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対峙、衝撃。
涼に背中を押されたあの日から俺なりに努力はしているつもりだ。
それでも、最後の一歩を踏み出す勇気がどうしても出ない。
行こうとしても、あの日の痛みがちらついて、地面に足を縫い付けられたかのように動けなくなってしまう。
涼からは、お前いつ行くの? と言いたげな目で見られていて居たたまれない。
情けない事この上ないと思う。
――だからこそ。
よし、今日こそ、行くぞ。
そう自分に言い聞かせ、椅子を押しのけて立ち上がった。
******
安達を探してうろうろと構内を歩く。
いつも気づけば俺の隣に居るのに、こういう時に限っていないのだから本当に憎らしい奴だ。
歩いているうちに決心が鈍りそうになって、ぶんぶんと頭を振った。
だめだ、逃げるな。あいつとちゃんと向き合うって、決めただろ。
ぐっと拳を握りしめて、気合を入れ直す。
諦めずに探し続けたら、聞きなれた低い声が風に乗って運ばれてきた。
その声を頼りに足を進めると、たどり着いたのは校舎裏。
人目につかないその場所に、果たして安達はいた。
――見つけた。心臓が跳ね、喉の奥が熱くなる。
「安達――」
声を掛けようとしたその時。不意に高い声が響く。
「ねぇ、安達君! 今日一緒に帰らない?」
可愛い女の子だった。
安達の傍で、期待に満ちた笑顔をあいつに見せている。
ぐさり、と胸に冷たい刃を突き刺されたような気がした。
――一人じゃ、なかったんだな。
女の子は安達に身体を寄せている。
腕を絡めて、まるで恋人同士かのように。
安達は困ったように眉を寄せ、彼女から視線を逸らした。
「いや、俺は――」
俺はその言葉の続きを聞く前に踵を返した。
胸の奥が詰まって、息が出来ない。頭はガンガンと殴られたかのように痛む。
馬鹿みたいだ。勝手に期待して、勝手に失望して。
あいつの隣には、やっぱりあの子のような可愛い女の子が似合うのに。
口を引き結んで、せり上がってくるものを零さないように、必死に耐えた。
足は止めない。早く、この場からいなくなりたかった。
俯いて走ろうとした時、不意に腕を引かれる。
「はぁっ、はぁっ……。先輩!」
振り払おうと必死にもがいた。
けれど、思ったより強く腕を握られていて、簡単には離れない。
腕から伝わってくる温度に一瞬胸が締め付けられる。
振り向けば、安達は真剣な目をしてこちらを見ていて、それが余計に怖かった。
「先輩! お願いです。待ってください!」
安達の声が空気を震わせた。
普段の落ち着きは影を潜め、かすかな震えが伝わる。
切実なその声に、またぐっと息が苦しくなる。
「ほっとけよ。」
「嫌です、先輩お願いします、話を――」
「放っといてくれよ!」
焦った安達の声を遮るように、俺の荒い声が響いた。
自分でも驚くほど大きい声が出て、周りがそれに反応したようにざわつく。
安達は腕を離そうとしない。掴んだ手に力が籠るのを感じてますます焦りが募った。
「っなんなんだよお前。俺に散々付きまとって……思わせぶりなことして……。っなのに!」
俯き、掠れた声でつぶやく。顔は上げられない。安達が今どんな顔をしているのか、知るのが怖かった。
「俺はまだ……」
その言葉の続きが口から零れそうになって、ぎゅっと唇を引き結ぶ。
喉の奥が熱い。限界を超えたのか、視界が潤みだした。
抑えきれず、それは頬を伝って落ちていく。
安達はそれに驚いたのか、手に込められた力が弱まった。
その瞬間、俺は全力でその手を振り払う。
指先が安達の手を掠める。
触れた場所が熱を持ったように熱くて、それが余計に苦しい。
足に力を込めて、走りだす。
先輩! と叫ぶ声が遠く聞こえた。
一瞬、足を止めそうになった。それでも振り返らない。
振り返ってしまえば、きっと全部が壊れる。もう、抑えきれる気がしなかった。
走って、走って。
やがて、校舎裏から遠く離れた、講堂まで来て、足を止める。
呼吸は荒く、足は震えていた。
肩越しに校舎の方を見ると、追ってくる人影はない。
汗が、涙と混ざって地面へと落ちていく。
まだ、さっき言いかけた言葉が口に残り続けていた。
――危なかった、言ってしまいそうだった。
痛み続ける胸を拳でぐっと抑える。
また、逃げてしまった。けれど、俺はもうこうすること以外できなかった。
……涼に怒られるかなぁ。
震える手をポケットに突っ込む。
ぼんやりと視界を霞ませたまま、歩き出した。
「結局こうなるなら、本当にあいつに会いたくなかったな……。」
そう、小さく零した言葉は烏の声にかき消される。
