好きです、今も。

めある

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高揚、冷めやらず。

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「礼!」

歓声と拍手の音が押し寄せ、体育館の空気が揺れているように感じる。熱気は最高潮、びりびりと肌を焦がすようだ。
熱戦を繰り広げた相手をもう一度見据える。その中には、唇をぎゅっと引き結ぶ者、目に涙が浮かんでいる者、抱える感情は様々だ。
対する俺たちは一様に、憑き物が落ちたかのように、どこか晴れやかな顔をしている。


―そう、俺たちは勝ったのだ。


安達が勝ったあの後、なんとか落ち着きを取り戻し、辛くも勝利を収めることができた。
危ない場面も多々あったが、それでも、実力が同じ、いや、それ以上かもしれない相手と本気で戦えて楽しかった。
中高と剣道をやってきたが、あんなにワクワクしたのは初めてかもしれない。
楽しかった、勝てて嬉しい。そんな感情が渦巻く胸の奥。
一方で、それとは違う、言葉にならないふわふわとしたものが心の片隅に居座っていた。


夕日に染まりだした空。頬を撫でる湿気を孕んだ風は、茹りそうなほどの熱気にさらされていた俺にとって随分と心地よく感じる。
紫、ピンク、オレンジ――幻想的なグラデーションに彩られた空をぼんやり眺めていたら、肩をとんとんと叩かれた。


「先輩、バス来てます。帰りますよ。」


その声に思わず、肩が跳ねた。
後ろを振り返った瞬間、俺の目に飛び込んできたのは、夕日に照らされた安達だった。空と同じ、オレンジに染まった横顔はまるで、映画のワンシーンのようだ。

…顔が良いな、こいつ。

「びっっっくりした!おっ、驚かせんなよな。」
「…勝手に驚いたのはそっちでしょう。はぁ…行きますよ。」

そう言って踵を返し、歩きだした安達に、慌ててその後ろ姿を追いかける。

「待てよ~!先輩置いていくなよな!」

そんな恨み言を零す俺に目もくれず、真顔ですたすたと歩く安達。
はぁ、つれないやつだ。なんでこんなやつ好きになっちゃったんだか。

―でも。頭にぼんやりと、あの、優しい笑顔が浮かぶ。


途端に跳ねる心臓に、また、ぶんぶんと頭を振った。
―だめだ、今は思い出すな。そう思えば思うほど、余計に隣のこいつを意識してしまって、はぁ、と思わずため息をこぼした。

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