好きです、今も。

めある

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ほっとけない。

あの事件からしばらくたち、気がつけば初夏も近づいて、だんだんと暑さを感じるようになってきた。部活では、もうすぐはじまる県大会に向けて一層熱が入った、きつい練習が続いている。

集合の声がかけられて、コーチがメニューについて話し出す。あぁ、今日もはじまるなぁ、なんて、これまでのきつい練習を思い出し、思わずため息がこぼれた。


「あ、そういえば今月のペア表作るの忘れたから、今日は自由に組んでいいぞ。」

突然、コーチからそう告げられる。おい、しっかりしてくれよ、と心の中でツッコミを入れていると早速、

「新~、組もうぜ。」
「おっけー。」

と、声を掛けられる。周りからも、「やったー、おい、ペア組もうぜ。」「先輩、組みましょ」なんて声が聞こえ始めた。

そんな中、

「ねぇ、あれ見てよ。」
「まぁ、そうなるよね~。まぁ誰もあいつに近づきたくないもん。」
「自業自得だよね~。」

ヒソヒソ、クスクス……聞いていて気持ちの良くない声が聞こえる。そっと彼女らの視線を追うと、ぼんやりとひとり立ち尽くす、安達がいた。
その表情はいつも通りの、無。だけど、どこか途方に暮れたような、寂しそうな表情をしているのは気のせいだろうか。

「お~い、誰か安達と組んでやれよ。」
「可哀そうだろ~。」

なんてからかう声が嫌に心にのしかかる。ヒソヒソとあいつを嗤う声も、声量は小さいはずなのに、頭にガンガンと響いている気がした。俺に言われているわけでもない、それに確かに、あいつの自業自得のはずなのに。

立ち尽くすその姿は、真剣に剣道と向き合う、まっすぐで、強い背中は見る影もなく、
どうしようもなくて、俯くしかないそいつが迷い子のように見えて。

あぁ、くそっ、仕方ねぇな。

「ごめん、俺、あいつと組んでくる。」
「っはぁ!?お、お前正気か!?」
「残念ながら正気、ほんとにすまんが、お前は他の奴と組んでくれ。」

「この状況で、あいつと組んだらお前までなんか言われるぞ」と引き止め続けようとする友人の声を振りきって、俯いているあいつのもとへと向かう。分かってる、俺もなんか言われるかもしれないって。でもさぁ、ひとりで頑張ってる安達を見ている俺としては、ほっとけなくて。

「よっ。安達、俺と組もうぜ。」

突然降ってきた俺の声に、はっと目を見開く。

「え…、でも、いいんですか。」
「ん、いーのいーの。さっ、やろうぜ。」
「なら…、…はい。よろしくお願い、します。」

はじめて真正面から捉えたその顔は、緊張が解けたように、どこか安心した顔だった。





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