32 / 32
OLYMPUS QUEST Ⅲ ~神々の復活~
永遠の夢
しおりを挟む
巨大な珠は、曲がりながら飛んでいく。
「私がサポートしましょう」
ヘルメスが杖を振りかざす。すると、杖に絡みついていた二匹の蛇が飛び出し、珠を囲うように並んだ。
蛇はカーブした珠をその体で弾き、軌道を修正する。さらに弾く時に力をかけているので、速度も上がっていく。
「や……メろ…………!」
カオスが闇を飛ばし、空間を曲げるが全て時間の珠に相殺される。蛇も自ら道を作り出してそれを回避する。
「私は旅人の守護神。旅人を塞ぐ障害は取り除くのだよ」
ヘルメスが呟くと、光の道が現れた。その中を直進する時間。
これは──
全てが、終わった。
時間が戻される。カオスと、彼が行った事象がリセットされる。
カオスの消したアレスも復活し、彼は不思議そうな顔をしている。
カオスは暴走以前の状態まで戻され、暴れていた闇も静かになった。
「勝った……」
誰かが呟いた。だが、歓声はあがらない。
俺の目の前に、1人の少年が倒れている。その立場上死ぬことは無いが、消耗することはある、存在。そして、この戦いで決して復活する可能性のない犠牲者でもある。
彼の名はクロノス──またの名をルーシュと言った。
自らの力を全て最期の一撃にかけて、その命をも撃ち抜いてしまった。
時間は無限である。それ故に彼は死なない。なのに、彼は風が吹けば飛んでいってしまいそうなほど弱々しく、動かなかった。
頬が熱い。俺は泣いているのか? 腕で拭おうとして、それが透けているのに気づいた。
「ここは元来、カオスの空間。彼が正気に戻った今、私達異界の者は本来在るべき場所へ還されます。また、クロノス殿が連れてきた十二神も──」
イザナミの言葉に、嗚咽が混じる。常に冷静だった彼女でさえ、思うところがあるのだろう……
「ルー──」
視界が白くなる。友に言葉をかけることさえ赦さないなんて、神はどれだけ意地が悪いんだろう。
鼻にくる消毒液の臭い。目を開けると、そこは病院だった。なんだか永い夢を見ていたような気がする。
どうしてこんな所にいるのか、ベッドから降りようとすると、全身に鋭い痛みが走った。布団の隙間から、包帯に包まれた腕が見える。
そうだ、確か、道路に飛び出した白い仔猫を庇って、トラックに──
白い仔猫。とても美しい猫だった。とても野良とは思えないその毛並み。無事だっただろうか。
あの猫と会ったのは、学校の帰り。ダンボール箱で捨てられていたのだ。俺は飼うことが出来ないから、確か友達に預かって貰おうと……いや、だとしたら、どうして事故に?
頬が熱い。何があった? 混乱して、何もわからない! そもそも俺の名前はなんだ!
「う……うわあぁああぁぁぁあ!!」
誰だ? 誰が叫んでいる? 叫んでいるのは……俺だ。
そして、俺は再び意識を失った。
『本来在るべき場所へ還されます』
退院して、学校へ通うようになっても、何故かその言葉が頭から離れなかった。誰の言葉かは分からないが、とても信頼できる人だったのは、何となくわかる。
「今日は転校生が来ます……」
担任の言葉も、深い水の底で聞いているかのようにぼんやりしている。
「はじめまして。父の仕事の都合で転校してきました、ルーシュ・ユピテルといいます」
その声だけが、クリアに聞こえた。
転校生は、金の短髪に蒼い目をしていて、吹き替えの外国映画を見ているような気分にもなる。
彼と目が合う。俺は、彼に会ったことがある。いや、それどころではなく、共に死線をさまよったこともある。そんな記憶はないが、確信はあった。
彼が微笑んだ。それは社交辞令だったかもしれない。ただ、俺にとっては「久しぶり」と言っている気がした。
了
「私がサポートしましょう」
ヘルメスが杖を振りかざす。すると、杖に絡みついていた二匹の蛇が飛び出し、珠を囲うように並んだ。
蛇はカーブした珠をその体で弾き、軌道を修正する。さらに弾く時に力をかけているので、速度も上がっていく。
「や……メろ…………!」
カオスが闇を飛ばし、空間を曲げるが全て時間の珠に相殺される。蛇も自ら道を作り出してそれを回避する。
「私は旅人の守護神。旅人を塞ぐ障害は取り除くのだよ」
ヘルメスが呟くと、光の道が現れた。その中を直進する時間。
これは──
全てが、終わった。
時間が戻される。カオスと、彼が行った事象がリセットされる。
カオスの消したアレスも復活し、彼は不思議そうな顔をしている。
カオスは暴走以前の状態まで戻され、暴れていた闇も静かになった。
「勝った……」
誰かが呟いた。だが、歓声はあがらない。
俺の目の前に、1人の少年が倒れている。その立場上死ぬことは無いが、消耗することはある、存在。そして、この戦いで決して復活する可能性のない犠牲者でもある。
彼の名はクロノス──またの名をルーシュと言った。
自らの力を全て最期の一撃にかけて、その命をも撃ち抜いてしまった。
時間は無限である。それ故に彼は死なない。なのに、彼は風が吹けば飛んでいってしまいそうなほど弱々しく、動かなかった。
頬が熱い。俺は泣いているのか? 腕で拭おうとして、それが透けているのに気づいた。
「ここは元来、カオスの空間。彼が正気に戻った今、私達異界の者は本来在るべき場所へ還されます。また、クロノス殿が連れてきた十二神も──」
イザナミの言葉に、嗚咽が混じる。常に冷静だった彼女でさえ、思うところがあるのだろう……
「ルー──」
視界が白くなる。友に言葉をかけることさえ赦さないなんて、神はどれだけ意地が悪いんだろう。
鼻にくる消毒液の臭い。目を開けると、そこは病院だった。なんだか永い夢を見ていたような気がする。
どうしてこんな所にいるのか、ベッドから降りようとすると、全身に鋭い痛みが走った。布団の隙間から、包帯に包まれた腕が見える。
そうだ、確か、道路に飛び出した白い仔猫を庇って、トラックに──
白い仔猫。とても美しい猫だった。とても野良とは思えないその毛並み。無事だっただろうか。
あの猫と会ったのは、学校の帰り。ダンボール箱で捨てられていたのだ。俺は飼うことが出来ないから、確か友達に預かって貰おうと……いや、だとしたら、どうして事故に?
頬が熱い。何があった? 混乱して、何もわからない! そもそも俺の名前はなんだ!
「う……うわあぁああぁぁぁあ!!」
誰だ? 誰が叫んでいる? 叫んでいるのは……俺だ。
そして、俺は再び意識を失った。
『本来在るべき場所へ還されます』
退院して、学校へ通うようになっても、何故かその言葉が頭から離れなかった。誰の言葉かは分からないが、とても信頼できる人だったのは、何となくわかる。
「今日は転校生が来ます……」
担任の言葉も、深い水の底で聞いているかのようにぼんやりしている。
「はじめまして。父の仕事の都合で転校してきました、ルーシュ・ユピテルといいます」
その声だけが、クリアに聞こえた。
転校生は、金の短髪に蒼い目をしていて、吹き替えの外国映画を見ているような気分にもなる。
彼と目が合う。俺は、彼に会ったことがある。いや、それどころではなく、共に死線をさまよったこともある。そんな記憶はないが、確信はあった。
彼が微笑んだ。それは社交辞令だったかもしれない。ただ、俺にとっては「久しぶり」と言っている気がした。
了
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。
紺
ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」
実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて……
「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」
信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。
微ざまぁあり。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
遊鷹太
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
三部構成なのでこの章が最終と言うことになるのでしょうか?
続きが気になります!よろしくお願いします!
感想ありがとうございます!
どれくらい続くかは未定ですが、この第3部でオリンポスクエストは完結です。
最後までよろしくお願いします。
感想ありがとうございます!
実は、第三部は未だ完成していないので更新はしばらく停止しますが、2月くらいには再開したいと思っています。
今後もよろしくお願いします!