23 / 34
三章 〜それぞれの一日〜
二十三話 『カナと父親』
しおりを挟む
普通の家庭に憧れていた。
喧嘩はしても基本的には仲良しで、
お互いに尊重し合い、何時も一緒に居て楽しくて時には優しく、時には厳しく、愛して育ててくれる家庭に憧れていた。
でも、現実は非常だ。カナの父親である……石田京介はカナのことに興味がない。カナがどんなに良い成績を取っても褒めてくれたことは一度もないし、授業参観でさえ一回も来たことがなかった。
勿論、仕事が忙しいのもあるだろう。それは仕方のないことだ……と思う。だけど一回だけ。一回だけ我儘を言おうと決めた。
それで父親を止められたらいい。断れても良かった。父親が一瞬でも戸惑ってくれたのなら。それでいい。その一瞬だけで充分だった。
しかし。
「俺は忙しい。要件ならあいつに言え」
と、一蹴された。その頃からカナは父親のことが嫌いになったし、父親も娘のことをどうとも思っていないのだなと感じた。
△▼△▼
そして今。カナと京介はお互いを睨み合い、対峙していた。
原因は言うまでもなく、父親に何も言わずに婚約破棄をしたからだ。父親は激怒している。当たり前だ。会社にとっての利益のある……俗に言う『政略結婚』を拒否したのだから。
しかし、そんなものカナにとっては知ったことではない。それにカナには好きな人がいる。
松崎透。カナの想い人であり、カナに無償の愛をくれる人だ。しかし、透はカナのことを恋愛対象として見ていないし、妹のようにしか扱わない。それでも構わないと思った。
でも人間というのは欲が出てくるもので、もっと自分に愛情を注いで欲しい、『妹』なんかじゃなく『女』として見て欲しいと思うようになった。
そしてその思いは次第にエスカレートしていき、婚約者がいるのにも関わらず、土壇場で婚約破棄をして透と結婚しようとするまでに至った。
しかし、それは透にとって迷惑な行為であることも知っていたし、カナと春人だけが得する結果になってしまうことも分かっていた。
でも、止められなかった。もう我慢の限界に達していたのだ。それに透なら許してくれるだろうと甘えてしまっていた部分もあった。
そんな時に透に「結婚する気はない」と目の前ではっきりと言われてしまった。カナはその言葉を受け止めきれなかった上に今は透はそこにおらず、父親が目の前にいる始末だ。
不機嫌を隠そうともしない父親にカナはいっそのこと……!という気持ちになった。それが故にカナは口を開く。
「私は絶対にもう鈴木春人は結婚なんてしない。それは向こうも同じ。私達は同意の上よ。てゆうか、あんな会場で言ったのだもの。もう覆せないわ。例え、お父様達が何かを言ったとしても」
実際そうだ。あんなに沢山の人達の前で婚約破棄をしたのに今更撤回なんて出来るはずがない。しかも、本人達の同意の元な上、既に会場には沢山の証人もいるのだ。
それを理解したのか、父親は黙り込む。
「…………」
「…………」
お互いが黙り合い、気まずい空気が流れる中、沈黙を破ったのは父親の方だった。
「透君の気持ちはどうなる?透くんは成宮茜という女性を愛しているんだ。お前がどんなことを言っても、透くんの意思が変わることはないと思うぞ」
淡々と無表情のままそう告げた。無慈悲で尚且つ、無表情の父親の顔を見た瞬間、泣きたくなったし、怒りたくなった。
でも、カナはそれを飲み込んだ。今は父親の方が正しいと思っているし、自分が間違っていることも分かっているからだ。
「でも……俺はそういうのは嫌いじゃない」
「……え?」
父親の言葉の意味が理解出来なかった。何を、と言う前に父親は口を開く。
「略奪…というのはこの世にごまんとあるものだ」
「………略奪」
「つまり、成宮茜から透くんを奪えばいい。それだけの話だろう」
父親らしからぬ言葉にカナは理解が遅れた。だってカナの知っている父親と全く違うのだから。
いつも厳しくて威厳があって、人の意見なんて聞かないし、人のことを認めようともせずに娘を道具扱いし、挙句の果てには政略結婚をさせようとしていた人がこんなことを言うとは思わなかったのだ。
「……あの二人は応接室にいる。……行くか?」
カナが驚いている間に父親はそう言いながら立ち上がる。その言葉にカナは思わず頷いてしまった。
△▼△▼
――そして今に至る。
目の前では茜とカナが意気投合し、透はため息を吐きながら二人を見つめていた。
「うわ……でも、それは透くんが悪いよ。そんなことしたら勘違いするって」
「ですよね?無意識って怖いなぁ……」
「ほんとにねぇ……あ、私のときもさ……」
二人がどんどんヒットアップしていく会話に、透は一人置いてけぼりを喰らい、ポカーンとするしかない。ただ、2人はそんな透の様子に気付くことなく、透の話をし続ける。
「つまり、こういうことだ。話は変な展開に行っている気がするが、まあいいか……」
「まぁ、いいかじゃありませんよ!?俺には浮気だなんて不誠実な真似は……!」
「浮気……ってさ、公認されてなかったら最低だと思うけど公認されてたら良くない?」
「私なら絶対に嫌だけどなぁ。浮気なんて……でも……不思議よねぇ。カナちゃんなら浮気しても許せちゃうかも」
「とゆうことは、だ。二人は浮気を公認するってこと!?じ、冗談でしょ!?」
今までの二人は恋のライバル……カナが一方的に敵対視していたが、二人がこんな短時間で仲良くなるなんて想定外も想定外すぎて透は驚きを隠せない。
「うん。私は別にいい。カナちゃんなら、ね?短い時間だけど、透くんを思ってることは伝わったし?それに透くんのこと、好きみたいだし」
「私も!勝手にライバル意識してたけど茜先生と気が合ったしー、お兄ちゃんのこと本気で好きになったのも伝わってきたし。私、茜先生なら浮気されても許すよ」
淡々と、そう言いながらジリジリと透に近づく茜とカナ。その目は獲物を狙う肉食獣のように爛々としている。
「いやいや、待ってくれ!そ、そんなこと言ったら京介さんが……!」
「俺は別に構わん。会社も別の方法を探せば良いだけだしな」
「京介さん!娘がこんな風なのに興味無しは嘘ですよね!?俺は知ってますよ!カナのこと興味なさそうなフリをしているだけで本当はめっちゃ愛していることぐらい!」
「愛してない。仕事が忙しいんだ。今日はもう寝る。カナと成宮さんと透くんもそろそろ寝ろ」
照れ隠し、なのか、本心なのか分からないような言葉を残して、応接室から出ていく京介。
そして、残された三人は――。
「じゃ、茜先生に透さん!私の部屋に行きましょう!今日は本当に疲れてるんで手を出すのは無しの方向で」
「了解ー」
そんな不穏な会話に透はこれからの生活に不安を抱くのであった。
喧嘩はしても基本的には仲良しで、
お互いに尊重し合い、何時も一緒に居て楽しくて時には優しく、時には厳しく、愛して育ててくれる家庭に憧れていた。
でも、現実は非常だ。カナの父親である……石田京介はカナのことに興味がない。カナがどんなに良い成績を取っても褒めてくれたことは一度もないし、授業参観でさえ一回も来たことがなかった。
勿論、仕事が忙しいのもあるだろう。それは仕方のないことだ……と思う。だけど一回だけ。一回だけ我儘を言おうと決めた。
それで父親を止められたらいい。断れても良かった。父親が一瞬でも戸惑ってくれたのなら。それでいい。その一瞬だけで充分だった。
しかし。
「俺は忙しい。要件ならあいつに言え」
と、一蹴された。その頃からカナは父親のことが嫌いになったし、父親も娘のことをどうとも思っていないのだなと感じた。
△▼△▼
そして今。カナと京介はお互いを睨み合い、対峙していた。
原因は言うまでもなく、父親に何も言わずに婚約破棄をしたからだ。父親は激怒している。当たり前だ。会社にとっての利益のある……俗に言う『政略結婚』を拒否したのだから。
しかし、そんなものカナにとっては知ったことではない。それにカナには好きな人がいる。
松崎透。カナの想い人であり、カナに無償の愛をくれる人だ。しかし、透はカナのことを恋愛対象として見ていないし、妹のようにしか扱わない。それでも構わないと思った。
でも人間というのは欲が出てくるもので、もっと自分に愛情を注いで欲しい、『妹』なんかじゃなく『女』として見て欲しいと思うようになった。
そしてその思いは次第にエスカレートしていき、婚約者がいるのにも関わらず、土壇場で婚約破棄をして透と結婚しようとするまでに至った。
しかし、それは透にとって迷惑な行為であることも知っていたし、カナと春人だけが得する結果になってしまうことも分かっていた。
でも、止められなかった。もう我慢の限界に達していたのだ。それに透なら許してくれるだろうと甘えてしまっていた部分もあった。
そんな時に透に「結婚する気はない」と目の前ではっきりと言われてしまった。カナはその言葉を受け止めきれなかった上に今は透はそこにおらず、父親が目の前にいる始末だ。
不機嫌を隠そうともしない父親にカナはいっそのこと……!という気持ちになった。それが故にカナは口を開く。
「私は絶対にもう鈴木春人は結婚なんてしない。それは向こうも同じ。私達は同意の上よ。てゆうか、あんな会場で言ったのだもの。もう覆せないわ。例え、お父様達が何かを言ったとしても」
実際そうだ。あんなに沢山の人達の前で婚約破棄をしたのに今更撤回なんて出来るはずがない。しかも、本人達の同意の元な上、既に会場には沢山の証人もいるのだ。
それを理解したのか、父親は黙り込む。
「…………」
「…………」
お互いが黙り合い、気まずい空気が流れる中、沈黙を破ったのは父親の方だった。
「透君の気持ちはどうなる?透くんは成宮茜という女性を愛しているんだ。お前がどんなことを言っても、透くんの意思が変わることはないと思うぞ」
淡々と無表情のままそう告げた。無慈悲で尚且つ、無表情の父親の顔を見た瞬間、泣きたくなったし、怒りたくなった。
でも、カナはそれを飲み込んだ。今は父親の方が正しいと思っているし、自分が間違っていることも分かっているからだ。
「でも……俺はそういうのは嫌いじゃない」
「……え?」
父親の言葉の意味が理解出来なかった。何を、と言う前に父親は口を開く。
「略奪…というのはこの世にごまんとあるものだ」
「………略奪」
「つまり、成宮茜から透くんを奪えばいい。それだけの話だろう」
父親らしからぬ言葉にカナは理解が遅れた。だってカナの知っている父親と全く違うのだから。
いつも厳しくて威厳があって、人の意見なんて聞かないし、人のことを認めようともせずに娘を道具扱いし、挙句の果てには政略結婚をさせようとしていた人がこんなことを言うとは思わなかったのだ。
「……あの二人は応接室にいる。……行くか?」
カナが驚いている間に父親はそう言いながら立ち上がる。その言葉にカナは思わず頷いてしまった。
△▼△▼
――そして今に至る。
目の前では茜とカナが意気投合し、透はため息を吐きながら二人を見つめていた。
「うわ……でも、それは透くんが悪いよ。そんなことしたら勘違いするって」
「ですよね?無意識って怖いなぁ……」
「ほんとにねぇ……あ、私のときもさ……」
二人がどんどんヒットアップしていく会話に、透は一人置いてけぼりを喰らい、ポカーンとするしかない。ただ、2人はそんな透の様子に気付くことなく、透の話をし続ける。
「つまり、こういうことだ。話は変な展開に行っている気がするが、まあいいか……」
「まぁ、いいかじゃありませんよ!?俺には浮気だなんて不誠実な真似は……!」
「浮気……ってさ、公認されてなかったら最低だと思うけど公認されてたら良くない?」
