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第3章 事件の匂いがプンプンしてきた
(1)
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何やらひと騒動あったのは朝方だっただろうか。
階下で人の声がしたのをサンタはぼんやりと聞いたような気がするが、夕べほとんど明け方近くまで飲んでいたこともあり、すぐにもう一度寝入ってしまった。
再び目覚めたときは窓から差し込む高く昇った太陽の光が、すでに昼近い時刻であることを教えてくれていた。
眩しさに再び、瞼を閉じる。
寝返りを打つ。
……目の前に羽衣の寝顔があった!
「う、うおお! こ、こ、こら、羽衣!」
叫ぶ。一気に目が醒めた。
「あ、おはよ、サンタ」
半目で微笑する。妙に色っぽい表情である。
「何で、おれのベッドにいるんだ?」
「ん? あれ? どうしてかな? あたしってば寝相悪いし」
「寝相の問題じゃないだろ!」
「ばれたか」
「当たり前だ。ほぼ毎朝、似たようなことしてるだろうが? 手を代え品を代え、結局、いつもおれのベッドに侵入しやがって」
「だったら、もうあきらめればいいのに」
「うるさい。あきらめた途端におまえに何をされるかわからないからな」
「ちぇっ! 本当にサンタったら堅いんだから。いいじゃん、添い寝くらい」
いつものふくれっ面である。
まったく、こいつと来たら、とサンタはため息をついた。
すると。
「朝から、にぎやかですね。目が醒めてしまいました」
「え?」
背後から声がする。
恐る恐る振り返ると、サンタをはさんで羽衣と反対側に毛布を頭から被ったセロリの顔があった。
つまり三人は川の字になって寝ていたことになる。
「おはようございます」
「あら? おはよう、セロリ」
サンタ越しに呑気に答える羽衣。
だがサンタとしては。
「うわあぁ、おまえまで何でここにいるんだ? 部屋、別にとってやっただろ?」
「はあ、一人で寝るのが寂しかったので、ちょっと夜這いと云うのをやってみました」
「ちょっとやるようなもんじゃねーだろ? それにおまえがやっちゃったら逆だろ?」
「まあ、そうですね。明るくなったら少し恥ずかしくなりました」
毛布をたくし上げ、顔を隠して目だけ出して見せる。
今更、である。
「おまけに夜這いなので、張り切って裸に毛布だけで来てしまいました。どうやら酔っていたようです。すみません」
「酔っていた?」
「ええ。羽衣のプロミネンス・リカーなるものを少々」
「ばかやろ! 未成年だろ? ってか子供だろ? おまけに、ありゃ、普通の酒じゃないんだぞ! 羽衣、おまえもだ。何でこいつにあんなものを飲ませた?」
「ごめんね、サンタ。ちょっと目を離した隙に」
「おいおい」
頭を抱える。
「ともかく部屋に戻ってちゃんと服を着て来い。飯を食って出発するぞ。少し寝坊しちまったみたいだしな。羽衣、つれてってやれ」
「は~い。行こ、セロリ」
「はい。それではサンタ、お邪魔しました」
毛布を頭から被ったままベッドを下りてぺこりと頭を下げる。
それにはまともに答えずにサンタは手を振っただけ。
(いったい、どう云う教育を受けてきたんだ、あいつ)
(ってか、最初は三人同じ部屋と云ったとたんに大慌てだったくせに……)
羽衣といるだけでも疲れるのにセロリがいると疲れが四倍だな、などと、ぶつくさ云いながら、サンタはのそのそとベッドから出て服に着替え始めた。
と、今度は隣のセロリの部屋から叫び声が聞こえる。
続いてばたばたと騒々しい物音。
(今度はなんだよ? 着替えるのに何を騒いでるんだ?)
サンタ、ため息をつく。
隣の部屋のドアがけたたましく開く音。
そして。
「サンタ、サンタ、見て、見て!」
叫びながら羽衣が駆け込んで来た。右手でセロリを無理やり引っ張っているようだ。
「や、やめてください、羽衣!」
「いいからいいから。ほら、サンタ、見て。可愛いの~!」
(可愛い?)
「ダメです。ダメ、羽衣!」
セロリの必死の声が羽衣の後ろで聞こえる。
「えい!」
羽衣の掛け声。
と、同時に、羽衣――が、本来寝ていたはず――のベッドの上にセロリが投げ捨てられた。
それも一糸まとわぬ姿で。
(え? ええ?)
「きゃあ~! み、見ないで、見ないでください~!」
セロリ、パニック!
慌ててサンタが回れ右をする。
「ば、ばか、羽衣! 何してるんだ?」
「だってさ、だってさ、可愛いんだもん。サンタにも見せたくって。ほら見て。ネコ耳だよ!」
(ネコ耳?)
「それに尻尾もあるのよ♪ セロリ、可愛い!」
「きゃあ! 羽衣、抱きつかないでください!」
(ネコ耳? 尻尾?)
