特派の狸

こま

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第二章

発見

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皇国歴 一九六一年 厳冬

「呼び出しだ」
 天使到来の周期によって、北楽の軍人の生活リズムは変化する。
 ちょうど前回、フェンリルの腕をもいでから十日ほど経ち、あと数日もすればまた忙しさと戦闘で死にそうになるというころ、佐野中佐が基地に戻ってきた。
「俺たち全員?」
「そう。なんとハネさんも」
「私?」
 なんで彼女まで呼び出されたのだろう。狸の一員には違いないけど、彼女が戦闘に参加したがった心境もわかるが、俺たちの中で一応の決着は着いたはずだ。
「行ってみりゃわかるよ。誠、暴走すんなよ。巡、冷静にだぞ」
「こっちのせりふだ」
 こっちのせりふです、と巡と言葉が重なった。
 俺たちは少し浮かれたような足取りで佐野中佐の執務室をノックした。
「やあ」
 彼の横で、軍服の女性がお辞儀をした。堅物そうな感じで、狸を目の敵にする連中とよく似た顔つきだ。
 真実が唾を飲み込む。彼女が誰かに対して動揺するなんて珍しい。
「出張と聞いていましたが、ご無事でよかった」
 が、すぐに気を取り直し、中佐をいたわった。俺たちのせいで虎穴へと飛び込んだ彼だし、感謝から自然と頭が下がった。
「まったく大変だったよ。まあ愚痴はほどほどにする。それと、紹介しよう」
 中佐がそれをする前に、女性の方から一歩前に出た。立礼にも気合が入り込み、窓ガラスが砕けそうなほどの挨拶をした。
「土戸藩からきました榊真千まちです」
 階級は大尉だった。俺は軍服を見るとすぐ階級章を確認する癖ができていたが、気になるのはそこじゃない。
(榊。そんなに多い姓じゃないよな)
「話は中佐からきいている。よろしく、朝日くん、巡さん」
 そして彼女は咳払いをして、真実へ視線を向けた。
「よろしく榊さん」
「きみたちは姉妹だろう。ここは俺の城、俺の部屋だ。もっときゃっきゃして再開を喜んでもいいんだぞ」
「しかし」
 と榊さんは遠慮するが、足がじりじりと床を這って真実にすり寄ろうとしている。クールで堅物、そんな外見に似合わないコミカルな反応だ。
「中佐が許可だしたんだからいいでしょ、姉貴」
 ほら、と両腕を広げた。ハグしてこいということなのか、その姿に榊さんは涙ぐんでしまい、そのまま駆け足で真実の胸に飛び込んだ。
「うわ、勢いつけすぎだよ」
「真実! 心配したぞ、電話もなければ手紙も寄越さないし一体どれだけの夜を涙で過ごしたことか!」
 小柄な真実よりも頭二つは大きい榊さん。ハネさんより少し低いくらいだから、膝立ちになって真実にすがりついている。
「便りのないのはって言うだろ? この通りの健康体さ」
 おいおいと本気で泣く榊大尉は、中佐の咳払いを無視し、巡が差し出したハンカチをずぶ濡れにして、ようやく真実から離れた。
「中佐、もう大丈夫です」
「きみは相変わらずだね」
 肩をすくめる中佐だが、どうやら既知の間柄らしい。そしてハネさんもそうだった。
「真千、久しぶり」
「でましたね、お化け鳥。あの掘っ建て小屋でずっと毛づくろいをしているのかと思っていましたが」
 ぎょっとするような物言いだが、ハネさんはニコニコ顔をくずさない。
「成り行きだよ」
「まあ狸のために一肌脱いでくれたことには感謝していますよ」
 口調こそぶっきらぼうだが、そこには非常な親しみが込められている。やはりというかなんというか、この辺は真実とそっくりだ。
「あのー、なんで姉貴、じゃなくて榊大尉がここに? 土戸藩の軍人が北楽にきていいんですか?」
「それなんだがね、ちょっと事情があるんだ」
「ここは佐野さんの城だぞ、真実。姉貴と呼んでくれてかまわない。なんならちーねぇと」
「うるさい。それはあんたが呼ばせたがっているだけで、そうやって呼んだことはいっぺんだってねえだろう」
「私は、たまに呼ぶよ、ちーねー」
「ハネさん、口挟んじゃ悪いっすよ」
「誠、お前な、いいんだよどんどん中断しろ。あの人はちょっと変わった人なんだ」
「冷静に、ですよ。真実さん」
 巡は歯噛みする真実をニタニタ眺め、困り顔の中佐に軽く会釈をし、
「失礼しました。どういう事情かお聞かせ願えますか」
 と商人のような物腰の柔らかさでいった。
「狸の幸運は巡くんを引き入れたことにあるだろうな」
 そんな前置きをして、佐野中佐は語る。
「レベト帝国と怪しい繋がりのある軍人はいない。またそれらしき組織だった動きもなかった」
 真実は俺よりも一歩前に起立している。が、その眉を跳ね上げて何か言葉にしようとしているのだとわかった。
