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友と、勇気。
そんなある日、ゼミ終わりに涼から声をかけられた。
「この後時間ある?ちょっとカフェ寄りたいんだけど。」
「珍しいな、お前がそんなこと言うなんて。」
俺の返答に涼はむっと顔を顰める。
「いいでしょ、たまには。で、行くの?」
「ごめんごめん。行くよ。」
特に断る理由もなかったため、俺は頷いた。
*******
店に入って席に着くと、ほどなくして運ばれてきたコーヒーの匂いが鼻をくすぐる。
口をつけると、広がる苦みと僅かな酸味。うん、やっぱりあまり好きになれない。
することもなくて、控えめに流れているジャズに耳を傾けていると、不意に涼の声が落ちて来た。
「ねぇ、いつまでそうして逃げ続けるつもり?」
「……は?」
「安達君から。見てれば分かる。あの子がゼミ来てからずっと彼を怖がってるよね。」
予想外のところから、ぐさりと刺された。
言葉が詰まる。
無意識に、カップを握る手に力が籠った。
「……別に。お前に関係ないだろ。」
「あるよ。俺、お前のこと友達だと思ってるんだけど。お前は違うの?」
その問いに、思わず黙り込む。
「あのさ、俺。お前とあの子にどんなことがあったのかあんまり知らないけどさ。」
涼は一呼吸おいて、次の言葉を紡いだ。
「あの子はちゃんとお前と向き合おうとしてるよ。」
その言葉に、はっと乾いた笑みが零れる。
「なんで、お前がそんなこと分かるんだよ。」
「だって俺、あの子とちょっとお話したからね。」
なんでもないように言われたその言葉に目を見開く。
「……っはぁ!? な、なにを!?」
「ふふっ、ナイショ。」
それ以上は言うつもりもないようで、涼はコーヒーを口に含んだ。
俺はわなわなと唇を震わせることしかできない。
あいつが俺と、向き合おうとしている?
それは本当だろうか。信じていいのか、こいつの言葉を。
怖い。けれど、安達のあの異常な行動は、俺とちゃんと話したかったから……なのか?
だとしたら、俺は……。
俺はどうすればいい?
ぐるぐると思考を巡らせて一人で百面相していると、唐突に涼が笑い出した。
「あっはは! お前、ほんとにあの子のこと好きなんだね。」
「は!? お前何で知って……!」
顔が一気に赤くなる。
カップを持つ手がぷるぷると震えて、コーヒーが揺れた。
「だってお前、分かりやすいから。」
「嘘だろ、俺そんな分かりやすいか……?」
「はは、いいと思うよ。色んな奴とっかえひっかえしてたあの頃よりも人間味があって。」
さらりと告げられたその言葉に、喉の奥がきゅっと締め付けられる。
「……余計なお世話だ。」
ぽつりと落とされた俺の言葉に、涼は目を細める。
「確かにそうかもね。……でも、友達として、お前には幸せになってもらいたいからさ。……何をそんな怖がってのか、俺には分らないけど……きっと、大丈夫だと思うよ。だからさ、頑張って。」
そう言って涼は本を取り出した。
その姿は相も変わらずすましている。
けれども、耳に少し赤色が差しているのを見つけてしまって、ふっと頬が緩んだ。
――俺はほんとに、いい友達を持ったなぁ。
「……分かった。頑張ってみる。」
涼はちらりとこちらを見て、少しほほ笑んだ後、すぐに本へと視線を落とした。
窓の外には傾く夕日。夕暮れ色に染まる街並みは、新しい明日を連れてくる前触れのようで、不思議と心が軽くなったような気がした。
「この後時間ある?ちょっとカフェ寄りたいんだけど。」
「珍しいな、お前がそんなこと言うなんて。」
俺の返答に涼はむっと顔を顰める。
「いいでしょ、たまには。で、行くの?」
「ごめんごめん。行くよ。」
特に断る理由もなかったため、俺は頷いた。
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店に入って席に着くと、ほどなくして運ばれてきたコーヒーの匂いが鼻をくすぐる。
口をつけると、広がる苦みと僅かな酸味。うん、やっぱりあまり好きになれない。
することもなくて、控えめに流れているジャズに耳を傾けていると、不意に涼の声が落ちて来た。
「ねぇ、いつまでそうして逃げ続けるつもり?」
「……は?」
「安達君から。見てれば分かる。あの子がゼミ来てからずっと彼を怖がってるよね。」
予想外のところから、ぐさりと刺された。
言葉が詰まる。
無意識に、カップを握る手に力が籠った。
「……別に。お前に関係ないだろ。」
「あるよ。俺、お前のこと友達だと思ってるんだけど。お前は違うの?」
その問いに、思わず黙り込む。
「あのさ、俺。お前とあの子にどんなことがあったのかあんまり知らないけどさ。」
涼は一呼吸おいて、次の言葉を紡いだ。
「あの子はちゃんとお前と向き合おうとしてるよ。」
その言葉に、はっと乾いた笑みが零れる。
「なんで、お前がそんなこと分かるんだよ。」
「だって俺、あの子とちょっとお話したからね。」
なんでもないように言われたその言葉に目を見開く。
「……っはぁ!? な、なにを!?」
「ふふっ、ナイショ。」
それ以上は言うつもりもないようで、涼はコーヒーを口に含んだ。
俺はわなわなと唇を震わせることしかできない。
あいつが俺と、向き合おうとしている?
それは本当だろうか。信じていいのか、こいつの言葉を。
怖い。けれど、安達のあの異常な行動は、俺とちゃんと話したかったから……なのか?
だとしたら、俺は……。
俺はどうすればいい?
ぐるぐると思考を巡らせて一人で百面相していると、唐突に涼が笑い出した。
「あっはは! お前、ほんとにあの子のこと好きなんだね。」
「は!? お前何で知って……!」
顔が一気に赤くなる。
カップを持つ手がぷるぷると震えて、コーヒーが揺れた。
「だってお前、分かりやすいから。」
「嘘だろ、俺そんな分かりやすいか……?」
「はは、いいと思うよ。色んな奴とっかえひっかえしてたあの頃よりも人間味があって。」
さらりと告げられたその言葉に、喉の奥がきゅっと締め付けられる。
「……余計なお世話だ。」
ぽつりと落とされた俺の言葉に、涼は目を細める。
「確かにそうかもね。……でも、友達として、お前には幸せになってもらいたいからさ。……何をそんな怖がってのか、俺には分らないけど……きっと、大丈夫だと思うよ。だからさ、頑張って。」
そう言って涼は本を取り出した。
その姿は相も変わらずすましている。
けれども、耳に少し赤色が差しているのを見つけてしまって、ふっと頬が緩んだ。
――俺はほんとに、いい友達を持ったなぁ。
「……分かった。頑張ってみる。」
涼はちらりとこちらを見て、少しほほ笑んだ後、すぐに本へと視線を落とした。
窓の外には傾く夕日。夕暮れ色に染まる街並みは、新しい明日を連れてくる前触れのようで、不思議と心が軽くなったような気がした。
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