狂愛

スタート

｢お前死ねよ。｣
中学3年生の穏やかな昼過ぎ、鋭く尖った言葉の矢が彼によって静かに放たれる。
｢なんで？｣と、問う私。
｢うざいしきもい。｣
彼はそう返しながらサッカーで鍛えた足を私に伸ばし蹴った。
なら産んだ親に言えばいいのに、そう私は小さく呟きその場を立ち去り席に向かった。
５時間目は嫌いな英語だった。準備を終え体に溜まっていた重い空気を吐き出す。全て出し切るとチャイムが鳴り出した。英語の担当は担任である。
｢hello！everyone！はい号令かけて！｣
唐突に英語から日本語に戻す癖のある彼女。40歳はゆうに超えている。
子供相手にそのテンションは辛いだろうなと心の中でほざく。
少しして先生と生徒達は号令を終え着席した。
｢じゃあ今日もペアで英文を読む練習をします。まずは隣の子から。少しして私が合図したら右側の子は前にズレてね。｣
いつもの恒例行事みたいなものだ。毎回のように私に目をつけた彼とあたる。私と正面になったとき怒りのスイッチが入ったように彼は細い目を更に細くして睨んでくる。そして言う。
｢見んなよ。｣
いじめてくるやつはそれしか言えないのか。
最後まで暴言を吐く彼が役目を終え
席をまだ移動する。
時折、座る椅子が私の椅子の時は上履きで｢汚ない｣といいながら渋々乗る彼はまさにその姿は猿そのものだ。
だから言葉も少ないのかもしれない。
そんなことを考えているあいだに英語の授業は終わりを迎えた。