4 / 9
四話 『贅沢な二択』
しおりを挟む
クレープを食べ終えた。クレープは2人分を前提で作られているので量が多かったけども、残すのも勿体ないし、最後まで綺麗に頂いた。
クレープを食べ終えたのを確認した後先輩は口を開いた。
「なぁ、菜乃花。言ったよな?私が菜乃花の何処を好きに……って……そういやそこは言ってなかったよなぁ……って菜乃花のを聞いて思ったよ。本当、そんな状態で私か真白を選べなんて酷な話だよな……」
先輩は申し訳なさそうな顔をする。きっと私のことを考えてくれているのだろう。
「……じゃあ、聞かせてください。その……私の何処を好きに……」
言っていて恥ずかしくなる。だって自分のことなんだもん。これが他人の恋バナだったら私は興味津々に聞くと思うけど……自分が対象になるとは思わなかったから。
「んー、そうだな……最初は真白目当ての奴だと思ってた。ほら、菜乃花が入部した時期って実際真白目当ての女子多かっただろ?だから菜乃花もそこら辺にいる女子と同じタイプなのかなぁって思ってたんだ」
……確かに、私が入った時期って雪村先輩目当ての女子が多かったからなぁ……確かに私もそういうタイプだと思われてもしょうがないかも。
「でも、違ったじゃん?菜乃花は真白のどんな鋭い言葉にも立ち向かっていたし、他の女子は退部していったのにお前だけは残ってるし。根性が据わってるというか、芯が強いというか……そんなところに惹かれていった……だと思う。最初は。面白いやつだなって感じで。まあ、その後は面白くて観察してたらいつの間にか好きになってた。というわけで、私の好きなところは全部だ。菜乃花、好きだよ」
真っ直ぐな瞳に見つめられて、ドキドキしながら聞いていたのだが、途中から照れくさくなり思わず目を逸らしてしまった。
「……照れてる?ふふっ、恋人になったらもっと激しいこともそれ以上のこともするよ?」
「は、激しいこと……ですか」
「うん。それは真白も同じ。あいつ菜乃花のこと好きだし。でも、負けないから。でも……例え、菜乃花が真白に選んだとしてもしょうがないって思うくらい私は真白のことも認めてる。真白なら菜乃花のこと任せられる。でも……もし、私を選んでくれたときは覚悟しろよ?菜乃花が嫌って言うまで愛し続けるつもりだから」
そう言うと先輩は私を抱き締めて耳元で囁く。
「だから、お願いだ。もし、一つでも可能性があるのなら。菜乃花が私のことを少しでも好きでいてくれるのならば……私を選んで欲しい。私にとって菜乃花は女神だから」
「め、女神だなんて…そんな……」
女神は過大評価すぎるだろ……と思いつつも先輩の言葉が私の胸に深く突き刺さった。どっちを選んでも。どっちを選ばなくても。先輩は私のことを重視して身を引いてくれるらしい。
「………だからよく考えろ。真白の方がいいのならそれでいい。それできっぱりと諦められるから。だけど……そうでないのなら……」
それ以上の言葉は紡ぐことはなく、私たちはそのまましばらく無言で歩いていた。
△▼△▼
家に帰り、私はベットの上で考えていた。……どうしよう……という思いが混雑している。私はいつからこんなに優柔不断だったかなぁ……いや、でも、あの二人――高嶺の花と呼ばれ、憧れの的である雪村先輩と、クールビューティーと言われ、美人である深川先輩。
どっちとも人気があり、ファンクラブもある。……何より2人とも優しい。いつも気にかけてくれていたし……あれは優しさだと思ってた。でも……本当は好意を持って接してくれていたのだろうか……?
深川先輩は私のことを芯が強いと言ってくれた。そんなこと言われたこと無かったから凄く嬉しかったけど、私は芯が強いのだろうか?言い訳ばかりして成績が落ちたのも環境のせいにした私が芯の強い人間とは到底思えない。
深川先輩が私のことを好きな理由を聞いても納得は出来なかったが、少しだけ理解できた気がする。……そして雪村先輩。雪村先輩が私のことをどこを好きになったのか。それは明日にならないと分からない。
……いっそのことドッキリならいいのに。そっちの方がまだいい。二人がそんなことをするとは思えないけど、それなら納得できるし、笑えるかもしれない。……でも、二人は真剣だ。私なんかを本気で好きになってくれている。
「……どっちも、だなんて」
そんな図々しいことを口にしたら先輩達はどんな反応をするのだろうか。……きっと軽蔑すると思う。私に冷めるか、私を嫌いになるか、どちらかだ。
側からみたら贅沢で欲張りな願いだ。でも、私はどちらも失いたくない。……ううん、違う。片方を失うくらいなら両方失ってもいいと思っているのだ。
深川先輩も雪村先輩もどっちとも……欲しいだなんて、酷い願いだ。……でも、私は……それでも…と、考えていると、眠気に襲われ瞼がゆっくりと閉じていく。
寝よう。これ以上考えても答えが出るわけでもない。それに、もう疲れた。明日のことは明日考えればいい。
こうして、私の長いようで短い1日が終わった。
クレープを食べ終えたのを確認した後先輩は口を開いた。
「なぁ、菜乃花。言ったよな?私が菜乃花の何処を好きに……って……そういやそこは言ってなかったよなぁ……って菜乃花のを聞いて思ったよ。本当、そんな状態で私か真白を選べなんて酷な話だよな……」
先輩は申し訳なさそうな顔をする。きっと私のことを考えてくれているのだろう。
「……じゃあ、聞かせてください。その……私の何処を好きに……」
言っていて恥ずかしくなる。だって自分のことなんだもん。これが他人の恋バナだったら私は興味津々に聞くと思うけど……自分が対象になるとは思わなかったから。
「んー、そうだな……最初は真白目当ての奴だと思ってた。ほら、菜乃花が入部した時期って実際真白目当ての女子多かっただろ?だから菜乃花もそこら辺にいる女子と同じタイプなのかなぁって思ってたんだ」
……確かに、私が入った時期って雪村先輩目当ての女子が多かったからなぁ……確かに私もそういうタイプだと思われてもしょうがないかも。
「でも、違ったじゃん?菜乃花は真白のどんな鋭い言葉にも立ち向かっていたし、他の女子は退部していったのにお前だけは残ってるし。根性が据わってるというか、芯が強いというか……そんなところに惹かれていった……だと思う。最初は。面白いやつだなって感じで。まあ、その後は面白くて観察してたらいつの間にか好きになってた。というわけで、私の好きなところは全部だ。菜乃花、好きだよ」
真っ直ぐな瞳に見つめられて、ドキドキしながら聞いていたのだが、途中から照れくさくなり思わず目を逸らしてしまった。
「……照れてる?ふふっ、恋人になったらもっと激しいこともそれ以上のこともするよ?」
「は、激しいこと……ですか」
「うん。それは真白も同じ。あいつ菜乃花のこと好きだし。でも、負けないから。でも……例え、菜乃花が真白に選んだとしてもしょうがないって思うくらい私は真白のことも認めてる。真白なら菜乃花のこと任せられる。でも……もし、私を選んでくれたときは覚悟しろよ?菜乃花が嫌って言うまで愛し続けるつもりだから」
そう言うと先輩は私を抱き締めて耳元で囁く。
「だから、お願いだ。もし、一つでも可能性があるのなら。菜乃花が私のことを少しでも好きでいてくれるのならば……私を選んで欲しい。私にとって菜乃花は女神だから」
「め、女神だなんて…そんな……」
女神は過大評価すぎるだろ……と思いつつも先輩の言葉が私の胸に深く突き刺さった。どっちを選んでも。どっちを選ばなくても。先輩は私のことを重視して身を引いてくれるらしい。
「………だからよく考えろ。真白の方がいいのならそれでいい。それできっぱりと諦められるから。だけど……そうでないのなら……」
それ以上の言葉は紡ぐことはなく、私たちはそのまましばらく無言で歩いていた。
△▼△▼
家に帰り、私はベットの上で考えていた。……どうしよう……という思いが混雑している。私はいつからこんなに優柔不断だったかなぁ……いや、でも、あの二人――高嶺の花と呼ばれ、憧れの的である雪村先輩と、クールビューティーと言われ、美人である深川先輩。
どっちとも人気があり、ファンクラブもある。……何より2人とも優しい。いつも気にかけてくれていたし……あれは優しさだと思ってた。でも……本当は好意を持って接してくれていたのだろうか……?
深川先輩は私のことを芯が強いと言ってくれた。そんなこと言われたこと無かったから凄く嬉しかったけど、私は芯が強いのだろうか?言い訳ばかりして成績が落ちたのも環境のせいにした私が芯の強い人間とは到底思えない。
深川先輩が私のことを好きな理由を聞いても納得は出来なかったが、少しだけ理解できた気がする。……そして雪村先輩。雪村先輩が私のことをどこを好きになったのか。それは明日にならないと分からない。
……いっそのことドッキリならいいのに。そっちの方がまだいい。二人がそんなことをするとは思えないけど、それなら納得できるし、笑えるかもしれない。……でも、二人は真剣だ。私なんかを本気で好きになってくれている。
「……どっちも、だなんて」
そんな図々しいことを口にしたら先輩達はどんな反応をするのだろうか。……きっと軽蔑すると思う。私に冷めるか、私を嫌いになるか、どちらかだ。
側からみたら贅沢で欲張りな願いだ。でも、私はどちらも失いたくない。……ううん、違う。片方を失うくらいなら両方失ってもいいと思っているのだ。
深川先輩も雪村先輩もどっちとも……欲しいだなんて、酷い願いだ。……でも、私は……それでも…と、考えていると、眠気に襲われ瞼がゆっくりと閉じていく。
寝よう。これ以上考えても答えが出るわけでもない。それに、もう疲れた。明日のことは明日考えればいい。
こうして、私の長いようで短い1日が終わった。
0
あなたにおすすめの小説
ベッドの隣は、昨日と違う人
月村 未来(つきむら みらい)
恋愛
朝目覚めたら、
隣に恋人じゃない男がいる──
そして、甘く囁いてきた夜とは、違う男になる。
こんな朝、何回目なんだろう。
瞬間でも優しくされると、
「大切にされてる」と勘違いしてしまう。
都合のいい関係だとわかっていても、
期待されると断れない。
これは、流されてしまう自分と、
ちゃんと立ち止まろうとする自分のあいだで揺れる、ひとりの女の子、みいな(25)の恋の話。
📖全年齢版恋愛小説です。
⏰毎日20:00に1話ずつ更新します。
しおり、いいね、お気に入り登録もよろしくお願いします。
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
課長と私のほのぼの婚
藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。
舘林陽一35歳。
仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。
ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。
※他サイトにも投稿。
※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。
雪の日に
藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。
親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。
大学卒業を控えた冬。
私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ――
※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる