蒼の魔法士

仕神けいた

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蒼の魔法士-本編-

Seg 23 在りし絆、綴りて証 -02-

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「門の中で何があったかはかないが、ここまでひどいのは初めてだ」

 言いながら、かれふるえる体に何とか力を入れてぬぐつづける。強くにぎりしめた手は、ユウのほおさわる感覚がほとんど感じられなかった。

井上坂いのうえさかさん……大丈夫だいじょうぶです」
 ゆっくり、ささやくように言葉がつむがれた。
 ユウは、固くにぎってこわしてしまいそうな井上坂いのうえさかの手に、そっと自身の手をえる。

「ボクは、大丈夫だいじょうぶなんです」

 赤く染まる小さな子供は、薄菫色うすすみれいろひとみをまっすぐに向ける。その先には、心配と不安で表情が定まらないでいる井上坂いのうえさか

「……お前のどこをどう見て大丈夫だいじょうぶだなんて思えばいいんだよ……」

「え、えっと……」

 今にも泣いてしまいそうな井上坂いのうえさかに、ユウは立ち上がってボロボロの服をまくって見せる。

「ほら、こことか……ここも。血がついてるけどケガしてないですよっ」
 うでや足を指さして、無事であることをアピールをしていく。しかし井上坂いのうえさかはとうとううずくまってしまった。

「あの……心配かけてごめんなさい……! ホントにケガはもうしてないですから……あ、服! ボクのせいでよごしてすみません!」

「……服なんて、いくらでも洗えば済む」

 井上坂いのうえさかひざかかんだまま、ねたように言う。
「けど、君は――」
 言いかけて口をつぐむ。
 ユウの身体は、確かに全身が血にまみれていた。それはすべてユウの血なのか。

 井上坂いのうえさかは、袖口そでぐちと口元をうでかくしたまま、じっとユウを見る。
 字綴じつづりの力を見せていないのだから、必要ないことなのだろうが、それでもかれは口の動きを見せず、オロオロするユウに問いかけた。
「”本当に大丈夫だいじょうぶ?”」
「はい! 今はもう大丈夫だいじょうぶです!」
 ユウはしっかりと答えた。

「”ケガはどうだったの?”」
「ええと、体中あちこち切られたりぶつけたりしたんだけど、これくらいならすぐに治るから平気です」

「……”敬語はいやだ”」
 ユウの口調に不満を持ったのか、井上坂いのうえさかはポソリと言う。だが、ユウには効いたようだ。
「うん、わかった。敬語をやめるよ」

「”ケガ、もう全部治った?”」
大丈夫だいじょうぶ、全部治ったよ」
 ユウはケロリとした表情で答えた。

 なるほど、と井上坂いのうえさかはユウの手足を見る。先ほど見たときには無数にあったかれたあとがなくなっていた。

 井上坂いのうえさかは、表情を見せないように、進む道を向いて立ち上がる。
 その袖口そでぐちからは、花びらがはらはらとこぼれ落ちていた。

 ユウがそれに気付いたかどうか。

「……ケガがないならいい。字綴じつづりを続ける」
「わかった。で、何をすればいい?」
「言織は――あるな」
 そう言って、血でかすれた言織がユウのズボンにはさまっているのを確認かくにんする。
「え? あ、こんなところに……くしたかと思ってた」
「言織は常に持ち主のすぐそばにある。字綴じつづりは歩きながらするのが習わしだが――」
 井上坂いのうえさかは、ケガがないと言った血まみれの子供を見た。

「ボクなら大丈夫だいじょうぶだよ、歩けるし」
 先だって歩き出そうとするユウ。
「……歩かなくていい」
 井上坂いのうえさかは、自分の上着をユウに着せ、頭をやさしくでた。血のみついたかみがカサリとれる。
おれが歩けば問題ない。だから、無理するな」
 再び浮遊感ふゆうかん見舞みまわれたユウは、あわてて井上坂いのうえさかを止める。
「うわわっ! ま、待って待って! ボク歩けるから『お姫様だっこ コレ 』はやめてくれっ!」

「……そうか」
 心なしかんでいるようだ。
 渋々しぶしぶとユウを下ろし、今度は手をギュッとにぎりしめた。
「転ばないよう注意しろ」

「☆※■&◎%!」
 初めて声にならない声を上げたユウ。言うまでもなく、顔はであった。
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