「待てよ、続きをきけ。くっく、俺も狸のまどろっこしさが移ったかもしれんな」
「ならば、私も今度から簡潔にしますよ。される方は辛抱たまらないとわかりましたので」
「よろしい。きみたちの、そして皇国の敵というのは依然としてはっきりしない。帝国は貿易相手だし、国民だって出入り可能だ」
 つまり、と榊さんが言う。軍人の交換留学や物資護衛の任務もおおっぴらにできる、と。
「ちょうど狸の北楽行きが決まったころ、土戸藩にレベト軍人が来た。彼らは北楽に土戸から赤間、そして北楽と見学をする」
「榊大尉はその引率として来られたんだ。無理を言って前乗りさせたがね」
「どうして赤間に」
 俺の口は自然と動いていた。巡の戒めの視線が欲しかったが、それはなく、彼女は毅然として前だけを向いている。それはここで暴発するような俺ではないということを信じているがゆえのもので、
「失礼しました」
 と素直に素直に頭を下げることができた。
「殺気立つなという方が無理だろうな」
 中佐はそれ受け止め、この沸き立つ感情を鎮めようと声を穏やかにしてくれた。
「ただの視察だよ。どこの軍人も、見ないわけにはいかない。そういう場所だ。誰にとっても」
 真実はむしろ冷たく言い放った。
「その軍人たちは、北楽で何を。そこはただの視察じゃないはずです」
「その通り。ここは皇国でも天使の出現数が多い。力になりたいと何度も懇願されてね。本国にも了承を取ったし、死んでもどこからも文句は出ない、そういう取り決めだ」
「連中、フェンリルを間近で見たいんだ。どのくらい制御できているかを確認するために」
「それはきみの憶測だ。だが、相手の動きからするに、ちょっと真実味を帯びてきたな」
 天使を使役するための実験場、それが北楽であり、俺たちはその相手役に選ばれた。厄介払いもここまで来ると清々しい。
「一挙手一投足を見逃さないために大尉には監視をしてもらう。俺は中央での不穏な動きがないかを調査を続け、きみたちは」
「あ、そうだ。佐野さんのご帰還を祝し、我々から贈り物が」
 唐突だなと彼は驚いたが、顔はほころんでいる。「その風呂敷かい?」
「真実、私はお前が意味もなく手荷物を持って中佐の前に現れたのではないと信じていたぞ」
「当たり前でしょ。さ、どうぞご覧なれ」
 執務室の机の上で真実はその結び目を解いた。俺たちは起立したまま不動の姿勢だが、覗き込んだ中佐と榊さんは絶句し、その無言の中でひとり大威張りな少女。
「狸の牙もちょっとはやるでしょう?」
「こ、これは」
「腕、か?」
 まじまじとそれを観察し終えると、中佐は椅子の背にもたれた。
「いやはや、きみたちは」
「真実、お前」
「手柄は私のものじゃない、狸のだよ。中佐、どうですか。我々は実力とともに約束も守るということを証明した。少し、本腰を」
「本腰? そんなものは入れないよ。だって俺は狸を信頼しているもの。全力であらゆる情報網を使って敵を探した。それでも見つからず、だからきみの姉さんを頼ったんだ」
「ならばもっと本気になってください。北楽の命をすべて賭すとはいいましたが、やはり第二の赤間になっては困るのです」
 その土地の名は、彼女の前では禁句かもしれない。あんなにも激しく、しかしそれを押し殺して真剣になってしまうのだ、精神的な負担は計り知れない。
 佐野中佐は肩の力を抜いて、微笑を浮かべた。
「特派は引き続きフェンリルを追ってくれ。ただし、救援要請には応じてくれ。発見したら榊くんか私に報告。それでいいな」
 それはあの地獄のような行軍はするなという通告である。ありがたいことに、それをしたことについてのお咎めもなさそうだった。
「榊くんは監視。動きがあればどんな些細なことでも教えてくれ」
 榊さんには二面性というか、真美への柔らかい態度と他人に向ける毅然さとの差が凄まじい。はいと言うだけの返事ですら格好いいのだ。
「そうだ、梟の黒子少佐にも子狸となってもらっていますので、榊大尉にも顔合わせをしてもらいたいにです」
「え、俺としては極秘のつもりだったんだけど」
「湯ノ島は、大丈夫だよ」
 ハネさんのお墨付きに中佐は頭をかいて困ってしまった。
「あなたに言われるとなあ。佐官以下の階級連中は、鷹とか大鳥羽音の名前に弱いんだよ」
「元鷹の湯ノ島、黒子さんか。名前は聞いたことがある」
「土戸の榊も有名だよ。じゃあ中佐、こんなところで失礼します。楽しくなってきましたね」
 真実は一礼し、お姉さんに目配せをして部屋を出ていってしまった。
「おい真実、すいません、奔放な子でして」
「いやあ、きみに比べたら素直だよ。だって」
「さ、巡さん、朝日くん、我々も行こうか」
 何をやらかしてきた人なんだろう。真実が尊敬するくらいだから、やっぱり基地を爆破くらいはしたのかな。
