好きです、今も。

めある

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図書館と、思い出。

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どこにもやり場のない苛立ちをどこにもやることができなかった俺は、図書館へと足運んだ。
理由はただ一つ。心を落ち着かせるためだ。
まあ、落ち着けるわけもないんだけど。
自分の感情すらコントロールできない、その幼さにまで苛立って、
俺は結局、図書館へと逃げ込んだ。

一歩足を踏み入れると、紙とインクが乾いたような匂いが迎えてくれる。
沈黙に満たされた空気は、張り詰めていた胸の奥にすっと沁み込むようで、ほっと肩の力が抜けた。
無数の本棚を抜けて、窓際の座り慣れた席へと腰を下ろす。柔らかい陽の光が差し込んで、木製の机を照らしている。
人の気配は遠く、嫌な視線も感じない。
その穏やかな空気に、ささくれだっていた心が落ち着きを取り戻していく。

――よし、せっかく図書館に来たのだから、勉強でもしていこう。

そう思い立って、教科書とノートを取り出した。
ページをめくる音、ペンの擦れる音。
それらが静かに響くこの空間は、集中力を引き出していく。
次第に、周りの音さへも何も聞こえなくなって、ひたすら文字を追い続けていた。
 
ふと、顔を上げる。
気がつけば、窓から差し込む陽光はすっかり茜色に染まっている。
ぼんやりと西に傾く夕日を眺めていると、不意に視界の端に影が差した。

「ここにいたんですね、先輩。」

小声で囁くように安達は呟いた。
茜色に染まったその顔は、あの試合の後の顔と重なってずきりと胸が痛む。
それをため息で隠して、俺も囁くように呟いた。

「なに。ここ座りたいのか? 俺帰るけど。」
「いえ。俺も帰ります。」

……なんだこいつ。
なにがしたいのか本当に理解できない……そう思いながら、帰る準備をしようと、机を片付け始める。
俺の手がペンへと伸ばされたその瞬間に、安達はぽつりと呟いた。

「……それ、俺が誕生日にあげたやつですよね。」

ぴたり。伸ばした手が一瞬、止まる。背中に冷たい汗が伝った気がした。

「っ書きやすいからな。ありがたく使わせてもらってるよ。……なんだ、持ってちゃ、悪いか?」

努めて、冷静で無感情な声を出す。
それに安達はふっと笑った。

「……いえ。嬉しいな、と。……もう捨てられたかと思ってました。」

目の下あたりが少し赤く染まって見えるのは、きっと夕日のせいだろう。
……本当に嬉しそうに見えるのも、きっと俺の気のせいだ。
シーンとした空間に、二人分の息遣い、そして俺の心臓の音がばくばくと響く。

……あー、なんなんだよもう。安達の笑みから逃げるように、慌ただしくノートを閉じた。

「もう帰る。」

短く吐き捨てて席を立つ。

「……はい。」

隣で響く足音が気に障る。
許可なんて出してないのに、こいつは当然のように無言で隣に立ってきて。
それが余計に俺の心をかき乱していった。
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