好きです、今も。

めある

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拒絶と、渇望。

あの日、全て終わらせたはずなのに。
結局、あの頃と何も変わらない。
こいつはいつも俺のすぐ隣にいて、俺の心をかき回していく。

……こいつだって、俺を振ったのに、なんで。

ふと、あの苦しさを思い出してしまって、ぎゅっとカバンを強く握りしめる。

それでも、こいつはまだ俺の隣を歩いてくれる。
それだけで嬉しいと思ってしまうのだから、本当に救えない。

辛い、嬉しい。
相反する二つの感情がじわじわと俺を追い詰めて来る。

……本当に気が狂いそうだ。


「あの……先輩。」

しばらく黙っていた安達が言葉を漏らす。
風にかき消されてしまいそうなほど、小さなその声に、視線だけそちらに向ける。

だが、目は合わない。

安達はうろうろと視線を彷徨わせて、必死に言葉を探しているようだった。


「……何?」

思っているより、鋭い声が出た。

はっと安達はこちらを向く。
同時に、迷い、痛み……言葉にならないほどのたくさんの感情を抱えた金の瞳がこちらを捕らえた。


数秒、沈黙が落ちる。


そして、こいつは意を決したように口を開いた。


「……俺、先輩に会えて、良かった、です。」

小さく震えた声。短い一文。
謝罪でも、ましてや告白でもない。
それでも僅かに熱を孕んだ言葉。それは確かに俺に届いた。
胸の奥にじわりと、暖かいものが広がっていく。それはまるで、凍っている心を溶かすようで。
その暖かさに腹の底からぐっと何かが込み上げてくる。

「……それだけです。」

平静を装うように付け加えられた言葉。

けれども少し視線を落とせば、その手がわずかに震えているのが見えてしまう。
なんとか冷静を取り繕おうと頑張る姿が痛々しい。

けれど。

――頑張って伝えてくれたんだな。ありがとう。

そう言って頭を撫でる資格は俺にはもうない。

……あの日告白した瞬間から、「いい先輩」には戻れないのだから。

安達に背を向ける。

そうしないと本当に泣いてしまいそうだった。

「先輩……。」

もう一度、小さく呼び止められる。
切なさをにじませたその声から逃れるように

「じゃあな。」

と、走り出した。
追ってくる足音は、もうない。
それを寂しいと思ってしまう自分に心底腹が立つ。

構内を全力疾走する俺に集まる視線。それを気にも留めずに走り続けた。



*******
 

バタン。

玄関のドアが大きな音を立てて閉まる。

俺はそれに背を預けて、ずるずると座り込んだ。

さっきの声がまだ耳に残っている。
何度振り払おうとしても、消えてくれない。

……胸の奥の暖かさすら、消えてくれない。

俺の切れた息だけが響く、静かな空間。

それに、ははは……、と自嘲的な笑い声が混ざる。

「会えて良かった……か。」

――俺は、会いたくなかったよ。続けられた声は誰にも届かず、静寂へと吸い込まれて消えた。
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