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一人から、二人へ。
次の日、俺は弁当箱を持って道場裏へと足を運んだ。
どっかりと例の場所に落ち着くと、すっと冷たい風が吹き抜けた。
……やはりここはいい風が通る。
その心地よさについ目を細めていると、近づいてくる足音が一つ。
「よっ、お疲れ。」
「なんでいるんですか……」
「なんでってなぁ、寂しがりやな安達君のためだよ。」
にっと笑って声を返すと、不貞腐れた顔で俺の隣へと腰かけた。
「……寂しがってなんかないです。」
「ははっ、まぁそういうことにしといてやるか。」
俺の返事にため息を一つ零した後、諦めたように弁当を広げ始める。
――なんだかんだ俺が隣に居ることは許してくれるんだな。
固く閉ざされたその心に少し触れられた気がして、口角が自然と上がる。
黙々と食べだした安達に倣って俺も弁当箱を広げた。
会話は少ない。けれども、沈黙は蝉の声が埋めてくれる。
居心地は不思議と悪くなかった。
ふと、安達がこちらの弁当を見て首をかしげる。
「…なんだ?」
「……先輩、量少なくないですか?」
「いや、お前が多いだけだ。」
安達の足に広げられた弁当箱は俺の二倍くらいあるだろうか。明らかに大きい。
こいつはまだ首を捻っている。
「足ります?それ。」
「足りる。これだけ食べたら十分だっての。…お前、昨日も思ったけど、案外良く食うよなぁ。」
「…そうですかね。」
「あぁ。なんかもっとこう……少ない量をちまちま食べてるイメージだった。」
その言葉に安達は眉を顰める。
「…馬鹿にしてます?」
「してない。」
じとりとこちらを見つめて来る。なんだこいつ。
「そういう先輩も……ちょっと意外ですよね。」
「意外?」
頭をかしげながらそう答える。安達は口の中のものを飲み込んだ後、こくり、と頷いた。
「…どこが?」
「もっとがつがつ食べるのかと。……どちらかというとちまちま食ってるのは先輩ですよね。」
「ちまちまじゃない!味わって食ってんの!」
「へぇー…。」
興味なさげにそう呟いて、弁当の端をつつきだす。
興味ないなら聞くなよ。
そう思いながらも、自然な軽口の応酬に思わず頬が緩んでしまう。
ちらり、と安達の様子を窺う。その横顔に昨日の寂し気な表情はない。
……本当に、手のかかる奴だなぁ。
こうして肩を並べて飯を食うだけで、少しずつこいつとの距離が縮まっていく気がした。
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