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第壱章

第7話 家老、立ち会う

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「いざ、尋常に勝負でおじゃる。」



勘十郎と相対するマロが慣れないながらも刀を構える。

勘十郎が本気を出さなくても勝てる相手だ。

だが、動けないでいる。動けば勝負が決まってしまう。

本来なら斬る必要の無い相手なのだ。

家老を斬ってもいないのに、息子を斬ってさらに罪を重くするわけにはいかない。



するめはいい仕事をした。夜中に家老と話してからすぐにマロを探し始め、3日もしないうちに見つけ出したのだ。

マロは路銀を集めるために、執事と大道芸をしていた。パントマイムにマロの火の輪くぐり、上杉の風船を使った犬と猫作品は子どもたちに大人気だ。

特徴をあらかじめ聞いていたするめであったが、マロ姿が、ピエロを勘違いしてるのかと思ってはじめ気づかなかった。マロ仲間でマシュマロさんはいないかと聞いたら、まさか本人だとは!という展開だったという。



一方で、この場には勘十郎の妹カガリの姿もあった。

こちらはつばめが気づいた。

個人情報保護の観点から兄の名前を伏せていたが、細かい姿の描写が勘十郎と似ていることから、たまたまマロが来る日に居合わせることができた。

今は兄とマロの対峙を固唾を飲んで見守っている。

この場には三姉妹と女将も居る。どうにも話し合いで解決できそうにないようで匙を投げた。

なんだかんだ、マロは本気で勘十郎を倒すつもりでいるのだ。



「すまんのう、勘十郎。やはり斬られてくれ」

「いやですって。なんとか真犯人を探すって話だったじゃないですか。」

「そんな暇なくない?もう息子、刀構えちゃってるよ?」




コソコソやりとりする一人と老幽霊。



「いくでおじゃああああああ!」



大きく振りかぶって、マロ、突撃!ぽよんぽよん!

軽く避ける勘十郎。スカッ

ぽよんぽよん!スカッ!ぽよんぽよん!スカッ

いつ果てるとも知れない追いかけっこがはじまった!

ぽよんぽよん!スカッ!ぽよんぽよん!スカッ



「いい加減にしろー!!」

ズバア!!!

激しい血しぶきをあげて倒れるマロ。

斬ったのは、上杉下過だった。



「いつまで遊んでるんだ!見ていられるか!」



確かに一同、見ていられるものではなかったが、何も斬ることはあるまい。



「やっていられるか!父親同様、あの世に送ってくれるわ!」

「!家老を斬ったのは貴方だったんですか!?」

「ええい!斬ってしまったからには教えてやろう!」



実に素直である。

あの夜、暗くなった瞬間、家老を斬ったのは上杉であった。



「家老を斬ったのはな、親の仇だからだよ!」



この物語、親がいないヤツばっかりだ!



「勘十郎。お前の両親も事故に見せかけて殺した。」

「何…」

「目ざわりだった。私が昔、家老を斬ろうとするのを邪魔したからな。まさか息子のお前が家老を斬るチャンスをくれるとはな。ありがとうよ。」



勘十郎の手に力が入る。

親の仇がここにいるのだ。スーっと息を吐くと、上杉まで一気に肉薄し、一閃した。



ドスッ



鈍い音がして、上杉が倒れる。



血は出ていない。どうやら峰打ちしたようだった



「敵討ちの連鎖はここで止めます。誰も浮かばれませんから。」



倒れた上杉を縛り上げる勘十郎。



「うう、、痛いでおじゃるぅ」



生きていたマロ。すぐに救急車を。

上杉を引き渡すために警察を。



勘十郎のミッション

×武田のご子息から逃げきること

〇家老を斬った真犯人を見つけること



次でエピローグです。お付き合いいただきありがとうございました。
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