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6.美しい女教師の裏の顔
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「カタコンペって? 地下墓地……」
「ふふ、よく知っているわね。そういう意味ね」
秩父賀さんが涼しげな眼をスッと細めて言った。
「趣味悪いわよね―― 御楯君」
先生が言った。
「地下墓地の女帝―― カッコいいじゃない。薙子様」
「本当に大学時代から悪趣味よね」
「大学、同じなんですか?」
「「そうよ」」
「すごいですね」
百鬼薙子先生は東大出だ。
高校は今ボクが通っている高校出身。
今は母校で数学を教えている。
「で、この悪趣味な場所は、こうやって配信されてるのよ」
百鬼先生はボクにスマホを見せた。さっきからスマホを弄っていたのはこのせいだったんだ。
「ほら、こうやってネット配信しているの」
この戦いは、何か特別アプリでこの戦いがみられるようだった。
今スマホの画面の中でふたりの選手が顔をつき合わせていた。
実際に闘技場を見ても、タイムラグは数秒という感じだ。
『さぁ、この戦いどうなるか? コアな格闘技ファンなら誰でも知っている真熊香。現役のオリンピックA級強化選手。今年の七十八キロ級世界選手権覇者。今回は八十三キロのベスト体重で挑む。スピードはそのままに、パワーアップだ! 若さも勢いも抜群だ!』
アナウンスは続ける。
『そして、伝説! 女子アマレス五十七キロ級現役時代は「類人猿最強女子」と称せられた清水直子。表の女子総合格闘技でも連勝街道を驀進中だ! とにかく強すぎて表では相手がいないのが悩みの種。体重は七十キロと増量に成功! パワーは現役時代から倍加してるぞ』
さすがに、オリンピック強化選手だという真熊選手はよく知らない。
けど、清水直子は知っていた。レスリング時代は無敗のまま引退したんじゃなかったか。
そのまま総合格闘の選手になっていたのは知らなかった。
それにしても――
先生はなんでこんな場所に……
それに女帝って……
このネット配信だって普通じゃ絶対にみれないのだろうし。
「ふふ、なんか御楯君が分けの分からないって顔しているわね。薙子になんの説明もされていないの?」
「え? はい」
秩父賀さんにボクは答えた。
本当に意味が分からない。
秩父賀さんは百鬼先生に目配せをする。
先生は「仕方ないわね」という感じで頷いた。
「薙子はここのチャンピオンなの。カタコンペ――地下女子格闘場――の、無敗のチャンピオン。美しい女教師の裏の顔よ」
「え? そんな……」
「そうよ。ま、無敗もいまのところってことだけど」
先生は秩父賀さんの言葉を首肯する。
「どうかしかしら? これでも、御楯君の気持ちは変わらない?」
ゴングの音が鳴った。
その残響の中で、先生の声がボクの耳に響いた。
「ふふ、よく知っているわね。そういう意味ね」
秩父賀さんが涼しげな眼をスッと細めて言った。
「趣味悪いわよね―― 御楯君」
先生が言った。
「地下墓地の女帝―― カッコいいじゃない。薙子様」
「本当に大学時代から悪趣味よね」
「大学、同じなんですか?」
「「そうよ」」
「すごいですね」
百鬼薙子先生は東大出だ。
高校は今ボクが通っている高校出身。
今は母校で数学を教えている。
「で、この悪趣味な場所は、こうやって配信されてるのよ」
百鬼先生はボクにスマホを見せた。さっきからスマホを弄っていたのはこのせいだったんだ。
「ほら、こうやってネット配信しているの」
この戦いは、何か特別アプリでこの戦いがみられるようだった。
今スマホの画面の中でふたりの選手が顔をつき合わせていた。
実際に闘技場を見ても、タイムラグは数秒という感じだ。
『さぁ、この戦いどうなるか? コアな格闘技ファンなら誰でも知っている真熊香。現役のオリンピックA級強化選手。今年の七十八キロ級世界選手権覇者。今回は八十三キロのベスト体重で挑む。スピードはそのままに、パワーアップだ! 若さも勢いも抜群だ!』
アナウンスは続ける。
『そして、伝説! 女子アマレス五十七キロ級現役時代は「類人猿最強女子」と称せられた清水直子。表の女子総合格闘技でも連勝街道を驀進中だ! とにかく強すぎて表では相手がいないのが悩みの種。体重は七十キロと増量に成功! パワーは現役時代から倍加してるぞ』
さすがに、オリンピック強化選手だという真熊選手はよく知らない。
けど、清水直子は知っていた。レスリング時代は無敗のまま引退したんじゃなかったか。
そのまま総合格闘の選手になっていたのは知らなかった。
それにしても――
先生はなんでこんな場所に……
それに女帝って……
このネット配信だって普通じゃ絶対にみれないのだろうし。
「ふふ、なんか御楯君が分けの分からないって顔しているわね。薙子になんの説明もされていないの?」
「え? はい」
秩父賀さんにボクは答えた。
本当に意味が分からない。
秩父賀さんは百鬼先生に目配せをする。
先生は「仕方ないわね」という感じで頷いた。
「薙子はここのチャンピオンなの。カタコンペ――地下女子格闘場――の、無敗のチャンピオン。美しい女教師の裏の顔よ」
「え? そんな……」
「そうよ。ま、無敗もいまのところってことだけど」
先生は秩父賀さんの言葉を首肯する。
「どうかしかしら? これでも、御楯君の気持ちは変わらない?」
ゴングの音が鳴った。
その残響の中で、先生の声がボクの耳に響いた。
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