19 / 32
OLYMPUS QUEST Ⅲ ~神々の復活~
散歩
しおりを挟む
雲一つない青空の下、ルーシュと並んで歩く。
「そういえば、お前はルーシュだけど、中野の意識もあるんだよな?」
「あるにはあるけど、今はルーシュの方が強いかな」
こんな他愛もない話をしながらどこへ向かっているのか。そんな質問をする人もいるだろう。だが、俺はその質問に答えられない。なぜなら、あの白い猫を追いかけているだけだからだ。
これは、ルーシュの案だ。彼によると「一度神に係わった者は何かある」らしい。
「うにゃっ」
突然、猫が視界から消えた。
いなくなった場所まで走ると、そこは交差点。どうやら死角に入っただけのようだ。
案の定、そこには猫を抱いた着物の女性。服装以外は普通なのに、どこか凄いオーラを放っている。隣を見ると、ルーシュさえも目を丸くしている。
しかし、その女性は平然とルーシュに声をかけた。
「お久しぶりです、ルーシュさん」
「イザナミ……ですよね? 確か東京タワーに縛られていたはず……」
「東京タワー? ……ああ、分かりました。あなたがニュクスとガイアを倒してくれたおかげで、歴史が変動したんですね」
「そうでしたか。何はともあれ、ご無事で何よりです」
これを読んでいる読者諸君。もし手元にカメラがあるのなら、今の俺の顔を撮っておくといいだろう。なにせ、俺の人生の中で一番マヌケな顔をしているのだから。
ただ、一つだけ言わせてくれ。新たな人格が芽生えた友達と女神が親しげに話していたら、誰だってこうなるに決まっている。
俺は、恐る恐る声をかけてみることにした。
「あの……少々、大丈夫でしょうか……」
「ああ、響のことを忘れてたよ。この方はイザナミ。天地創造の神だ」
「イザナミです。今後ともよろしゅう」
ついていけないのは、俺の頭が悪いせいじゃないよな?
「いや、それは何となくわかるんですが、本当ですか?」
「本当だよ。どうせなら死んでみるかい?」
「私の同伴があれば、生き返ることもできますよ」
着物の袂から短刀を出すイザナミ。その目は本気だ。
人間でここまでの眼光をもった人はいない。いたとしても、すぐに逮捕されるだろう。
俺は確信した。この人は、神だ。
「ところで、イザナミはこんなとこで何してるんですか?」
ルーシュがイザナミに訊いた。確かに、神もそこまで暇じゃないだろう。
それなのにこんな所にいる理由は──
「カオスの気配があったんです」
カオス──今では、異常な状況をそう言い表すけど、ギリシャ神話では原初の神様なんだっけ。確か、空間を司っていたはずだ。
そうだよなと、ルーシュに確認しようと思い、彼を見ると青い顔をしている。
「まさか、種が──」
種? なんのことだろう。彼がいた時代に起きた事件に関係があるのだろうか。
「まさにその通りです……」
目を伏せるイザナミ。まるで、辛い事実から目を背けるかのように。
「簡単に言うと、狂気の神がオリンポス転覆を謀ったときに撒いた『種』が芽を出したんだ」
狂気、種、芽……もし王道のパターンならば、大変なことなんじゃないか?
その神が園芸好きなことを望んでいた俺の希望は、イザナミの一言に打ち砕かれた。
「彼の暴走を止める為に私とイザナギで日本に遺る残骸や気配を集めているのですが、やはりオリンポス十二神が居ないと、ヨーロッパの手が足りませんね」
確定だ。神が撒いた種は、決してトマトやキュウリなんかじゃない。狂気の種なんだ。
しかも、ルーシュの話だとオリンポス十二神は引退済み。イザナミの言葉から察するに、神様には部署が存在して、ヨーロッパはオリンポス十二神が担当をしているのだろう。
「他の神はどうしているんですか? ヨーロッパにも多いはずですが……」
「ガイア、ニュクスは当時の貴方に倒されて以来、復活の兆しはありません。へーメラはいますが、夜間は動けないので……」
うん、詰みだ。圧倒的に不利。勝てるわけがない。
──待てよ、もしこの状態が均衡状態または優勢ならば、援軍は必要ないはずだ。それなのに手が足りないってことは、少なからず劣勢であるということ。ならば、制限時間が存在する……
「ちなみに、どのくらいの時間が残されているんですか」
「あと数時間でしょう。それを超えると、カオスの暴走で空間が弾けます」
「…………!」
予想以上だ。明らかに時間が足りない。
だが、もう乗り掛かった船だ。後に引くわけには行かないし、自分も無関係ではない。
さて、どうしたものか──
「倒そうぜ」
唐突に、ルーシュがそう発言した。
「何言ってんだ! 無理に決まってるだろ!」
「確かに無謀だとは思う。でも最初から決めつけて、終了を待つのか?」
「…………」
「俺は、何もせずにコールド負けなんてお断りだ」
そのまま俺に背を向けて、イザナミに跪くルーシュ。カオスのところに飛ばしてもらうのだろう。
俺はどうすれば──
「そういえば、お前はルーシュだけど、中野の意識もあるんだよな?」
「あるにはあるけど、今はルーシュの方が強いかな」
こんな他愛もない話をしながらどこへ向かっているのか。そんな質問をする人もいるだろう。だが、俺はその質問に答えられない。なぜなら、あの白い猫を追いかけているだけだからだ。
これは、ルーシュの案だ。彼によると「一度神に係わった者は何かある」らしい。
