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五話 『茶番』
しおりを挟む「それで?どうやって復讐をするんですか?」
「そうだなぁ……」
私がそう聞くと、クラウス様は顎に手を当てて考える仕草をしながら……
「よく考えてみたらどう復讐するとか考えたことなかったわ」
「ええ……あんだけ復讐復讐ってバカの一つ覚えみたいに言ってたのに?」
あれだけ息巻いてたのに?この人、アホなの?バカなのか? 私が呆れながら言うと、クラウス様は不機嫌そうにこう言った。
「しょうがねーだろ。お前が復讐しないって言うからどうやったら協力してくれるのかって悩んでたんだから!つまり、お前が悪い!」
「ええ……理不尽すぎません……?」
何で私が悪いみたいに言われてんの。これ絶対私悪くないよね?しかし、彼はなんか言い訳じみたことを言い始めた。
「(……マリー様。こういうところが嫌いで婚約破棄したんじゃ……)」
そう思わずにはいられなかったし、何だか彼の言い分を聞いてると復讐する気が失せるから黙って欲しい……どうしようかなー……なんて思っていると。
「あら。楽しそうですわね。私も混ぜてくださらない?」
突然聞こえたのは、聞き覚えのある声。私が慌てて声のした方を見ると、そこにはマリー様が微笑みながら立っていたのだ。
ニコニコとした笑顔を浮かべる彼女の瞳には狂気じみた何かが垣間見えた気がした。よく元婚約者の目の前に現れることが出来たものだ。どんなメンタルしてるの?しかも、私に嘘までついて私の婚約者を取ってるのに。
「マリー様……どうしてここに?」
私が思わずそう尋ねると、彼女はニッコリと微笑んで言った。
「たまたまですわ。負け犬同士、仲良くしているところがおかしくて。つい立ち寄ってしまいましたの」
負け犬同士って……口悪いわ。レオナルド様の前では猫かぶっていたということか……
「それで?何を話していらしたんですの?もしかしてこの人に退学処分のことを聞きましたの?」
「はい……それは……事実なんですか?」
私の問いにマリー様はニッコリと微笑んで言った。
「ええ、事実ですわ」
ハッキリとそう言った。私はそのことがとても悲しかった。退学なんて絶対に嫌!あともう少しで卒業もするのに!
「ハッ!退学するのはどっちなんだろうなぁ」
クラウス様が挑発するような口調で言う。その一方で、マリー様は楽しそうに笑っていている。
「あら、負け犬が吠えてらっしゃいますわ。怖いわぁ」
煽りまくるなぁ……この人。私はもう巻き込まれるの嫌なんだけど……
「俺は、お前に復讐するからな!寧ろ、お前の方が退学処分にしてやるぜ!絶対にな!」
マリー様に負けじとクラウス様も叫ぶ。二人とも怖いわ……。
「やれるものならやってみたらどう?私は絶対に退学処分になんかなりませんわ!貴方達の負けよ」
「マリー?どうした?」
マリー様がそう言った直後。突然、第三者の声が聞こえてきた。レオナルド様の登場だ。
「レオナルド様……いいえ、何でもありませんわ」
先までの強気な口調は何処へやら。マリー様はすっかり大人しくなって、レオナルド様の隣に立って、今にも泣いてしまいそうな雰囲気で言った。
……演技うますぎない?女優か何かですか貴方。と、私が思わず感心してしまった。
「何もないわけないだろう!?何があったか言うんだ?こいつらに何をされたんだ?」
「っ……ち、違いますわ。何もされてません」
マリー様は必死に首を振るがやはり説得力がないようで、レオナルド様はこちらを睨みつけてきた。……いや、睨まれても困るんですが……
「こんな女に騙されるとかバカじゃねぇの」
クラウス様が挑発するように言うと、レオナルド様はますます鋭く睨みつけてきた。……怖いって。マジで。
しかし、クラウス様は怯むことなく言葉を続けた。
「マリーが嘘ついてるって気づかないのか?こんな嘘も気づかないとか……バカだからしょうがねぇか」
「っ……!貴様っ……」
クラウス様の言葉に怒りを抑えきれない様子のレオナルド殿下。もうこれ以上は止めた方がいいのではないか、と私が思った時。
マリー様が叫んだのだ。
「やめて!レオナルド様!私は大丈夫ですから!」
何これ。何を見せつけられてるの?……この茶番を冷え切った目で見つめる私と、怒りを必死に抑えようとするレオナルド殿下と、今にも泣き出しそうな演技をするマリー様と、そんな光景に嘲笑するクラウス様。私はため息を吐いていると、
「とりあえずさぁ。こいつ……カトリーヌ・エルノーの退学処分無しにしてくれるよな?無しにしてくれねーと怖いぞー?」
クラウス様の言葉にレオナルド殿下は忌々しそうにしつつも、
「いや、カトリーヌ・エルノーの退学処分は取り消さない」
キッパリとそう言ってレオナルド殿下はマリー様を連れて去って行ってしまった。
「……ったく。マリーもレオナルドもバカだよな。自分から破滅に向かってくなんてよ」
クラウス様がそう呟きながら私を見ながらニッコリと微笑み、こう言った。
「さ、これからが復讐の始まりだ。やるよな?だってやらねーと退学になっちまうし」
……退学は嫌だ。それ以外なら受け入れたが……
「……ええ。やりますよ」
半端ヤケクソになりつつ、私はそう答えたのだった。
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