好きです、今も。

めある

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発表、決意。

「はぁ…」
 
―例の胸の痛みは一日経った今でもまだ消えてくれない。 
でも、きつい稽古に溜まる課題、俺の生活は何も変わらず続いている。 
切り替えるように大きく深呼吸をして、更衣室の扉を開けた。 

道場に出ると、なんだか部員たちがそわそわしている。 

「あれ、今日なんかあったか?」 

そう聞くと、近くにいた後輩が耳打ちしてくる。

 「…今日、夏の大会の団体戦のメンバーが発表されるらしいですよ。」

その声に、 一気に鼓動が早くなるのが分かる。

そうか、今日か。

 さっきの胸の痛みとは違う、胸がざわつくような感覚を覚えながら、いつもの定位置に腰を下ろした。
 ちらっと安達の方を向くと、少し硬い表情で素振りをしていた。あいつも、緊張してるのかな、なんてぼんやりと考えていると、コーチが道場に入ってきた。

 ざわついていた空気が一気に引き締まるのが分かる。 

「…では、発表するぞ。まずは男子からだな。」

 ごくり、と唾をのみ込む。
 高校の団体戦は五人制。先鋒、次鋒、中堅、副賞、大将の順で相手と一対一で戦う。細かいルールは様々あるが、基本的に三勝した方が勝つ。 
正直、この部の面々はみんな強い。誰が選ばれてもおかしくないだろう。

…でもきっと。

 
「中堅、安達。」

 ほら、やっぱりな。予想が当たり、思わず、笑みがこぼれた。 
ざわつく空気の中で、安達の方を見る。
あいつは、どこか、ほっとした、それでいて、一年生でありながら、「中堅」という重要なポジションに選ばれたことの戸惑いが窺えるような――不思議な顔をしていた。

 かちり。視線がぶつかる。安心させるように、思いっきり笑顔で、口を動かしてやる。

 「お・め・で・と・う」

 すると、少し頬を染めて、ペコリと頭を下げて来た。


 さて、残る枠は二つ。大将は、おそらく部長だろう。
ならば、俺の名前が呼ばれるとしたら、きっと次だ。
…じわりと、湿った感触が手のひらから伝わる。

 「副将は…」

 コーチの声と、心臓の鼓動だけが頭に響く。

 ―呼ばれたのは、


 「桐越。」

 ―俺の名前だった。ふっと息を吐き出す。 
…最近頑張ってたんだ、選ばれないことはないだろう、とは思っていたけれど。
 じわじわと心の底から嬉しさが込み上げてくる。 

安達がこちらを見る、ほんの一瞬、視線が交わった。小さく頷くその仕草に、俺も頷き返す。 

道場に、少しずつざわめきが戻ってくる中、肩の力を抜き、深呼吸をひとつ。 

―よし、頑張ろう。

 そう、決意を固めて、今日も稽古へ向かう。
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