王子に婚約破棄されたのでぶん殴りました

中七七三

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2.踊れ!物語はそれでいい!

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 パーティの主役であり、私の婚約者でもある王子がすっと歩を進めてくる。
 その顔には氷のような笑みが浮かんでいると思ったのは、これから起こることを知っているからだろうか?

 王子は私との間合いを詰め、すっと手を挙げ私を指差した。
 唇が動く。

「バルベーラ公爵令嬢との婚約を破棄する。私は――」

 その口が次の言葉を吐く前に、私の右ストレートが王子のテンプルを貫いた。
 頭蓋が軋む感触が私の嫋やかな指に伝わり、思わずイキそうになるほどの快感が脳天を貫いた。

「天誅であるっ!」

 私は宣言した。
 卒業パーティに参加していた学友というかモブ的キャラがざわめく。
 しかし、これは正当な怒りの拳であった。

「そもそも、正当な裁判も行わず、教会の審議も行わず、婚約を解消するのは、神との契約を踏みにじる行為であり、不遜な不信心者である!」

 と、中世ヨーロッパ貴族社会の正論をぶちかましても、こいつらの頭の中にはそのような考証に裏打ちされた意識なるものが存在しない。いうなればプログラムされた哲学的ゾンビであり、文芸がゲイムに屈し、低俗に成り果てた証左としての滓《かす》のようなものであった。

「あははは! さあ、踊れ、踊るのだ! Dancing in the 皇国貴族学園!」

我々は、気絶し泡を吹いている王子を中心に置き、手をつなぎ輪を作り、マイムマイムを踊ったのであった。
そこには、婚約破棄など存在せぬかのように、平和な世界がやってきたのだった。

―完―



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みんなの感想(2件)

柚穏
2019.08.22 柚穏

ざまぁ…ざまぁよりなんかホラーな感じマイムマイム踊るとか怖い!(爆笑)

解除
huck
2019.06.03 huck

どストレートなざまぁですねっ!

解除

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