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第10章 リステリアス宮、脱出大作戦
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馬車守のじいさんは気難しい顔をして立っていた。
とても女性に、オッパイを触らせろ、などとは云いそうもない頑固そうな風貌であったが――実はそう云うことも平気で云うお茶目なエロじじいである。
「ふむ、あんたたちがそのオッパイの仲間か?」
ラフィンのことを、とんでもない称号で呼んだ。
「ほう、そっちのツインテールもなかなかのもんじゃな。侍女に較べれば少し小ぶりではあるが形がよろしいな。おまえさんも触らせてくれるのかい?」
羽衣は胸を押さえて、アカンべをして見せた。
「なんじゃい。つまらん奴じゃの」
そして不満そうに彼女を睨みつけた後、セロリに目をやる。
「そっちの小さいのが姫様か? さすがにあと五年はしないと物足りないな」
「じいさん、相手はお姫様だぞ」
「わしにとっちゃ姫様も女に代わりはない。だが貧弱なオッパイじゃあ女でもない」
(どれだけオッパイ好きなじじいだよ! おまけに縛り首もんの台詞だぞ、それ)
「さて、とは云え、わしもリステリアス宮に忠誠を誓った立派な騎士じゃからな。どれだけ貧弱なオッパイであったとしても、姫様の願いとあらば全身全霊で応えよう」
胸を張る。
だが台詞のパーツ、パーツでギャップが甚だしい。
どうやら元は騎士だったようだが、何故こんな馬車守をやっているのかはその言動から想像がつくと云うものだ。どうせロクでもないことをして配置転換されて来たのだろう。
元騎士の馬車守じいさんは改めてセロリを見ると、うやうやしく騎士の礼をする。
どうやら元騎士と云うのは満更ハッタリではないようだ。
「セルリア姫、ご機嫌うるわしゅう。元騎士長の喜助と申します」
時代がかった名前である。
(ってか、元騎士長? すげえ偉かったんだな……)
喜助と名乗ったじいさんは、跪くとセロリの手をとりその甲にキスをする。
セロリはそれに頷くと、騎士への、こちらも正式な返礼。
そして。
「苦しゅうない、喜助。だが今そなたが申した数々の非礼、許すまじ。ここで手討ちにいたす」
セロリは淡々と語るとふところから44マグナムを取り出し、ぴたり、と喜助じいさんの額に銃口を向けた。
「誰が貧弱なオッパイですか?」
「ひ、ひええ、セルリア様、お、お許しを」
慌てて喜助じいさんは土下座して、許しを請う。バカなじじいである。
「セロリ、気持ちはわかるがそのくらいにしておけ。変態エロじじいではあるが、今は必要な人間だ」
サンタに止められてセロリは不満そうに、またあからさまな軽蔑の眼差しを喜助じいさんに向けた後、渋々銃をふところに戻した。
「まあ、致し方ありません。サンタに免じて許しましょう」
「あ、ありがたき幸せでございます、セルリア様。姫に神のご加護がありますように」
顔を上げて祈りのポーズをする喜助じいさん。
それを見下ろすセロリ。
「あなたには、悪魔の呪いを、喜助」
冷たい眼差しで、にっこりと微笑した。
喜助は恐れ入る。
(恐れ入るくらいなら最初から軽口なんか叩かなきゃいいのに。セロリじゃなくても怒るだろう)
サンタが内心で呟いた。
「それはさておき、じゃ」と、喜助。
気を取り直して、と、云うところである。
「セルリア様はあの透かしたバカ貴族、いや、ラスバルト卿に一泡吹かせたい、と、こう云うことなのじゃな?」
「いえ、そこまでは云ってませんけども。私はただお父様とお母様にお会いしたいだけです。……ってか透かしたバカ貴族って……」
さりげなく口の悪いじじいであった。
セロリが珍しくあきれ顔である。
自分があきれ顔をされることはあっても、あきれ顔するのはなかなか貴重な経験だとでも思っているような表情である。
「両殿下は現在トナーク宮にいらっしゃいます」と、ラフィンがセロリの言葉を引き継ぐ。
「ラスバルト卿が言葉巧みに両殿下を謀りトナーク宮に軟禁しているのです。そしてかれは両殿下が不在のこのリステリアス宮で悪事を働いています。我々はそれを糾弾するためにも両殿下へお目通りいただかなければなりません」
「なるほど。まあ、よくわからんが、ともかくトナークまで馬車を出して欲しい、と、こう云うことじゃな?」
「はい、おっしゃる通りです」
「しかしあそこの歩哨どもは簡単には通してくれんじゃろうな」
喜助じいさんが裏門脇の小屋を顎で示して見せた。
「ええ。でも私に考えがあるのです」
「考え? 何か、手があるのか?」
サンタが疑い深げに訊ねると、それに対してラフィンは自身に満ちた笑顔を返した。
「はい、サンタ様。つまり私の作戦はこうです。まず私があの歩哨たちの前でぱっと服を脱いで……」
「わかった。却下だ。他に手はないか?」
「サンタ様、ひどいです。最後まで私の作戦を聞かずに」
「聞く必要はない。……やはり、強行突破しかないかな?」
全員が黙り込む。妙案が出ない。
その様子を見ながら今度は喜助じいさんが、ちっちっ、と、舌を鳴らして人差し指を左右に振って見せた。
「いちいち、やることが気に食わないじじいだな」
「ふん、ほざいておれ、若造。このわしがかつて、リステリアス宮の名参謀、と呼ばれていたのを知らんな?」
「騎士長じゃなかったのかよ?」
「それもやったが参謀もやっておったのじゃ。ちなみにコック長もやっておったぞ。得意料理はオムライスじゃ。ケチャップで電話番号を書いて、侍女どもをナンパしたもんじゃよ」
「そんな話、聞きたくねーよ!」
(それにしても、たらい廻し人事か。このじじいも苦労したんだな)
「それで?」
サンタが訊ねる。喜助じいさんがドヤ顔を作った。
「ふふふ。聞きたいのか? 仕方ないのう。つまりじゃ。わしの作戦はこうじゃ。わしの得意なものがわかるか?」
「知るかよ、そんなの! 今初めて会ったばかりだろう」
「ふん。聞いて驚くことじゃ。それは太極拳じゃ」
太極拳?
「それが?」
「つまり、全員が太極拳マニアに扮して踊りながら出て行くのじゃ。いかに有能な兵士と云えども、まさか夜中にそんなことが起きるとは思っておらんじゃろう。あの手の兵士は意外と想定外と云うのに弱いもんじゃ。わしも元兵士、よくわかっておる。名付けて『ええじゃないか作戦』と云うところじゃな」
かかか、と笑う。
「……じじい、殴られたいのか? ラフィンの胸を揉んどいて、そんなお粗末な作戦しかないのか?」
「おお、そうか。すまんかった。おまえさんも揉みたかったのか? ――おい、侍女よ、この御仁もおまえのオッパイを揉みたいようじゃぞ?」
「え? サンタ様、それならそうと早く云ってくだされば……」
サンタはまたまたため息をつく。
もうため息をつく気分になるのは勘弁してほしい、と思った。
「……この中にマトモな奴はいないのか?」
そこへセロリがおずおずと手を挙げた。
「はい、サンタ。あのぉ……」
とても女性に、オッパイを触らせろ、などとは云いそうもない頑固そうな風貌であったが――実はそう云うことも平気で云うお茶目なエロじじいである。
「ふむ、あんたたちがそのオッパイの仲間か?」
ラフィンのことを、とんでもない称号で呼んだ。
「ほう、そっちのツインテールもなかなかのもんじゃな。侍女に較べれば少し小ぶりではあるが形がよろしいな。おまえさんも触らせてくれるのかい?」
羽衣は胸を押さえて、アカンべをして見せた。
「なんじゃい。つまらん奴じゃの」
そして不満そうに彼女を睨みつけた後、セロリに目をやる。
「そっちの小さいのが姫様か? さすがにあと五年はしないと物足りないな」
「じいさん、相手はお姫様だぞ」
「わしにとっちゃ姫様も女に代わりはない。だが貧弱なオッパイじゃあ女でもない」
(どれだけオッパイ好きなじじいだよ! おまけに縛り首もんの台詞だぞ、それ)
「さて、とは云え、わしもリステリアス宮に忠誠を誓った立派な騎士じゃからな。どれだけ貧弱なオッパイであったとしても、姫様の願いとあらば全身全霊で応えよう」
胸を張る。
だが台詞のパーツ、パーツでギャップが甚だしい。
どうやら元は騎士だったようだが、何故こんな馬車守をやっているのかはその言動から想像がつくと云うものだ。どうせロクでもないことをして配置転換されて来たのだろう。
元騎士の馬車守じいさんは改めてセロリを見ると、うやうやしく騎士の礼をする。
どうやら元騎士と云うのは満更ハッタリではないようだ。
「セルリア姫、ご機嫌うるわしゅう。元騎士長の喜助と申します」
時代がかった名前である。
(ってか、元騎士長? すげえ偉かったんだな……)
喜助と名乗ったじいさんは、跪くとセロリの手をとりその甲にキスをする。
セロリはそれに頷くと、騎士への、こちらも正式な返礼。
そして。
「苦しゅうない、喜助。だが今そなたが申した数々の非礼、許すまじ。ここで手討ちにいたす」
セロリは淡々と語るとふところから44マグナムを取り出し、ぴたり、と喜助じいさんの額に銃口を向けた。
「誰が貧弱なオッパイですか?」
「ひ、ひええ、セルリア様、お、お許しを」
慌てて喜助じいさんは土下座して、許しを請う。バカなじじいである。
「セロリ、気持ちはわかるがそのくらいにしておけ。変態エロじじいではあるが、今は必要な人間だ」
サンタに止められてセロリは不満そうに、またあからさまな軽蔑の眼差しを喜助じいさんに向けた後、渋々銃をふところに戻した。
「まあ、致し方ありません。サンタに免じて許しましょう」
「あ、ありがたき幸せでございます、セルリア様。姫に神のご加護がありますように」
顔を上げて祈りのポーズをする喜助じいさん。
それを見下ろすセロリ。
「あなたには、悪魔の呪いを、喜助」
冷たい眼差しで、にっこりと微笑した。
喜助は恐れ入る。
(恐れ入るくらいなら最初から軽口なんか叩かなきゃいいのに。セロリじゃなくても怒るだろう)
サンタが内心で呟いた。
「それはさておき、じゃ」と、喜助。
気を取り直して、と、云うところである。
「セルリア様はあの透かしたバカ貴族、いや、ラスバルト卿に一泡吹かせたい、と、こう云うことなのじゃな?」
「いえ、そこまでは云ってませんけども。私はただお父様とお母様にお会いしたいだけです。……ってか透かしたバカ貴族って……」
さりげなく口の悪いじじいであった。
セロリが珍しくあきれ顔である。
自分があきれ顔をされることはあっても、あきれ顔するのはなかなか貴重な経験だとでも思っているような表情である。
「両殿下は現在トナーク宮にいらっしゃいます」と、ラフィンがセロリの言葉を引き継ぐ。
「ラスバルト卿が言葉巧みに両殿下を謀りトナーク宮に軟禁しているのです。そしてかれは両殿下が不在のこのリステリアス宮で悪事を働いています。我々はそれを糾弾するためにも両殿下へお目通りいただかなければなりません」
「なるほど。まあ、よくわからんが、ともかくトナークまで馬車を出して欲しい、と、こう云うことじゃな?」
「はい、おっしゃる通りです」
「しかしあそこの歩哨どもは簡単には通してくれんじゃろうな」
喜助じいさんが裏門脇の小屋を顎で示して見せた。
「ええ。でも私に考えがあるのです」
「考え? 何か、手があるのか?」
サンタが疑い深げに訊ねると、それに対してラフィンは自身に満ちた笑顔を返した。
「はい、サンタ様。つまり私の作戦はこうです。まず私があの歩哨たちの前でぱっと服を脱いで……」
「わかった。却下だ。他に手はないか?」
「サンタ様、ひどいです。最後まで私の作戦を聞かずに」
「聞く必要はない。……やはり、強行突破しかないかな?」
全員が黙り込む。妙案が出ない。
その様子を見ながら今度は喜助じいさんが、ちっちっ、と、舌を鳴らして人差し指を左右に振って見せた。
「いちいち、やることが気に食わないじじいだな」
「ふん、ほざいておれ、若造。このわしがかつて、リステリアス宮の名参謀、と呼ばれていたのを知らんな?」
「騎士長じゃなかったのかよ?」
「それもやったが参謀もやっておったのじゃ。ちなみにコック長もやっておったぞ。得意料理はオムライスじゃ。ケチャップで電話番号を書いて、侍女どもをナンパしたもんじゃよ」
「そんな話、聞きたくねーよ!」
(それにしても、たらい廻し人事か。このじじいも苦労したんだな)
「それで?」
サンタが訊ねる。喜助じいさんがドヤ顔を作った。
「ふふふ。聞きたいのか? 仕方ないのう。つまりじゃ。わしの作戦はこうじゃ。わしの得意なものがわかるか?」
「知るかよ、そんなの! 今初めて会ったばかりだろう」
「ふん。聞いて驚くことじゃ。それは太極拳じゃ」
太極拳?
「それが?」
「つまり、全員が太極拳マニアに扮して踊りながら出て行くのじゃ。いかに有能な兵士と云えども、まさか夜中にそんなことが起きるとは思っておらんじゃろう。あの手の兵士は意外と想定外と云うのに弱いもんじゃ。わしも元兵士、よくわかっておる。名付けて『ええじゃないか作戦』と云うところじゃな」
かかか、と笑う。
「……じじい、殴られたいのか? ラフィンの胸を揉んどいて、そんなお粗末な作戦しかないのか?」
「おお、そうか。すまんかった。おまえさんも揉みたかったのか? ――おい、侍女よ、この御仁もおまえのオッパイを揉みたいようじゃぞ?」
「え? サンタ様、それならそうと早く云ってくだされば……」
サンタはまたまたため息をつく。
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