ボクが女体化したのは、初恋の最強女教師を倒して恋人にしたいから

中七七三

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9.先生の仕合

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 結局のところ、その日は一試合だけを見てボクと先生はカタコンペを後にした。
 ボクの胸のうちには、まだ明確に言葉に出来ないいろいろな思いがあった。
 どうにも整理しきれない膨大で複雑な情報が一気に流れ込んできた感じだった――
 
 だけど――
 それでも――
 ボクが今も断言できるのは、先生を好きだということ。
 ボクはそれを諦める気はなかった。

 自宅の最寄り駅は同じだった。
 そこで、ボクと先生はそれぞれ家路に就く。

「じゃあ、明日学校で」
「はい、先生」

 型どおりというか、先生と生徒という距離を保ったままだった。
 そう――
 その日はそんな日であった。

        ◇◇◇◇◇◇
 
 特になにかが起きる――
 日曜日以上のことがおきることもなく、日常が積み重なる。
 
「あ、先生からメールだ」

 夕食後、自部屋でボーっとしていたボク。
 ささやかな非日常がスマホの中にやってきた。
 なぜか姿勢をただし、椅子に座ってボクはメールを読み始めた。

「え? 仕合、こんどの土曜日に…… 先生がカタコンペで」

 千葉海浜球場の地下闘技場「カタコンペ」で自分、百鬼薙子なぎり なぎこが仕合をする。
 それを伝える簡単な文章と、試合をネットで見れるアプリのダウンロードURLが貼ってあった。
 ダウンロードパスワードも一緒だった。

『無料です。ただし賭けはできません。しても駄目です。ただ試合を見ることはできます』
 
 ――と、ある。

 ボクは非日常の門をくぐるかもしれない何かを手に入れた。

        ◇◇◇◇◇◇

 土曜日――
 先生の試合の日が来た。
 アプリはすでに何回かインストールされ、何回か起動をしてみた。
 どうやら平日には試合は行われない。
 試合は土日に集中して行われるようだった。

 アプリを起動すると、百鬼先生の仕合前情報が掲載されている。
 先生の対戦相手は、ロシア人だった。
 外国人だ。

「結構、規模の大きいイベントなのかな?」

 そんなことをボクは思った。
 相手選手のことは気になったが、名前を知っているような有名な格闘家ではなかった。
 
「サンボか…… ロシアの柔道みたいな格闘技だったかな」

 相手はサンボの選手。
 そして、サンボについてボクが知っているのは、その程度のことだった。
 ボクはサンボについてネットで調べた。
 柔道とロシアの民族格闘技が融合して生まれたといわれていること。
 関節技のバリエーションが多いこと。柔道では禁止されている関節技もサンボでは問題なく採用されている。
 軍隊に採用される実戦的な格闘技であること。

 そんなことをボクは知った。
 いや、知っていたけども忘れていたことを再確認しただけかもしれない。
 
 先生の相手はそんなサンボの教官――
 軍隊でサンボを指導する特殊戦のエキスパートだった。

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