「うにゃっ」
突然、猫が視界から消えた。
いなくなった場所まで走ると、そこは交差点。どうやら死角に入っただけのようだ。
案の定、そこには猫を抱いた着物の女性。服装以外は普通なのに、どこか凄いオーラを放っている。隣を見ると、ルーシュさえも目を丸くしている。
しかし、その女性は平然とルーシュに声をかけた。
「お久しぶりです、ルーシュさん」
「イザナミ……ですよね? 確か東京タワーに縛られていたはず……」
「東京タワー? ……ああ、分かりました。あなたがニュクスとガイアを倒してくれたおかげで、歴史が変動したんですね」
「そうでしたか。何はともあれ、ご無事で何よりです」
これを読んでいる読者諸君。もし手元にカメラがあるのなら、今の俺の顔を撮っておくといいだろう。なにせ、俺の人生の中で一番マヌケな顔をしているのだから。
ただ、一つだけ言わせてくれ。新たな人格が芽生えた友達と女神が親しげに話していたら、誰だってこうなるに決まっている。
俺は、恐る恐る声をかけてみることにした。
「あの……少々、大丈夫でしょうか……」
「ああ、響のことを忘れてたよ。この方はイザナミ。天地創造の神だ」
「イザナミです。今後ともよろしゅう」
ついていけないのは、俺の頭が悪いせいじゃないよな?
「いや、それは何となくわかるんですが、本当ですか?」
「本当だよ。どうせなら死んでみるかい?」
「私の同伴があれば、生き返ることもできますよ」
着物の袂から短刀を出すイザナミ。その目は本気だ。
人間でここまでの眼光をもった人はいない。いたとしても、すぐに逮捕されるだろう。
俺は確信した。この人は、神だ。
「ところで、イザナミはこんなとこで何してるんですか?」
ルーシュがイザナミに訊いた。確かに、神もそこまで暇じゃないだろう。
それなのにこんな所にいる理由は──
「カオスの気配があったんです」
カオス──今では、異常な状況をそう言い表すけど、ギリシャ神話では原初の神様なんだっけ。確か、空間を司っていたはずだ。
そうだよなと、ルーシュに確認しようと思い、彼を見ると青い顔をしている。
「まさか、種が──」
種? なんのことだろう。彼がいた時代に起きた事件に関係があるのだろうか。
「まさにその通りです……」
目を伏せるイザナミ。まるで、辛い事実から目を背けるかのように。
「簡単に言うと、狂気の神がオリンポス転覆を謀ったときに撒いた『種』が芽を出したんだ」
狂気、種、芽……もし王道のパターンならば、大変なことなんじゃないか?
その神が園芸好きなことを望んでいた俺の希望は、イザナミの一言に打ち砕かれた。
「彼の暴走を止める為に私とイザナギで日本に遺る残骸や気配を集めているのですが、やはりオリンポス十二神が居ないと、ヨーロッパの手が足りませんね」
確定だ。神が撒いた種は、決してトマトやキュウリなんかじゃない。狂気の種なんだ。
しかも、ルーシュの話だとオリンポス十二神は引退済み。イザナミの言葉から察するに、神様には部署が存在して、ヨーロッパはオリンポス十二神が担当をしているのだろう。
「他の神はどうしているんですか? ヨーロッパにも多いはずですが……」
「ガイア、ニュクスは当時の貴方に倒されて以来、復活の兆しはありません。へーメラはいますが、夜間は動けないので……」
うん、詰みだ。圧倒的に不利。勝てるわけがない。
──待てよ、もしこの状態が均衡状態または優勢ならば、援軍は必要ないはずだ。それなのに手が足りないってことは、少なからず劣勢であるということ。ならば、制限時間が存在する……
「ちなみに、どのくらいの時間が残されているんですか」
「あと数時間でしょう。それを超えると、カオスの暴走で空間が弾けます」
「…………!」
予想以上だ。明らかに時間が足りない。
だが、もう乗り掛かった船だ。後に引くわけには行かないし、自分も無関係ではない。
さて、どうしたものか──
「倒そうぜ」
唐突に、ルーシュがそう発言した。
「何言ってんだ! 無理に決まってるだろ!」
「確かに無謀だとは思う。でも最初から決めつけて、終了を待つのか?」
「…………」
「俺は、何もせずにコールド負けなんてお断りだ」
そのまま俺に背を向けて、イザナミに跪くルーシュ。カオスのところに飛ばしてもらうのだろう。
俺はどうすれば──
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。
紺
ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」
実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて……
「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」
信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。
微ざまぁあり。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
遊鷹太
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる