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本編
告白
しおりを挟むカミラさんによる衝撃の清らか発言で童貞なのが全員にバレてしまったギルバート様は、顔を真っ赤にしながらしどろもどろに話しだした。
「ええと…そういうわけでして…僕としてはフィービーさんとの婚姻を望んではおる…おりますが。
決して無理強いはしませんし他の女性に目を向けることもありません。仮の婚約期間の間に貴方と本人に分かってもらうよう誠意を尽くしますし……彼女の心を得られるよう…努力します。
今は婚約継続の可能性を残しておいて欲しいのです」
「フィーが嫌だと言えば仮のままで終わると約束していただけますか?」
「もちろんです、そちらの方が可能性としては高いことも理解しています。彼女は僕のことをなんとも思ってないのは見ていてすぐ分かりますし。ですが初めて魅力的な女性に出会えたので、なにもせずに諦めたくはありません」
顔真っ赤にしてしゃべるギルバート様に絆され気味のおじさんは、童貞バレを哀れに思ったのも手伝い態度が軟化していっている。
コイツ顔だけの見掛け倒しだなって思ってるのが顔に出てる。
「節度を保った努力に限定していただけるならそれで構いません。過度な接触はしない、フィーの嫌がることはしないと約束してくれますか?その滲み出てる色気で無理やり落とすのはナシですよ」
「かっ…過度な接触も嫌がることも致しません!色気…はどんなものかよくわかりませんが無理やりなんて…そんな虚しいことは出来ません」
乙女だなギルバート様。
顔真っ赤にして手で覆ってるけど、隙間からチラチラこっち見んな。
「まあ、その色気はフィーには効果が出てないようなのでその条件で構いません。貴方が本当にこの子を愛して幸せにして下さるなら反対もしません。手元から離さなければいけない可能性が出てきたのはこたえますが…」
40で20歳と結婚するなんてアホな事言い出してまで私を守ってくれてるおじさんだもんね。
ずっと一緒に居るよ、離れてったりしないよ。
「その話ですが、もし婚姻となった場合僕こちらに入りたいです」
あ、おじさんの目に力が戻った。
「公爵家なんて最高峰の位置に居る貴方が我が家に入るなんて可能なのですか?」
「僕次男ですし…貴方とフィービーさんが居ればロン商会の勢いは強まることはあっても弱まることはないでしょう?資産的にも立場的にも彼女は社交界に出ることも可能な方です。父は損さえなければ何も言わないでしょうし、母は姉と同じように目を輝かせて喜ぶと思います」
「わかりました、あなたの本気に期待しています。
細かい話を詰めていきたいのですがお二人がお相手で構いませんか?お父様の了承をいただけたら正式に書面に残したいと思いますが」
「お父様には私達の好きにして良いと口頭でいただいてまいりました。今日は草案として持って帰って、次回正式な書面を作成してまいります」
カミラさん父親の言質とってきてたんだ、身の破滅かかってるから必死だな。
「姉様がお話している間僕、フィービーさんと少し二人きりでお話しても良いでしょうか?彼女に何も言わずこの状況になってしまったので」
「そうですね、そこの庭なら出て構いませんよ。声は聞こえませんがここから丸見えなので変なことしないで下さいね」
「もちろんです!」
ギルバート様、せっかく落ち着いてきたのにまた真っ赤になっちゃった。
多分おじさんはからかってんだろうな。この人高位のお貴族様だよ、忘れてない?
「あの、フィービーさん。そういう訳であちらに一緒に行ってくれますか?」
真っ赤でかわいーなあ、ギルバート様。
「いきなり突撃して、こんなことになってしまって申し訳ありません」
庭に出るとすぐにギルバート様が謝ってくれた。
「いえ、こちらもレシピをもらえるのはありがたいですし…結果的に良い方向に進んでいると思うので大丈夫です」
とりあえずたこ焼きめっちゃ食べたい、カミラさん今日作ってくんないかな。
「フィービーさんには僕の気持ちはご迷惑だと思うのですが、一度ちゃんと告白させてください」
いきなりか。
ゲームだと告白イベントは王子の卒業式間際だよ?まだ入学前だから、二年前倒しか。
「姉から物語を聞いて、僕が本当にそのヒロインに恋するとはとても思えなかったんです」
まあね、いきなりそんな話聞いてもそうなるよね。
ゲームの強制力ってこわいね。
「不幸を背負って人生諦めた薄幸の美少女なんてそんなめんどそうな相手スルーしたいじゃないですか」
そうですね。めんどいヒロインの心を解して癒してくストーリーですからね。
「でも実際お会いしてみた貴女は確かに見た目は儚気ではありますが、人生諦めてるようにはとても見えなくて。姉にスパッと断りを入れるし、たこ焼きやカレーの話で涎を垂らすし」
えっ、涎たらしてた?ギリセーフだと思ってたんだけど。
「無口なわりには言いたいこと言って、コロコロと変わる表情に恋をしました。物語とは全く違う貴女を隣で支え、その感情の全てを僕にも見せて欲しいです。どうか僕を伴侶候補として見てくれないでしょうか」
ヒロインぽくないところに惚れたんだって。
これって強制力じゃなくない?
理解した途端、聞き流してたギルバート様の言葉が全部頭の中に蘇ってきた。
顔を真っ赤にして、一所懸命言葉にして。
あれってヒロインじゃなくて、私に言ってたんだ。
攻略対象だからヒロインに好意持つのは当然だって思ってたけど、そのヒロイン私なんだよ。
「あの、私本当は口が悪くて食いしん坊で」
初めてちゃんとギルバート様の顔を見た気がする。
「食いしん坊なのはもう分かってます。口が悪いところも見せて欲しいです、なんとなくこう思ってるんだろうなって予測はついてるんですけど、貴女の言葉でちゃんと聞きたいです。クソとか言うのもボソッと聞こえてました」
聞こえてたんすか。そうすか。
顔に熱が溜まっていくのがわかる。
今私史上最大に顔あかい。
「物語上ギルバート様は私に恋するのは当然だと思ってて、深く考えてなくて。でもなんか違う意味で恋されたのがわかったので、私も私として貴方と向き合ってみたいと思います」
ギルバート様は嬉しそうに破顔して、また私の手にキスをした。
一回目とは違って、二人とも照れまくってなかなか部屋に戻れなかった。
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