好きです、今も。

めある

文字の大きさ
35 / 35

友と、勇気。

しおりを挟む
そんなある日、ゼミ終わりに涼から声をかけられた。


「この後時間ある?ちょっとカフェ寄りたいんだけど。」
「珍しいな、お前がそんなこと言うなんて。」


俺の返答に涼はむっと顔を顰める。


「いいでしょ、たまには。で、行くの?」
「ごめんごめん。行くよ。」


特に断る理由もなかったため、俺は頷いた。



*******



店に入って席に着くと、ほどなくして運ばれてきたコーヒーの匂いが鼻をくすぐる。
口をつけると、広がる苦みと僅かな酸味。うん、やっぱりあまり好きになれない。
することもなくて、控えめに流れているジャズに耳を傾けていると、不意に涼の声が落ちて来た。


「ねぇ、いつまでそうして逃げ続けるつもり?」
「……は?」
「安達君から。見てれば分かる。あの子がゼミ来てからずっと彼を怖がってるよね。」
 

予想外のところから、ぐさりと刺された。
言葉が詰まる。
無意識に、カップを握る手に力が籠った。


「……別に。お前に関係ないだろ。」
「あるよ。俺、お前のこと友達だと思ってるんだけど。お前は違うの?」


その問いに、思わず黙り込む。


「あのさ、俺。お前とあの子にどんなことがあったのかあんまり知らないけどさ。」


涼は一呼吸おいて、次の言葉を紡いだ。


「あの子はちゃんとお前と向き合おうとしてるよ。」


その言葉に、はっと乾いた笑みが零れる。


「なんで、お前がそんなこと分かるんだよ。」
「だって俺、あの子とちょっとお話したからね。」


なんでもないように言われたその言葉に目を見開く。


「……っはぁ!? な、なにを!?」
「ふふっ、ナイショ。」


それ以上は言うつもりもないようで、涼はコーヒーを口に含んだ。
俺はわなわなと唇を震わせることしかできない。


あいつが俺と、向き合おうとしている?
それは本当だろうか。信じていいのか、こいつの言葉を。
怖い。けれど、安達のあの異常な行動は、俺とちゃんと話したかったから……なのか?
だとしたら、俺は……。
俺はどうすればいい?

ぐるぐると思考を巡らせて一人で百面相していると、唐突に涼が笑い出した。


「あっはは! お前、ほんとにあの子のこと好きなんだね。」
「は!? お前何で知って……!」


顔が一気に赤くなる。
カップを持つ手がぷるぷると震えて、コーヒーが揺れた。


「だってお前、分かりやすいから。」
「嘘だろ、俺そんな分かりやすいか……?」
「はは、いいと思うよ。色んな奴とっかえひっかえしてたあの頃よりも人間味があって。」


さらりと告げられたその言葉に、喉の奥がきゅっと締め付けられる。


「……余計なお世話だ。」


ぽつりと落とされた俺の言葉に、涼は目を細める。


「確かにそうかもね。……でも、友達として、お前には幸せになってもらいたいからさ。……何をそんな怖がってのか、俺には分らないけど……きっと、大丈夫だと思うよ。だからさ、頑張って。」


そう言って涼は本を取り出した。
その姿は相も変わらずすましている。
けれども、耳に少し赤色が差しているのを見つけてしまって、ふっと頬が緩んだ。


――俺はほんとに、いい友達を持ったなぁ。


「……分かった。頑張ってみる。」

涼はちらりとこちらを見て、少しほほ笑んだ後、すぐに本へと視線を落とした。

窓の外には傾く夕日。夕暮れ色に染まる街並みは、新しい明日を連れてくる前触れのようで、不思議と心が軽くなったような気がした。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

腹を隠さず舌も出す

梅したら
BL
「後悔はしてるんだよ。これでもね」 幼馴染の佐田はいつも同じことを言う。 ポメガバースという体質の俺は、疲れてポメラニアンに変化したところ、この男に飼われてしまった。 ===== ヤンデレ×ポメガバース 悲壮感はあんまりないです 他サイトにも掲載

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

どうしてこんな拍手喝采

ソラ
BL
ヤクザ×高校生

運命なんて知らない[完結]

ななな
BL
Ω×Ω ずっと2人だった。 起きるところから寝るところまで、小学校から大学まで何をするのにも2人だった。好きなものや趣味は流石に同じではなかったけど、ずっと一緒にこれからも過ごしていくんだと当たり前のように思っていた。そう思い続けるほどに君の隣は心地よかったんだ。

刺されて始まる恋もある

神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

今日も、社会科準備室で

下井理佐
BL
内気で弱気な高校生・鈴山夏芽(すずやまなつめ)は、昼休みになると誰もいない社会科準備室でこっそりと絵を描いていた。 夏芽はいつものように社会科準備室を開ける。そこには今年赴任してきた社会科教室・高山秋次(あきつぐ)がいた。 新任式で黄色い声を受けていた高山がいることに戸惑い退室しようとするが、高山に引き止められる。 萎縮しながらも絵を描く夏芽に高山は興味を持ち出し、次第に昼休みが密かな楽しみになる。

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

処理中です...