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プロローグ※
しおりを挟むギシ、ギシ、とスプリングが軋み、それと同時に艶かしい水音と艶やかな嬌声が室内に響き渡る。
「あ…っ、ああ、そこ…! もっとぉ…っ!!」
掠れた低い声に強請られ、ぺろり、と唇を舐めると更に腰を押し付ける。
ごりゅ、と亀頭がイイ所に当たったのか、その声の主は大きく仰け反ったのと共に一際大きく声を上げ、白濁を吐き散らした。
それと同時に突き入れていた場所がきゅう、と引き締まり、耐え切れずそのままゴム越しに果てる。
はーはーと二人分の荒い呼吸音が室内に響く。
絶頂の余韻に浸る事数秒、荒かった呼吸も粗方落ち着いた頃、中に入れたままだった性器を引き抜いた。
「はあ~今日も気持ちよかったぁ…」
「俺もだよ」
自身の性器に付けていたゴムを取り、中身が溢れないように注意しながらゴムを巻いて、ベッドサイドに置いてあったティッシュで包んでからゴミ箱に投げ捨てた。
そんな事をしていると後ろから背中にしな垂れてきて甘い吐息混じりに耳元でそう言われて、笑みを浮かべて後ろを振り返る。
「本当? 良かった」
そう言って先程まで俺の下で乱れていた甘い顔立ちの男はちゅ、と俺の唇に口付けた。
それを拒まずにいると重なったままだった唇をかぷり、と噛まれた後、舌が差し込まれる。
ちゅ、ちゅ、と舌を絡めるキスをしているとピピピピ、という電子音が聞こえ、俺は男の肩をそっと押した。
物足りない、と言いたげな男の頭を撫で、俺はベッドから降りる。
「もうおしまい?」
「おしまい。シャワー浴びてくる」
「ええ~! 物足りないよ~」
「そう言ってもらえるのは嬉しい限りだけどね。次の予約、入ってるんだろ?」
「そうだけどぉ…次の人、乱暴だし、早いし、全然気持ちよくないんだもん」
「それはそれは…大変だな」
「んん~…体調悪いって言って断っちゃおうかな…そうしたらまだ一緒にいられるでしょ?」
風呂場に向かう俺の後を追ってきた男はそう言うと俺の腕に抱き付いて指を絡ませてきた。
本心からなのか、はたまた計算高いのか。どちらなのかは分からないけれど、俺のような
男をこうして求めてくれる事は少なからず嬉しい。
「それが出来れば良かったんだけどね。最初に言っただろ? 今、金欠でさ。これ以上はキツいんだ。情けない事にね」
「ん~…確かに情けないけどぉ…じゃあ、俺が代わりに出すって言ったら続けてくれる?」
「え…」
予想外な男の申し出に目を丸くしていると男は指を離し、俺の前に回ると今度は正面から俺の首に腕を回し、しな垂れる。
一度吐き出してある程度の熱が冷めたとは言え、まだお互い汗も乾いていない生身の体が重なる感覚に過ぎ去った筈の熱がぶり返しそうになるのを堪える。
「どう?」
「どうしたんだ? 今までそんな事言わなかっただろ?」
「そうなんだけど…だって俺の客でセックス一番上手いんだもん。すっごい気持ちいいし…無茶な事言ったりしないじゃん」
「それは…ありがとう、と言うべきか?」
「も~!! 全然信用してくんないし!」
「褒められるのは嬉しいよ。君みたいな経験豊富な人から褒められるのは特にね。さ、このままだと風邪を引いちまう」
首に回された腕をそっと外し、男の腰を抱いて風呂場に誘導すれば不服そうな顔をしながらもこれ以上粘るのは無意味だと悟ったのか、男は素直に風呂場に向かう。
手早く汗を流すと前もってお湯を張っていた浴槽に少し窮屈になるが大の男二人で入る。
俺の足の間に座り、後ろにいる俺にもたれる男に先程の会話で少し気になった事を聞いてみる。
「…他の客は優しくないのか?」
「ぜ~んぜん! ちょ~雑! がつがつしてるし、なんか臭いし、自己満でしか腰振らないから普通に痛いし! ていうか速い! いや、速いのはイイ事なんだけど、こういう仕事してる身としてはさ」
「そういうもんか?」
「そういうもん! 下手くその癖にねちねち見当違いな事して時間ギリギリまでやって、超えそうになったら、まだイッてないから~とか君も気持ち良くしてもらってるんだから~とか言って延長料金ケチる奴とか本当最悪!!! 良くねーーーーわ!!!!!」
思いの他、鬱憤が溜まっているらしい男は一気にそう言い切ると口元をお湯に沈め、荒ぶった気を治める為かぶくぶくと泡を立てる。
「ん? じゃあ、そういう奴の時はイッたりしないの?」
「しない。ていうか勃つもんも勃たない」
「…あれ? でも俺の時って割とすぐにイッてない? この前は潮噴い…」
「あああああああれは仕方ないじゃん!! ていうか言ったでしょ! 一番セックス上手いって!! 俺、潮吹きとか滅多にしないもん…」
「そうなのか…」
これは嬉しい事を聞いた。
そう思っているとこちらに背を向けていた男がくるり、と器用に狭い湯船の中で身を翻し、俺の顔を両手で包む。
「だから、少しは自信もちなよ。アンタとヤッた事のある奴、皆言ってるよ。アンタ
優しくて気持ち良いから、また指名されたいって」
「へえ…ていうか、そういうのは君的にはイイ訳? ライバルに客持ってかれるようなもんじゃないの?」
「嫌だけど!! 指名奪われるのも客減るのも死ぬ程嫌だけど!!! …アンタだって、たまには他の男抱いてみたい、とか思うだろ…そういうのまで縛る程、俺、偉くないっていうか…そんな権利ない、ていうか…」
最初の威勢の良さは何処にいったのやら。言葉を続けるにつれて徐々に尻窄みになる男を見つめていると男がいきなり唇を重ねてきた。
舌を舐るようなキスをした後、男は至近距離で俺に目を向ける。
「…でも、あの店では俺が一番アンタを気持ち良くさせる男だから。そこんとこ、忘れないでよね」
「…かっこいいねぇ」
ふん、と何処か誇らしげに鼻を鳴らす男を見て残念に思ってしまった。
(これでもう少し…)
男の事は気に入っている。
ウリ専として名実共にナンバーワンと呼ばれているだけあって、容姿も端麗で身体の具合だって良い。何より客との距離感を敏感に悟り、すぐに切り替える事の出来る頭の良さが良い。
けれど、それでも。それでも、俺は。
(…勿体ないなぁ…)
嬉しそうな顔で三度キスを強請る男に応えながら、俺は自身の心の内を悟られぬよう、そっと心の蓋を閉じた。
あの後、渋る男を宥め、一旦店に戻るという男の背中を見送りながら、俺は先程思っていた事について考える。
江泉 熙、現在25歳。
とある中小企業の平社員として細々と暮らしている平々凡々を地でいく男。因みに独身。
まごう事なきゲイであり、その容姿は中寄りの下、といえばマシなくらいのモブ男で溜まる性欲をゲイ向けの店で解消している日々だが、そんな熙には秘密にしている性癖があった。
(ああ…ガチムチイケメンを無茶苦茶にしたい…!!!)
それは自身がどうしようもなく興奮する相手が鍛え抜かれた肉体を持った屈強な男であり、顔が良ければ尚良しであり、そんな男をどうしようもないくらいに組み敷く事であった。
…最もそんな相手に巡り会えていないのだけれど。
いつかそんな男を組み敷く事を夢見るバリタチのゲイが熙であった。
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