「私なら絶対に嫌だけどなぁ。浮気なんて……でも……不思議よねぇ。カナちゃんなら浮気しても許せちゃうかも」
「とゆうことは、だ。二人は浮気を公認するってこと!?じ、冗談でしょ!?」
今までの二人は恋のライバル……カナが一方的に敵対視していたが、二人がこんな短時間で仲良くなるなんて想定外も想定外すぎて透は驚きを隠せない。
「うん。私は別にいい。カナちゃんなら、ね?短い時間だけど、透くんを思ってることは伝わったし?それに透くんのこと、好きみたいだし」
「私も!勝手にライバル意識してたけど茜先生と気が合ったしー、お兄ちゃんのこと本気で好きになったのも伝わってきたし。私、茜先生なら浮気されても許すよ」
淡々と、そう言いながらジリジリと透に近づく茜とカナ。その目は獲物を狙う肉食獣のように爛々としている。
「いやいや、待ってくれ!そ、そんなこと言ったら京介さんが……!」
「俺は別に構わん。会社も別の方法を探せば良いだけだしな」
「京介さん!娘がこんな風なのに興味無しは嘘ですよね!?俺は知ってますよ!カナのこと興味なさそうなフリをしているだけで本当はめっちゃ愛していることぐらい!」
「愛してない。仕事が忙しいんだ。今日はもう寝る。カナと成宮さんと透くんもそろそろ寝ろ」
照れ隠し、なのか、本心なのか分からないような言葉を残して、応接室から出ていく京介。
そして、残された三人は――。
「じゃ、茜先生に透さん!私の部屋に行きましょう!今日は本当に疲れてるんで手を出すのは無しの方向で」
「了解ー」
そんな不穏な会話に透はこれからの生活に不安を抱くのであった。
1
あなたにおすすめの小説
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました
あい
恋愛
両親を失ったあの日、
赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。
それが、アリア。
世間からは「若い母」と呼ばれながらも、
彼女は否定しなかった。
十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。
恋も未来も、すべて後回し。
けれど弟は成長し、ついに巣立つ。
「今度は、自分の人生を生きて」
その一言が、
止まっていた時間を動かした。
役目を終えた夜。
アリアは初めて、自分のために扉を開く。
向かった先は、婚姻仲介所。
愛を求めたわけではない。
ただ、このまま立ち止まりたくなかった。
――けれどその名前は、
結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。
これは、
十六年“母”だった女性が、
もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
揺れぬ王と、その隣で均衡を保つ妃
ふわふわ
恋愛
婚約破棄の断罪の場で、すべては始まった。
王太子は感情に流され、公爵令嬢との婚約を解消する。
だが、その決断は王家と貴族社会の均衡を揺るがし、国そのものを危うくする一手だった。
――それでも彼女は、声を荒らげない。
問いただすのはただ一つ。
「そのご婚約は、国家にとって正当なものですか?」
制度、資格、責任。
恋ではなく“国家の構造”を示した瞬間、王太子は初めて己の立場を知る。
やがて選ばれるのは、感情ではなく均衡。
衝動の王子は、嵐を起こさぬ王へと変わっていく。
そして彼の隣には、常に彼女が立つ。
派手な革命も、劇的な勝利もない。
あるのは、小さな揺れを整え続ける日々。
遠雷を読み、火種を消し、疑念に居場所を与え、
声なき拍手を聞き取る。
これは――
嵐を起こさなかった王と、
その隣で国家の均衡を保ち続けた妃の物語。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる