好きです、今も。

めある

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落ちる、堕ちる。

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そうしているうちに、バスの前に着いた。
次々と部員たちが乗り込んでいく中、俺と安達もその列へ並ぶ。
窓から差し込む夕日がシートを夕日に染めている。俺は安達の隣にゆっくりと腰を下ろした。

…そう、安達の隣である。
部のやつらは、こいつへの態度はある程度柔らかくなったものの、まだこいつと話すのは恐れ多いと思うらしい。バスの隣の席などもってのほかだ。
仕方なく、俺が隣に座ることにしたのだが…。
行きは良かった!けど、今は違う。

先ほどよりもずっと近い距離に、そわそわとしてしまって落ち着かない。どくどくと脈打つ心臓は今にもはち切れそうだ。
落ち着かなければ。
そう思って窓の外に目をやるも、茜色に染まった空では役不足のようだ。空回る思考は一向に落ち着いてくれそうにない。

「そ、そういえば!全国…ぜ、全国楽しみだな!な!?」

なんとか会話の糸口を見つけ出し、思い切って安達の方に視線を向ける。

するとなぜか、とん、と肩に重みと熱を感じた。

「…は。」

目を丸くする俺の肩に、安達の頭が預けられている。揺れるバスの中、安達はあっという間に夢の世界に旅立っていたらしい。
すぅすぅと穏やかに寝息を立てるその顔は、あどけなくて無防備。

―お前、さっきまであんなにかっこよかったのに、次は可愛いとか…。

先輩の肩を借りて寝ていたと知ったら、真面目なこいつは気にしてしまうだろうか。
起こすべきか迷う、だが、穏やかに眠っているその顔を見てしまうと起こすに起こせない。制汗剤だろうか、ふわり、と鼻をくすぐるせっけんの匂いに天を仰ぐ。

―まずい、本当にまずい。

なに無防備に寝てんだよ、こっちはこんなにテンパってるのに!
思わずため息が漏れてしまい、起こしてしまったかと、ドキリとした。

ちら、と横を見やる。

安達は眉ひとつ動かさず、安心しきったような顔で眠っている。
その顔に胸がぎゅっと締め付けられた。


―なんでだろうな、なんで俺、こいつのこと好きになっちゃったんだ。


最初はただ、真面目で堅物なやつだと思ってた。…まぁ今もそうなんだけど。
協調性ない、空気が読めない、融通が利かない。だけど、剣道に対してはずっと真剣で、一切妥協しない。
正直、性格は合わないタイプ。めんどくさいやつだなぁ、とか思ってたはずだ。
でも、一人になったとしても、すっと立ち続けたその姿。誰に何を言われようと、何を思われようと、剣道に向き合い続けたその姿勢。

そしてなにより、ふんわり、と初めて見せたその笑顔。


その笑顔を、俺だけに見せてほしい…なんて、思ってしまった時点で。


―完全に、落ちてしまったなぁ。


性格が合わないとか、男だとか。そんな壁みたいなものがどこかに吹き飛んでいってしまうくらいに。
あぁ、俺は、完全に恋に落ちている。

じっと隣で眠る安達を見つめる。……顔がいいな。
こんなに悶々とした感情を抱えている俺が隣にいるのに、なんでこいつこんな穏やかに寝てるんだよ。俺もいっそ眠ってしまいたい。
ふぅ、と呼吸を落ち着かせて、目を瞑る。すると余計に肩から伝わる、じんわりとした熱が気になって仕方がない。

はぁ、と大きくため息を零して、

―もういっそ起きてしまえ。

と、眠り続けるこいつに軽くデコピンしてやった。…結局起きなかったけど。
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