ボクが女体化したのは、初恋の最強女教師を倒して恋人にしたいから

中七七三

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36.キスの続きは殺し合い

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「テロメアの分裂はみられない。おそらくは問題ないであろうが……」

 従姉の晶姉は、いつもとは違う自信なさげな調子でで言った。
 テロメアとは染色体の末端にあり、寿命を決定付ける遺伝子だ。
 加齢にともない短くなる性質をもっているというか、この遺伝子が加齢そのものを具現化しているのかもしれない。

 傷の治療はやめるために、新陳代謝の加速を遺伝子的に実施。
 その影響がテロメア―つまり寿命に―でないかどうかが心配だった用だ。
 いまのところ、明らかな異常は検知できていない。

「身体も治ったし、問題なければ、それでいいよ」
「なあ、乱暴な結論は度し難いのであるが、この際は許容せざるを得ないか」

 というわけで、第四試合で負ったボクの傷はほぼ綺麗になった。
 なんとも科学というのは凄いものだと思うしかない。

        ◇◇◇◇◇◇

 科学は凄いが、一般に知られていない科学の結果は奇異の目でみられるのであった。
 学校に行ったら、ざわめきが更に大きくなった。
 もう、「ざわざわざわ」と福本フォントが教室にびっしり書き込まれるような感じだ。

 土日前には、包帯グルグル巻きの、ボクが週を空けたら綺麗な身体になっている。
 これは、どうみても異常事態であり、まだ暑いのに学生服を身につけていることより、クラスをざわつかせる原因となった。
 
 まあ、クラスの皆は遠巻きに色々言うだけで、特に詮索することもかく、ボクは「学校生活」という日常に個人的には埋没していったのである。

 が――
  
 放課後だった。
 百鬼先生に呼び出された。
 地下闘技場カタコンペの女帝・チャンピオンの女教師。
 そして、ボクの憧れの先生。いや、憧れだけではなく、絶対に恋人にしたいと思っている先生だった。

        ◇◇◇◇◇◇

 進路指導室の空気は生ぬるく、教室よりもムッとしたものだった。
 空調が効きはじめ、徐々に冷たい空気が流れてくる。

「随分と傷の直りが早いのね――」
「ええ…… これは」
「知ってるわ。美礼に聞いたしね」

 先生は「ふ~」とため息をつくような感じで言った。

「どうも、アナタの従姉と組んで、選手の傷の治療サイクルを早めようとしているみたいなのよね――」

「そうなんですか」

 従姉の晶姉はなんとなく、そんなことに乗り気じゃないような感じがしていた。
 十全ではない技術を面に出すのを躊躇うところのかる完ぺき主義者なのだ。

「選手の身体を早く治せるなら、もっと興行感覚を短くできる――と、美礼は考えているんでしょうね…… まったく、やる方のことも考えて欲しいわ」

「でも…… 仕合がいっぱいできれば、それだけボクが先生と戦えるチャンスは増えますよね」

 ボクはじっと先生を見つめて言った。
 先生は相変わらず美麗だった。
 教師の姿――  
 スーツ姿の先生も素敵だった。

「御楯君もあとひとつ勝つと、正戦士になるのね」

「そういうことらしいです」

「そう――」

 先生は藍色がかった瞳をジッとボクにむける。
 その心の奥底ではなにを考えているのか、ボクには一切分らない。

「同じ場所、同じステージに立ったといっても、私は最前列。アナタは最後尾―― 果たしていつ戦えるのかしら?」

「最短距離を走ります」

「ふふ、そう……」

 先生はすっと鋭さを感じさせる笑みを浮かべた。

「覚悟は―― いちおうできているのね」
「それはあります。絶対に先生を倒して、ボクを認めてもらって、恋人になってもらいます!」
「期待しているわ」
「で、結婚してもらいます!」
「それは早すぎ!」

 先生はすっと椅子を立った。
 そして、対面のボクに向かって優雅に歩を進める。
 
 そして――
 
 すっとボクの頬に唇を伏せさせてきた。
 暖かい唇の感触――
 「チュ」と湿った音が響く。

「せ、先生――」

「もし、わたしと戦うことになったら、続きは殺し合いになるかもしれないわ」

「――」

「キスなんかよりもっと刺激的かもしれないわよ」

 先生は、美しい笑みを浮かべ、刃のような言葉を口にしていた。
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