PLAYERS HI

森大樹

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人間対アキラ

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人類がAIシステムに支配され100年が経った。都市は城壁で隔離され。食料、資源の供給は『異空間バトルフィールド』での報酬のみとされる。
太陽内にてビッグバン(エネルギー空間の膨張破裂)が発生し小惑星が消失。地球への影響は甚大で、氷河期とともに大地は半分を失う。人は機械の塔『ウィラ』に集約され、その数わずか5千人となる、この地で生存するため、若者は『キャスパー』に乗り、人間同士殺しあうことが使命とさていた。



✳︎✳︎✳︎

AIシステム。
バトルフィールドstage:異空間にてDEAD LINE。

パチ
パチ
パチ

夜。至る所で炎が空を揺かしている。
大気に浮かぶ灯火は現れては消え、辺りは瓦礫に包まれていた。ここはまるで現実と寸分違わぬ廃墟都市が再現されている。
空間に蔓延る死臭、熱風、痛みが人の五感を削ぎ、人間同士殺らなければ殺られるという思考を脳に強く埋めつけていた。

「うぇぇぇ。これがバトル酔いなのか‥‥」
黒髪にするどい目つき。168センチほどの身長に、黒色の襟詰めの制服を着ているアキラは弱々しく呟いた。
手に持つ鋼色の剣はカチカチと震え、視界が回り頭痛が止まらない。バトルフィールドが作る光の屈折。それに脳波がうまくリンク出来ていない証拠に酔っ払い現象が起きていた。
いわゆる場数が少ないアキラ、何度も頭を振っては汚物を吐き続けていた。
「はぁ。はぁ。あと一時間。時間がない‥‥」

最悪な16歳の誕生日だった。
夢にまで見たバトルフィールド生活は予想以上に困難で、もっとバキッ!とかキィーン!とか格好良くできると思っていたのに、
実際の戦場では剣は重く。轟音が耳を痛める。すくんだ自分は敵に狙われ、仲間が身代わりとなり死んでしまった。

それを見て恐怖したアキラは‥‥戦場から逃げだしてきた。
「何やってんだろ僕は。こんなんじゃダメだ!アンドロイドに勝てない!」
その声が夜の大気に残響していった。

「アキラ危ない!」
聞き慣れた声がしてくる。
振り向くと、青髪をなびかせ必至の形相で走ってくるトモがいた。
体には、軽く耐久性のある楔鎧がつけられているがそれを全く感じさせないほど手足を振っている。
「トモ。良かった‥‥」
「いいから!上だ!」
アキラは見上げると、思わずゾッとした。
「えっ何これ!?」
眼光を見開きゴクリと喉を鳴らす。
その上空には圧倒的なまでの数の矢が放たれている。
一瞬の沈黙。
それを破るように「走れ!」と声が響いた。
アキラの腕をトモが引っ張り上げる。
ギリギリのタイミングで二人の背中をかすめる30本の矢。それ見て、さらに強引に両足の回転を上げていく。
「危なかった!うそだろぉぉ!!!」
もつれる足、力の入らない体が何度も躓いてしまう。
「アキラ!酔っ払ってる場合か!」
「うわぁぁぁ!」
矢はさらに落下を始めている。
「くそ!水の紋章のやつらだ!おい!あそこだ!」
トモが目の前にある地下鉄の入り口を指差した。
わかった!アキラは走りながら頷がまたヨロケてしまう。
「届け!」
突然、トモの声が風を切る。
それと同時に視界がフワリと、天と地を回る。
そして0.5秒後にはドンッと背中に激痛が走った。
「痛っ!どうなってんだよ」

アキラは暗くなった辺りを見渡した。
ここは地下鉄の入り口だ。
一人ワープしてきたように倒れこんでいる。
どうして僕だけここに居る‥‥まさかトモが投げ飛ばし‥‥!?

「あの馬鹿!」その叫び声が出ず。わけの分からない悲鳴だけが迸る。
「うわぁぁあ!」
いつもそうだ。
トモはカッコつけたように人柱を買って出る。命を投げ出して誰かを守ることを平気でやる。そのくせ文句ひとつ言わない男だ。
ふざけんな。いますぐ胸ぐら掴んで殴ってやる。
怒り、想い。
立ち上がろうとした足がもつれた。顔面から地面に落ちると頬を擦り付けながら無理やり外に出た。

「トモ!」
瓦礫が散乱する道路。その10メートル先にトモがいた。
雨のように降ってくる矢が見える。
それに向かって剣を薙ぎ払っている。
すごい。その姿はまるで隼を纏う騎士のようだ。さすがバトルフィールドで5回も生き残った若手のホープは矢の3分の2は撃ち落としている。
アキラは興奮し、やれる!と拳を握る。

「はぁ。はぁ。」
トモの息が漏れてくる。
荒れた呼吸が次第に大きくなる。
「はぁ。はぁ。はぁ。く、そ‥‥」
さっきまで凄まじい速さで動いていた手。
今はゆっくりと、降ろされていく様。
よく見ると唇からは血が滲み、すでに満身創痍だと分かった。
「ちっ。はぁ。はぁ。はぁ。‥‥まだ無数にありやがる‥‥。くそ。潮時だな」
それを聞いて、アキラはしかめ面になった。
辺りが歪んで見えるのは酔っ払っているせいなんかじゃなく、瞼に涙が盛り上がっていた。
「トモ。何やってんだよ。早く動けよ」
その言葉が出ない。
体が動かないくせに、心臓が強く高鳴る。
「なんて顔してんだよ。だからお前は子供って言われんだよ」
大きく息を吐いたトモが、剣を肩にひっさげ笑った。
爽やかな。スッキリとした顔つきで。

「アキラ!生きろ!」

そう叫んだ瞬間だった。
ドシュ!と。
人肉に突き刺さる矢先の音が辺りに響いた。

「トモーーーー!!!!!」
「ぐっ!ア、アキラ‥‥」
背中に刺さった矢。
トモは血を吐きながらゆっくりと地面に膝を落としていく。
さらにはその後方から紫色のスカーフを巻いた人間がナイフを取り出し近づいてくる。
片目にはスコープがつけられ、スナイパーだと一目で分かる姿。
そいつをアキラは知っていた。こいつらだ。仲間を殺した水の紋章部隊だ。

アキラはトモに向かって走りだした。

死なないでくれよ。
まだ逝かないでくれ!

ピピピッ。
『alice‥‥log in 』
アラートが鳴る。
仲間がこの世界にログインした。

うるさい。今は「そんなことどうでもいい!」とにかく助けなきゃ。
敵は今にもトモに向かって剣を振り下ろそうとしているのだ。

「やめろ!」
手を伸ばすアキラ。
その視界にはパチリ。
パチリと。
二つ。

火の粉が通り過ぎていった。

トモの体と重なった灯火は強く発光し、すぐに暗くなった。

光が消えると、同時にトモの体が地面に倒れていった。

「やめてくれぇぇ!」

アキラの声が大気に反響していった。

そうだ。

これが人間と人間の殺し合い。

生きなければ現世には帰れない。

異空間バトルフィールドDEAD LINEだ
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