シスターはしばらくふたりを観察したところで口を開いた。
「遅ればせながら、助けていただきありがとうございました」

 タイミングを外した感謝の言葉。

 それはつまり、これ以上、私には関わらないでください、と云う彼女の意思表示でもあった。感謝の気持ちは表しましたので、これで終わりです、と、そんな感じである。
 それを証明するかのようにそのままシスターはビークルのドアに手をかけると、颯爽とその場を後にした。

 ……と、云いたいところだったが、彼女はビークルのドアの開け方がわからなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

錬金術師と銀髪の狂戦士

ろんど087
SF
連邦科学局を退所した若き天才科学者タイト。 「錬金術師」の異名をかれが、旅の護衛を依頼した傭兵は可愛らしい銀髪、ナイスバディの少女。 しかし彼女は「銀髪の狂戦士」の異名を持つ腕利きの傭兵……のはずなのだが……。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

花鳥見聞録

木野もくば
ファンタジー
花の妖精のルイは、メジロのモクの背中に乗って旅をしています。ルイは記憶喪失でした。自分が花の妖精だったことしか思い出せません。失くした記憶を探すため、さまざまな世界を冒険します。 記憶を取り戻して真実を知った時、ルイとモクの選ぶ道は?

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...