「おっと、朝日くんは残って」
「では巡さん。早いとこお暇しよう。失礼します」
 足早に真実を追いかけるその姿を、佐野中佐はニコニコしながら見送った。
「榊さんは上官ぶん殴って、何度か降格をくらっても大尉だからね。現場でも凄腕なんだ」
「真実も、じゃなくて狸の隊長は似なくていいところも似ているのかもしれません」
「可能性はある。大いにね。ところできみに少し言っておきたいことがあるんだ」
 近頃はおとなしいどころか八面六臂の活躍をする狸である。お咎めを受けるようなことはしていないはずだ。また般若面を忘れるなという忠告だろうか。
「中央できみのことを色々きいたよ」
「色々、ですか」
「叱ろうってわけじゃないから身構えないでいいよ。俺のつてというのは、ひとつは柳生少将なんだ」
 昔から世話になっているんだよ、頭が上がらない、と彼は顎を撫でた。
「中将は随分と狸に親身でね。今回も方々あたってもらった。なぜそんなに尽力してくれるのかきくと、きみの名前が出たんだ」
「俺の?」
 私の、と言い直すと、彼はそのままでいいと笑ってくれた。
「初めて皇都に出てきたときに、柳生さんに親切にしてもらいました。それと図書館でもお会いしましたが、それ以外の接点は思いつきません」
「その図書館だ。あの人も田舎のうまれだし、きみに境遇を重ねたんだろうね」
 その感覚は、正直なところよくわからない。俺の爺さんだったら理解しえたのだろうか。
「話というのは、個人的なものだ。彼はきみたちに期待している。それを裏切らないでほしい。もちろん命を最優先にした上でだけど」
「フェンリル討伐ですか」
「それもある。が、現状に負けるなということだよ」
「現状というのは」
「個人的な話、というのは言ったね。そしてきみだけを残した。巡さんは狸の楔だ、彼女がいれば道は踏み外さない。榊さんはしるべだ、道を間違えない。きみは」
 佐野中佐は喉で笑う。そしてギラギラとさせる両の目は、どこか笠木教官に似ていた。
「その道を走る装甲車だ。彼女たちを困らせるものはすべてぶっ壊せ。心で考えろよ、許せば命令違反もしろ。俺もやった、これからもやる、少将はそういうきみたちだから身を粉にして敵を探ったんだ」
 圧倒され、熱い人なんだなという感想しか浮かばない。しかし言葉は胸にすっと染み込んだ。それもそのはずで、俺は今までそうやってきた、今、それが形容されただけに過ぎない。
「俺が堂々と違反をしろなんて言うわけにはいかないし、男同士だ、頼むぜ朝日」
 彼の眼差しに怯んだわけではないが、ゆっくりと頷くことしかできなかった。そこに含まれる熱量が、かたちをもって俺を拘束しているのかもしれない。
「それだけだ。今度、また二人で話そう。色々、お前と喋りたいおっさんが結構いるから、北楽にいるうちは役得だ」
 どういうことかきいても彼はまた今度といって俺を追い出してしまった。
 わけのわからないまま部屋に戻ると、榊さんがいる。ぴったりと寄り添う真実はしかめっ面で、どうやら腕を組まれ逃げ出せないらしい。
「説教かい?」
「あ、いえ、どうやら佐野さんは柳生少将を頼ったらしくて」
「そういやお前、知り合いなんだっけ」
「たまたまだよ。で、期待されてるから、命優先、だけど頑張れ、そんな感じ」
「ほー、朝日くんにはもうコネがあるのか」
 しかも将官だ、すごいなあ。榊さんはそういって、真実と密着する体を揺すった。
「偶然です。それに人の繋がりだったら、真実は笠置さんと仲がいいみたいですし」
「あいつは私と同期だからね。妹を頼むと念押ししたから」
「へえ、そうだったんですか」
「現場で、あの目の怪我をしてね。それがトラウマだなんていって教官に志願したんだ」
「でも、誠さんのパンチを平気で受け止めてましたよ」
「え?」
 と真実が驚いた顔をする。いくらトラウマがあろうと、あの人ならそれくらいするだろう。あの訓練が俺を北楽での生死を分かつ鍵になったといえる。凄まじく厳しい環境に慣れさせてくれたのだから。
「そりゃあ私と肩を並べるくらいの実力者だもの、そんなに驚くことじゃないぞ」
「いやそうじゃなくて、巡、お前さ」
「なんですか、真実さん」
「ほー? いや別に? そういうことをするんだなあって思っただけだよ」
 何言ってんだこいつは。いつもの底意地の悪い声をさらに露骨にして「成長したなあ巡ィ」と榊さんの腕から抜け出して、巡の横にすりよった。
「一体いつどこでそんな度胸を身につけたんだァ?」
「あなたの部下ですから」
「このやろォ」
 肩を組んで睦まじそうに絡んでいる。やめてくださいという巡もまんざらではなさそうだった。


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