好きです、今も。

めある

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目覚める、ここはどこ?

微かに聞こえる鳥の声。
差し込む朝日の柔らかな光で、目を覚ます。
見慣れぬ天井。
窓には、これまた見慣れぬ黒いカーテンが風で揺れていた。

――あれ。ここ、俺の家じゃない!

ばっと上体を起こす。
けれど、ガンガンと打ち付けるような痛みを頭が頭に走って、すぐにベッドに逆戻りした。

そうだ、昨日確かゼミの飲み会に行ったんだった。
で、先輩にめちゃくちゃ飲まされて、それで……?

それ以降の記憶が曖昧だ。
確か誰かにおぶられていた気がする。
誰だろう。
というか、ここはどこだ?

ぐるっと辺りを見渡す。
机に積まれた教科書やノート。
本棚には、参考書が綺麗に並んでいる。
一瞬、女の子の部屋だったらどうしよう、と思ったが、椅子にかかっているジャケットは男物だ。
男の部屋で間違いない。良かった。

視線を下へおろすと、床には几帳面に畳まれたタオル。
隅にはスポーツバッグが無造作に置かれていて、その横に見慣れた竹刀袋が立てかけられていた。

――ん?まてよ。……まさか、あいつの、部屋? 
ということは、俺は昨日あいつにおぶられていたということで……?

理解した瞬間、さっと血の気が引いた。
俺、昨日変な事言ってない、よな?大丈夫だよな?
ぐるぐると思考を巡らせても、記憶がないから分らない。
いや、確か俺、あいつに抱き着いて……?
感じた熱がフラッシュバックして、一転、一気に顔に熱が昇る。

一人で悶えていると、遠くから徐々に近づいてくる足音が一つ。
跳ねる心臓を抑えながら、耳を澄ませる。
しばらくして、足音はピタリと扉の前で止まった。

一拍置いて、コンコンコン、とためらいがちにノックされる。


「……先輩、起きてますか?」

返答はできなかった。
とにかく赤くなった顔を隠したくて、咄嗟に布団を頭まで被る。
すると、せっけんの匂いが鼻を掠めて、余計に体温が上がった。

入りますよ、と小さく安達の声がして、ドアがゆっくり開かれた。


「……寝てる?」


いつもとは違う、少し掠れた声。
思ったよりその声が近くて、また心臓が飛び出しそうになる。
起きているのに気づかれたくなくて、必死に息を殺していると、コトンとベッドサイドに何かを置く音がした。
そして次の瞬間、ばさりと布団がめくられる。
差し込む光に目を細めていると、かちりと金の瞳と視線が合う。


「……起きてたんですね。」


穏やかに、それでいて呆れたように告げられる。


「……なんで勝手にはぐったんだよ。」


隠し切れない顔の熱に、思わず安達を睨むと、こいつは小さく笑みを零した。


「だって、苦しそうだったんで。」


あまりにも自然に言われて、言葉に詰まる。


「……そうかよ。」


頭をがしがしと掻いて、のそりと上半身を起こした。


「昨日は世話になったな。……ありがとう。じゃあ、俺、帰るから。」


ベッドから降りようとした瞬間、視界がぐるっと回る。
もつれる足。


……あ、これ倒れるな……。


衝撃に備えて目をぎゅっと瞑った。

けれど、その瞬間、強い腕に支えられてその衝撃は訪れなかった。

恐る恐る目を開くと、視界いっぱいに映る安達の整った顔。
顔が、近い。


「っは。」


「……大丈夫ですか。昨日あんなに飲んだんですから、急に起き上がらないでください。」


支える腕に力が籠められた


「……ほら、そこ座って。ゆっくりでいいですから。」


ゆっくりと、ベッドに連れ戻される。
大人しくベッドに収まる俺に安達はまたふっとほほ笑む。


「……笑うなよ。あー、ほんと、かっこつかねぇ……。」


「ふふ、高校の時は俺が世話されてましたもんね。」


「……あぁ、そうだったな。」


あの頃の話を出されて一瞬、胸がちくりと疼いた。
けれど、すぐに見ない振りをする。もう、終わったことなのだから。
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