日が落ちて、夜はもうすぐそこまで来ていた。
それでも、最後の一歩を踏み出す勇気がどうしても出ない。
行こうとしても、あの日の痛みがちらついて、地面に足を縫い付けられたかのように動けなくなってしまう。
涼からは、お前いつ行くの? と言いたげな目で見られていて居たたまれない。
情けない事この上ないと思う。
――だからこそ。
よし、今日こそ、行くぞ。
そう自分に言い聞かせ、椅子を押しのけて立ち上がった。
******
安達を探してうろうろと構内を歩く。
いつも気づけば俺の隣に居るのに、こういう時に限っていないのだから本当に憎らしい奴だ。
歩いているうちに決心が鈍りそうになって、ぶんぶんと頭を振った。
だめだ、逃げるな。あいつとちゃんと向き合うって、決めただろ。
ぐっと拳を握りしめて、気合を入れ直す。
諦めずに探し続けたら、聞きなれた低い声が風に乗って運ばれてきた。
その声を頼りに足を進めると、たどり着いたのは校舎裏。
人目につかないその場所に、果たして安達はいた。
――見つけた。心臓が跳ね、喉の奥が熱くなる。
「安達――」
声を掛けようとしたその時。不意に高い声が響く。
「ねぇ、安達君! 今日一緒に帰らない?」
可愛い女の子だった。
安達の傍で、期待に満ちた笑顔をあいつに見せている。
ぐさり、と胸に冷たい刃を突き刺されたような気がした。
――一人じゃ、なかったんだな。
女の子は安達に身体を寄せている。
腕を絡めて、まるで恋人同士かのように。
安達は困ったように眉を寄せ、彼女から視線を逸らした。
「いや、俺は――」
俺はその言葉の続きを聞く前に踵を返した。
胸の奥が詰まって、息が出来ない。頭はガンガンと殴られたかのように痛む。
馬鹿みたいだ。勝手に期待して、勝手に失望して。
あいつの隣には、やっぱりあの子のような可愛い女の子が似合うのに。
口を引き結んで、せり上がってくるものを零さないように、必死に耐えた。
足は止めない。早く、この場からいなくなりたかった。
俯いて走ろうとした時、不意に腕を引かれる。
「はぁっ、はぁっ……。先輩!」
振り払おうと必死にもがいた。
けれど、思ったより強く腕を握られていて、簡単には離れない。
腕から伝わってくる温度に一瞬胸が締め付けられる。
振り向けば、安達は真剣な目をしてこちらを見ていて、それが余計に怖かった。
「先輩! お願いです。待ってください!」
安達の声が空気を震わせた。
普段の落ち着きは影を潜め、かすかな震えが伝わる。
切実なその声に、またぐっと息が苦しくなる。
「ほっとけよ。」
「嫌です、先輩お願いします、話を――」
「放っといてくれよ!」
焦った安達の声を遮るように、俺の荒い声が響いた。
自分でも驚くほど大きい声が出て、周りがそれに反応したようにざわつく。
安達は腕を離そうとしない。掴んだ手に力が籠るのを感じてますます焦りが募った。
「っなんなんだよお前。俺に散々付きまとって……思わせぶりなことして……。っなのに!」
俯き、掠れた声でつぶやく。顔は上げられない。安達が今どんな顔をしているのか、知るのが怖かった。
「俺はまだ……」
その言葉の続きが口から零れそうになって、ぎゅっと唇を引き結ぶ。
喉の奥が熱い。限界を超えたのか、視界が潤みだした。
抑えきれず、それは頬を伝って落ちていく。
安達はそれに驚いたのか、手に込められた力が弱まった。
その瞬間、俺は全力でその手を振り払う。
指先が安達の手を掠める。
触れた場所が熱を持ったように熱くて、それが余計に苦しい。
足に力を込めて、走りだす。
先輩! と叫ぶ声が遠く聞こえた。
一瞬、足を止めそうになった。それでも振り返らない。
振り返ってしまえば、きっと全部が壊れる。もう、抑えきれる気がしなかった。
走って、走って。
やがて、校舎裏から遠く離れた、講堂まで来て、足を止める。
呼吸は荒く、足は震えていた。
肩越しに校舎の方を見ると、追ってくる人影はない。
汗が、涙と混ざって地面へと落ちていく。
まだ、さっき言いかけた言葉が口に残り続けていた。
――危なかった、言ってしまいそうだった。
痛み続ける胸を拳でぐっと抑える。
また、逃げてしまった。けれど、俺はもうこうすること以外できなかった。
……涼に怒られるかなぁ。
震える手をポケットに突っ込む。
ぼんやりと視界を霞ませたまま、歩き出した。
「結局こうなるなら、本当にあいつに会いたくなかったな……。」
そう、小さく零した言葉は烏の声にかき消される。
日が落ちて、夜はもうすぐそこまで来ていた。
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