サンタが好奇心に負けてゆっくりと振り返る。
ベッドの上で羽衣に抱きつかれているセロリの顔の横にはネコのような大きな耳、お尻には20センチほどの長さの、ふさふさした毛に覆われた尻尾。
「な、セロリ、お、おまえ……」
セロリ、サンタが自分を見ていることに気づく。
「きゃあああ、このエロロリオヤジ!」
彼女はベッド脇のスタンドをとると、サンタに投げつけた。
階下で人の声がしたのをサンタはぼんやりと聞いたような気がするが、夕べほとんど明け方近くまで飲んでいたこともあり、すぐにもう一度寝入ってしまった。
再び目覚めたときは窓から差し込む高く昇った太陽の光が、すでに昼近い時刻であることを教えてくれていた。
眩しさに再び、瞼を閉じる。
寝返りを打つ。
……目の前に羽衣の寝顔があった!
「う、うおお! こ、こ、こら、羽衣!」
叫ぶ。一気に目が醒めた。
「あ、おはよ、サンタ」
半目で微笑する。妙に色っぽい表情である。
「何で、おれのベッドにいるんだ?」
「ん? あれ? どうしてかな? あたしってば寝相悪いし」
「寝相の問題じゃないだろ!」
「ばれたか」
「当たり前だ。ほぼ毎朝、似たようなことしてるだろうが? 手を代え品を代え、結局、いつもおれのベッドに侵入しやがって」
「だったら、もうあきらめればいいのに」
「うるさい。あきらめた途端におまえに何をされるかわからないからな」
「ちぇっ! 本当にサンタったら堅いんだから。いいじゃん、添い寝くらい」
いつものふくれっ面である。
まったく、こいつと来たら、とサンタはため息をついた。
すると。
「朝から、にぎやかですね。目が醒めてしまいました」
「え?」
背後から声がする。
恐る恐る振り返ると、サンタをはさんで羽衣と反対側に毛布を頭から被ったセロリの顔があった。
つまり三人は川の字になって寝ていたことになる。
「おはようございます」
「あら? おはよう、セロリ」
サンタ越しに呑気に答える羽衣。
だがサンタとしては。
「うわあぁ、おまえまで何でここにいるんだ? 部屋、別にとってやっただろ?」
「はあ、一人で寝るのが寂しかったので、ちょっと夜這いと云うのをやってみました」
「ちょっとやるようなもんじゃねーだろ? それにおまえがやっちゃったら逆だろ?」
「まあ、そうですね。明るくなったら少し恥ずかしくなりました」
毛布をたくし上げ、顔を隠して目だけ出して見せる。
今更、である。
「おまけに夜這いなので、張り切って裸に毛布だけで来てしまいました。どうやら酔っていたようです。すみません」
「酔っていた?」
「ええ。羽衣のプロミネンス・リカーなるものを少々」
「ばかやろ! 未成年だろ? ってか子供だろ? おまけに、ありゃ、普通の酒じゃないんだぞ! 羽衣、おまえもだ。何でこいつにあんなものを飲ませた?」
「ごめんね、サンタ。ちょっと目を離した隙に」
「おいおい」
頭を抱える。
「ともかく部屋に戻ってちゃんと服を着て来い。飯を食って出発するぞ。少し寝坊しちまったみたいだしな。羽衣、つれてってやれ」
「は~い。行こ、セロリ」
「はい。それではサンタ、お邪魔しました」
毛布を頭から被ったままベッドを下りてぺこりと頭を下げる。
それにはまともに答えずにサンタは手を振っただけ。
(いったい、どう云う教育を受けてきたんだ、あいつ)
(ってか、最初は三人同じ部屋と云ったとたんに大慌てだったくせに……)
羽衣といるだけでも疲れるのにセロリがいると疲れが四倍だな、などと、ぶつくさ云いながら、サンタはのそのそとベッドから出て服に着替え始めた。
と、今度は隣のセロリの部屋から叫び声が聞こえる。
続いてばたばたと騒々しい物音。
(今度はなんだよ? 着替えるのに何を騒いでるんだ?)
サンタ、ため息をつく。
隣の部屋のドアがけたたましく開く音。
そして。
「サンタ、サンタ、見て、見て!」
叫びながら羽衣が駆け込んで来た。右手でセロリを無理やり引っ張っているようだ。
「や、やめてください、羽衣!」
「いいからいいから。ほら、サンタ、見て。可愛いの~!」
(可愛い?)
「ダメです。ダメ、羽衣!」
セロリの必死の声が羽衣の後ろで聞こえる。
「えい!」
羽衣の掛け声。
と、同時に、羽衣――が、本来寝ていたはず――のベッドの上にセロリが投げ捨てられた。
それも一糸まとわぬ姿で。
(え? ええ?)
「きゃあ~! み、見ないで、見ないでください~!」
セロリ、パニック!
慌ててサンタが回れ右をする。
「ば、ばか、羽衣! 何してるんだ?」
「だってさ、だってさ、可愛いんだもん。サンタにも見せたくって。ほら見て。ネコ耳だよ!」
(ネコ耳?)
「それに尻尾もあるのよ♪ セロリ、可愛い!」
「きゃあ! 羽衣、抱きつかないでください!」
(ネコ耳? 尻尾?)
サンタが好奇心に負けてゆっくりと振り返る。
ベッドの上で羽衣に抱きつかれているセロリの顔の横にはネコのような大きな耳、お尻には20センチほどの長さの、ふさふさした毛に覆われた尻尾。
「な、セロリ、お、おまえ……」
セロリ、サンタが自分を見ていることに気づく。
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彼女はベッド脇のスタンドをとると、サンタに投げつけた。
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