血と束縛と

北川とも

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第30話

(23)

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「もちろん、あんたの背中にあるから、だからな」
「……俺は先生に、よほど嫉妬深い男だと思われているのか」
 ぼやき気味に呟いた三田村がおかしくて、声を洩らして笑っていた和彦だが、その間も手は動かし続けていると、今度は三田村の目の色が変わり始める。
 三田村の変化を目の当たりにして、ゾクゾクするような興奮が和彦の中を駆け抜ける。ふと、外で三田村に言われたことを思い出した。
 和彦が突然体を起こしたため、何事かという顔で三田村も倣おうとする。すかさず、肩を押さえて止めた。
「どうした――」
「三田村、うつ伏せになってくれ」
 一瞬、物言いたげな様子を見せた三田村だが、和彦が何を求めているのか察したのだろう。素直に従ってくれる。
 和彦は、露わになった三田村の背の刺青をじっくりと眺め、てのひらを押し当てる。そして、顔を伏せた。
 繰り返し何度も背に唇を押し当てているうちに、最初はリラックスしていた三田村の体に変化が起こる。肌が再び熱を帯び、ときおり筋肉がぐっと強張るのだ。自分には穏やかな物腰で接してくれる男の、隠しきれない荒々しさが表れているようで、愛撫を加える和彦の体も熱くなってくる。
「くすぐったいな……」
「なら、ひどくしていいのか? 確かぼくに、手酷く扱われたいと言っていたな」
「いや、俺じゃなくて――」
 うろたえる三田村を無視して、肩先に噛みつく。甘噛みというものではなく、歯形がつくほどしっかりと。
「……痛そうだ」
 自分がつけた歯形を眉をひそめて見下ろした和彦は、悪ふざけが過ぎたと反省しながら、今度は舌を這わせる。虎の刺青を丹念に舐めているうちに、三田村の息遣いが次第に荒くなってくる。そんな三田村の背に覆い被さっていると、まるで自分が猛獣使いになったような、奇妙な錯覚が和彦を襲う。
 今にも鎖を引き千切りそうな虎を、無謀にも自分の体を使って抑えつけているのだ。太い首を一振りしただけで振り落とされ、やはり太い前足に押さえつけられる姿まで、容易に想像できる。ただし、和彦が想像の中で感じるのは痛みではなく、快美さだ。
 今の自分は欲望の箍が外れていると思いながら、和彦は自身の両足の間にそっと片手を這わせる。三田村の口腔と手によって精を放ったばかりだというのに、欲望が熱くなりつつあった。
「んっ」
 虎の刺青を愛撫しながら、自分のものを片手で慰めているうちに、堪えきれず声が洩れる。頭を動かした三田村は、和彦の行為に気づいたようだった。
「先生……」
「まだ動くな」
 三田村が体を起こそうとしたので、言葉で制する。ついでに、背に軽く歯を立てる。三田村の息遣いが乱れ、和彦の舌の動きに合わせて、身じろぐようになる。
 もっとも、和彦が三田村を自由にできたのは、ここまでだった。
 勢いよく三田村が寝返りを打った拍子に、バランスを崩した和彦は逞しい胸の上に倒れ込む。次の瞬間には強い力で抱き締められ、強引に唇を塞がれていた。
「んっ、んんっ――……」
 痛いほど強く唇を吸われ、口腔に舌が押し込まれる。和彦はすぐに三田村の口づけに応えて、舌を絡める。
 ベッドの上で激しく抱き合いながら、三田村の欲望がすでに力強く脈打っていることを知る。和彦は、促されるまま三田村の腰の上に跨り、やはり高ぶっている自分の欲望を擦りつける。三田村の片手に荒々しく尻の肉を掴まれてから、さきほど欲望を受け入れて綻び、潤っている内奥に、指を挿入される。内奥深くに残された三田村の精が溢れ出そうになり、和彦は息を詰まらせて背をしならせていた。
 三田村の求めはわかっている。和彦は急に強い羞恥を感じながらも上体を起こすと、三田村の胸に手を突き、自ら腰を浮かせる。自分に向けられる強い眼差しを意識しながら、すっかり逞しさを取り戻した三田村の欲望を片手で掴み、位置を確認して慎重に腰を下ろしていく。
「うぅっ、くっ……ん」
 内奥を押し広げる欲望の感触に、苦しさと同時に、鳥肌が立ちそうなほどの疼きが腰から這い上がってくる。和彦が荒い呼吸を繰り返しながら繋がりを深くしていると、ここまで黙って見つめていた三田村が両手を伸ばしてきた。
「あっ」
 反り返った欲望を握られ、緩く上下に扱かれる。内奥をきつく収縮させると、下から緩慢に突き上げられた。和彦は呻き声を洩らしながら、自ら腰を揺らし、三田村の欲望を根本まで受け入れる。
 大きく息を吐き出して三田村を見下ろすと、まっすぐ見つめ返してくる眼差しとぶつかった。
「……あまり、見るな。これでも、恥ずかしいことをしているって、自覚はあるんだ……」
「俺のために、してくれている」
「だから、そういうことを言われると、ますます恥ずかしく――」

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