拝啓、消えたあなたへ

夜咲

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愛してるとは

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それから次の予約をして家に帰る。

帰り道。翔太さんはすっかり疲れ切っていて手を繋いでくれない。

だから私から繋いだ。そうしたらいつも翔太さんは嬉しそうにするから。

「愛莉可愛すぎだよ。最高」

ほらね、私が見たかった嬉しそうな笑顔。翔太さんの事だったらなんでも分かるよ。

「運動不足も解消していいんじゃない?長生きしてね」

「愛莉の作る栄養バランスのいいご飯のおかげで長生きできますよ」

「愛莉もさ、俺より先に行ったらだめだよ?愛莉いないと俺なんにもできないんだから」

私がいないと翔太さんは何もできない。私も翔太さんがいなきゃ何もできない。

まるで運命共同体のように私達はお互いの人生を絡ませながら生きるんだ。

「ねえ、翔太さん?愛してるよ」

「好きと愛してるってどう違うの?俺、好きって感情しか知らないや」

そんな事ちゃんと考えて言ったことなんてない。

真面目に聞いてくる翔太さんに真面目に答えようとするけどどうも答えは出なくて少しの沈黙が出来る。

「自分より大事で守りたいって思ったら愛してる、なのかな」

「んーそれって守ってからしか言えないよね。思うことなんて誰でもできるもんね」

「確かに…じゃあ今は好きなんだろうね」

帰り道の小さな議論。
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