好きです、今も。

めある

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勉強、滲む恋。

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テスト期間。
俺は勉強用具一式抱えて、安達の教室へとやってきた。

授業を終えた教室にはちらほら人がいる程度で、昼間とは別の、不思議な雰囲気に包まれている。
俺の目当ての人は奥の方、窓際の席に座っていた。
傾いた日差しがその横顔を赤く染める。教科書を読んでいるだけだというのに、その姿はどこか様になっていた。
ふいに、心臓が大きく鳴ったが、知らぬふりをして、そちらへと近寄った。

「お疲れ、頑張ってるな。」

えらいえらい、そう呟きながら、向かいの席へと腰を落ち着ける。

「…お疲れ様です。子ども扱いやめてもらっていいですか。」
「はは、すまんすまん。」

口では謝りながらも、そのふわふわの髪を撫でようと手を伸ばしたら払われた。
…残念。

「で、どれがやばい?」
「……全部、ですかね。でも数学が特にダメです。」
「数学かぁ~、うん、分かるぜ。俺もダメだ。」
「えっ……どうするんですか。」
「大丈夫だって。教えられる程度にはできる……はずだ。」

俺を怪訝な顔で見つめる安達。それを無視してペンを取り出す。

「よし、やろうぜ。」
「はぁ……お願いします。この、例題22からよく分からなくて。」
「お、ここか。確かに難しいよな……。」

確か、この公式を応用して……、と説明していく俺に、頷きながら着いてくる。

「で、この答えが出るわけだ。」
「なるほど。ということは……。」

そう言うと早速、練習問題を解きだした。
……ぱっと見た感じ大丈夫そうか。さすが、呑み込みが早い。

「出来ました。」
「ん、どれどれ……。」

ノートを差し出されたので、しっかり確認していく。
うんうん、ちゃんとできてるな。

「よし、正解だ。」

視線を上げる。すると、真剣にノートをのぞき込む安達の顔が視界に広がった。

思ったより、近い。

一瞬、呼吸を忘れる。急に体中の熱が上がった気がした。

俺の返事を聞いて、安達が満足そうに、少しほほ笑む。
また、かっと体の熱が上がる。

「ありがとうございます。謎が一つ解けました。」

――だめだ、落ち着け。

熱を持った顔を見られないように伏せて、数秒。
何とか口角を上げた。

「……おう。謎って、そんな大袈裟な。」
「いえ。先輩が教えてくれた公式、やっと賦に落ちたので。」
「……そうか、なら、よかった。」

安達は黙々とノートにペンを走らせている。その横顔は真剣そのもの。

少し手はかかるが、いい後輩だ。
純粋に俺の事を「先輩」として慕ってくれている。
俺がなにも言わなければ……知られなければ、きっとこれから先も「先輩」として慕ってくれるだろう。
ならば。
やはりこの恋は消さなければいけない。
ずきずきと痛み出す恋心に蓋をする。
押し殺せ、悟られるな。笑え。
なんとか、口角を引き上げて、笑う。

「……よし、次の問題行こうぜ。」
「はい。お願いします。」

ゆっくり、日が傾いていく。
あぁ、俺のこれも一緒に沈めてくれればいいのに。
紺色に染まりだした空を眺めながら、ぼんやり、そう思った。


後日。
いつもの場所で安達を待っていると。

「先輩!見てください!」

ばっと眼の前に広げられたテスト用紙。右上には70の文字。

「70点!凄いじゃないか!頑張ったな。」
「はい、先輩のおかげです。」
「いや、俺はただやり方教えただけだ。これはお前の努力の成果だな。」
「いえ、それでも……ありがとうございました。……また、お願いします。」

少し申し訳なさそうに、最後にそう付け足す。
言ってから恥ずかしくなったのか、視線を逸らした安達に、俺はまた吹き出した。

「ははっ、任せろ。……あと、他の教科も頑張ろうな。」
「うっ……はい。」
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