好きです、今も。

めある

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安堵、罪悪感。

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こうして、安達の世話を焼き続けて一年半。
だが、俺が三年に進級、つまり安達が二年になってからの半年は、見守るだけに留まっていた気がする。
なぜなら一年間で、こいつの雰囲気が大分柔らかくなったからだ。
その結果、安達の周りには人が集まるようになった。
コミュニケーションというものも覚えて、誰かと衝突することも、もうほとんどない。
そう、俺の役目はなくなったに等しかった。

二年目は弁当を一緒に食べることもなかった。
あいつは教室で、同級生の剣道部のやつらと一緒に飯を食っているらしい。
あいつは俺が居なくても、自分で居場所を作れるようになったのだ。
子どもが親離れした時の親の気持ちってこんな感じなのだろうか。
嬉しい気持ちと寂しい気持ちが綯交ぜになった、どこか不思議な気持ちだった。 

それでも、部活のときには、一目散にこちらに向かってきたのは可愛かった。なんだか飼い主を見つけた犬みたいで。
その姿にどこか優越感を持っていたのは、仕方がないだろう。 ……俺にとって可愛い後輩であることは今も変わりない。

そして、好きなやつであることも変わりない。

「いい先輩」を演じていれば、きっとなくなるだろうと思った恋は未だ健在。
それどころか、すくすくと育ってさえいた。

……本当に、情けない話だ。

そんなことをぼんやりと考えながら、三階の廊下を歩いていた時、ふと視界の端に中庭が映った。

風が枯れ葉を揺らしている。すっかり秋だ。
その木の陰で立ち尽くす安達と向かいあう女子。俺はあの子の名前も顔も知らない。
そんな二人を夕日がドラマティックに照らす。

頬を染めて、何かを安達に告げる女子。あれは誰がどう見ても、告白だ。

――またか。

この半年でどれだけこんな場面を見ただろうか。
思わず額に手を当てて、ため息をこぼす。

俺がただの「いい先輩」ならば、素直にこれを喜べるのだろう。
だが、と俺は「いい先輩」になりきれなかった。
あの女の子と同じ、「あいつを好きな人間」だ。……ただ、その性別が違うだけで。
胸がぎゅっと痛む。この感覚も何度目だろうか。きっともう両の手では数えられない。

安達が何か言うと、女の子は泣き出す。
きっと「剣道に集中したい」というお決まりの文句で振られたのだろう。
それを見て、安堵と同時に、痛みが押し寄せる。

――最低だな、俺。断られてほっとするなんて。

それを見届けた後、そっと視線を逸らして、また歩き出した。

俺はあと数か月で卒業する。進学先はここから離れた、遠い大学。
卒業してしまえば、きっともうあいつと会うことはないだろう。

俺が居なくなるまでにこの恋は消えてくれるだろうか。

……それとも、消える前に終わりがきてしまうのだろうか。

悩み続ける俺を残して、時間は無情にも進み続ける。


卒業まで残り数か月。
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